06.【 新婚男性の言い分① 】
< アンドリューの言い分 >
「俺たちは政略結婚なんです」
アンドリューは開口一番そう言った。
「俺の父と母も政略結婚なんです。でも二人は愛し合っているように見えます。俺はいつか父と母のような幸せに見える夫婦になろうと思っていたんです」
「幸せに見える夫婦ですか?」
幸せな夫婦じゃないんですか、とは聞かなかった。
アンドリューはハイと私を見た。
「ブリジッドが俺を愛していないように、俺も愛してはいないんです。でも好きなことは好きなんです。だから愛はなくとも俺を受け入れてくれると信じていたんです。俺と同じようにいつか幸せに見える夫婦を目指してくれると思っていたんです。なのに、なのに」
アンドリューはそう言って、自分の膝に額を押しつけた。
< レスターの言い分 >
「あれは何ですか?」
レスターは苛立ったようにそう言った。
「あれ、とは?」
「あの、履物、です」
「履物?」
「……パンツ、です」
「ああ」
嫌がらせでは、断じてない。
「社交界の噂はご存じで?」
「噂、ですか?」
「ええ、鋼鉄のパンツ、という噂です」
「……聞いたことはあります。ですがあれはおとぎ話でしょう」
「……あれが鋼鉄のパンツです」
私が言うと、レスターはがっくりと肩を落とした。
「彼女は、ユーニスは何故、あのパンツをはいたんでしょう?
それはさすがに彼女に聞いてください。
< オーフェンの言い分 >
オーフェンは泣いていた。
かわいらしい顔の、大きく綺麗な瞳から、大粒の涙をポロポロと落としている。
マジ癒し系だ。
「えーっと、大丈夫ですか?」
「僕、ニコラを愛しているんです」
嗚咽しながら、オーフェンがそう言った。
「そうでしょうね。で、これからどうしたんですか?」
「僕、ニコラを幸せにしたいんです」
しゃくりあげて言って、わぁと泣きだす。
もうなにを聞いても泣くだけだ。
だめだ、こりゃ。
今日は、2話投稿しています。