呼ばれる校内放送は嫌なことしか基本ない
輝は、生徒会長を避けるために、時間をずらして生徒会室を使うことにした。」
最初はこの作戦も有効だったであろうが、生徒会長をなめてはいけない。
普段は生徒の模範となるものの、実際は輝をいいように弄ぼうとするする性格の悪い人だ。
そもそも、生徒会室に有事の際のゴム用品を後輩にちらつかせて、「やるか?」なんて正気の沙汰じゃない。
輝としても、全くの平穏ではないので、どうにかこうにかして生徒会長を避けていた。
しかし、そんな不自然な状況が続けば、生徒会長が何を思うかはわかるであろう。
せっかくの可愛い可愛い後輩、それもいろいろな好意をもった後輩を、おいそれと手放すわけはないのであって、生徒会の執務以外で会わないのが悶々としてくる。
ついには、昼休みの昼食時の時間だが、校内放送が流れてきた。
「校内放送、生徒会書記の楠本輝君、至急生徒会室にまでお越しください。」
なぜか、その声は生徒会長のもので、放送委員の者でないという意見は、生徒会長のことだからということで、気になるところではあるが、割愛させていただく。
そして、生徒会長が喋れば、「あれ?生徒会長じゃね?すげー」とか「きゃっ、生徒会長だわ、放送越しでも美しい声」とか男女関係なく荒れて、収拾はつかない。
だから、放送器具を占領していたであろう事実には触れないでよろしい。もっと言えば、呼び出された理由の見当さえも触れたくない。
幸い、地味に徹していたので、楠本輝が何者かと気づかれることはなく、輝は生徒会室の目の前まできた。
そして、開けようとした瞬間、先に扉が開き、何者かに手をつかまれ、反応する間もなく中に引き込まれた。
その後は、偶然なのか力み過ぎたのか、引き込まれる力に流されて、輝は地面に倒れこむような姿勢になった。
しかし、ボスッと何か柔らかいクッションにのしかかったような音がして、輝もまた、床ではない何かに背から落ちたようだ。
よく考えれば、生徒会室にある柔らかいものといえば、ソファーだ。そういわれると違和感もないし、実際ソファーだった。
しかし、気になるのはそこではない。この一連を引き起こしたとされる犯人は…どうやらものすごく近くにいたようだ。
振り返るよりも早く、ソファーに背転んだ輝を覆いかぶさるように両手両足をついている。
この絵面は、そういう色物を好む少女漫画でやっておけばいいのに、と輝は、さっきからわざとらしく鼻息をフンスフンスと繰り返している生徒会長、畑中羽月を見て思う。
しかし、この状況、素直にどいてくれないであろう人物にどう返したらいいだろうか。
少し意趣返しというか、一方的にやられて、昼休みを無駄に強いられてる輝は、「すいません、どなたですか?」と冷静に返す。
有能ではあるが、ところどころお茶目というか変人が過ぎる人だ。少しは冷たくして反応をうかがってみる輝。
すると、生徒会長は、ずいっと顔を近づけると、真顔で、「ばぶぅ。」と言ってきた。
こりゃ話も出来ない、詰みだなと輝は苦労人を思わせるため息をつくのだった。