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下らないことはするな。  作者: まっきよ
2/11

平常と煩悩

教室、という集団スペースに馴染ないことは不思議で


はない。


今の時間は先生がホームルームの時間にくる前であ


る。


そして、楠本輝、彼もまた側から見れば馴染んではい


ない。


周りには会話をして、皆談笑に浸っている、そんなグ


ループがちらほらとある。


輝はライトノベルを読んでいる。本にはカバーをし


て、外からは一見分からなくなっている。


教室ではみんなが思い思いに過ごし、時間が進んでい


る。


そして、窓際にいる2人のグループ、その内の1人、ク


ラス一の美人橋琴杏奈も友達とお喋りをしている。


そして、杏奈の視線はたびたび輝の方に向かう。


しかし、輝は見向きもしない。


輝が悪いわけではない。


ただ、こっちを気に留めてくれなかったという期待の


消失のようなものがあって、杏奈は思わずその美しい


顔を歪めてしまう。


杏奈は別に輝に話かけた訳じゃないのだ。しかも、接


点がある方かといえばそうでもない。


昔の幼馴染というわけでもなく、何かお互いのテレパ


シーを通じるような能力もきっかけもない。


ただ、杏奈の方から輝に対してこっちを向いて欲し


い、そんなささやかな願いが押しとどめられていただ


けで、それがどうにかして届けばいいなと思っていた


だけなのだ。


しかし、自分の方から話しかけてしまうと男の子たち


が、「何だ?」と物珍しそうに反応するのはいつもの


ことのように分かっていたので、この歯痒い、気遣い


の末に伝えきれない想いをどうにかして念じていたと


いうわけだ。


それが叶わず、思わず顔に表れることになって、現在


進行形で話している友達にも、「顔色悪いけど大丈


夫?」と心配されて、男子たちもこちらを見る。


こういう集中する視線は彼女はあまり好きではないの


だ。


しかしこれまた言うことが出来ず、注目を浴び続ける


ことに。


杏奈はハッと気づいて顔に笑顔を貼り付けるのだが、


気持ちの整理が上手くなってないので、またなってし


まうと考えていた。


一方、廊下よりにいる輝はライトノベルを読んでいた


が、どうやら、窓側が騒がしいので一瞬目を窓側にず


らしたり


すると、杏奈がこちらを見ていたというようにお互い


に視線がぶつかる。


しかし、輝はそう見つめることもなく、ほんの一瞬、


窓に目を向けたような感じで読書に戻っていった。


そして、杏奈の方は一瞬とはいえ、輝が目を合わせ


た、そう、合わせたという認識により心の中では、


「私のこと意識してくれたんだ、嬉しい。」と表情に


も曇りが見れなくなっていた。


その急な変わりように、「ねぇ、何かあったの?廊下


に?」と見当違いの質問を投げてくる友達に「うう


ん、何でもないよ。」と、隠しきれてない笑みのよう


に、一瞬の出来事が杏奈の頭の中でいいようにフラッ


シュバックされていた。


その元ネタである輝は相変わらず本を読み進めるので


あった。


これは、輝にとっては春先にはなかった違和感と9月


の二学期の始まり、杏奈の新たな感情の開花であった。



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