生徒会室での長居は無用
一旦落ち着くことにした輝。しかし、今押し倒されている状況でどうしようというのだ。
こういうときは頭の早い輝というか、単にめんどくさいちょっかいに慣れ過ぎている面もあるが。
輝は、足だけをソファーからずらし、上半身を持ち上げるとともに、会長の背中と腰から太もも辺りに手を添えて、そのまま起き上がる。
女性一人分の体重が重いかはここでいうかは定かではないが、胸が発達している会長では割とあるほうなのかもしれない。
平然とそれをやってのける輝に対して、会長は顔を赤くしていた。
しかも、持ち上げられるとは思っていなかったのか、思いっきりひゃあ!?というような声を出してしまったのだ。
輝は、それをいいというばかりに口元を綻ばせると、「ほら抱っこですよ。よちよち。」と馬鹿にするというよりは全力で甘やかす母親または主夫のようで、それが単に馬鹿にするよりも、生徒会長には響いたようでキュッと目を細められた。
そして、「あなたってそういう趣味があるの?」と聞かれてしまった。これは盲点だ。しかし、そういうつなげ方は趣味というありふれた言葉に変換するのも異なことだ。
輝は、「趣味は読書です。会長、あなたもしや似たような趣味がおありで嫌がらせをしてきたんじゃないですか?」と返してみる。そして、そろそろ腕がしびれてくるのでそっと足から着地させる。
すると、「なんのことかしら?」とあくまですっとぼけるらしいので、もう一声、「生徒会長が生徒会室にあのような道具を持ち込んでいたとは、くっ、同じ委員会の書記として恥ずかしい限りです。」と泣きまねでもしてみる。
さすがの生徒会長も自分のやってきたことの落ち度と恥ずかしくもある正論での返しの数々、そこからはあっさりっと、はいはい、わたしが悪かったわよ、と生徒会長用ともいうべきデスク付きの椅子に座り込む。
輝は、ただこれだけのためにここに呼ばれたとは到底思えなかったので、会長に聞いてみることにした。
「会長、まさかこんな嫌がらせのためだけに校内放送したわけじゃないですよね?もしそうだったら書記の仕事サボr、「あ、そ、そんなわけないわ。あ、あなた、もしかしてだけど、付き合ってる女の子とかいないわよね?」
急に何を聞いてくるんだこの変人は、そんなことよりも内心稼ぎたいし、女関係で降りかかる男の火花たる視線はもう受けたくないってのに。
女からしたらモテる=能力高いなのかもしれないが、俺は普通だし、何なら普通になりたいと言い切ってもいい。
輝は、会長に、「いません。」と短く答えた。すると、生徒会長は、「へ、へー、だから抱っこしてくれたんだな…もしかしたらリードしてる…鈍感め…」めなどと隠してるようで聞こえてる輝としては、単にからかっただけで、こんな生徒会長にリードなぞされたくないし、鈍感はステータスだとなんだか馬鹿にされているように聞こえて、はっきりいって抗議してやりたい。
輝は、その後は何も言わずに、生徒会室を出ていった。