歌上手のコマドリ
空を飛んでいたコマドリは、キツネの背中で休憩をしています。
「……で、どうでした?」
「……あっちでもこっちでも~♪、戦っている~♪」
「そう……ですか……」
今のところ、コマドリが目となり、なるべく他の動物がいない場所を選んで進んでいるところでした。
それでも一度、襲われたときには、キツネが倒してくれたのです。
「長丁場になるかもしれないから」
と、キツネは倒した動物を食べて、一部をよく噛んでコマドリにも食べさせてくれました。
「……もしも~♪、最後の2匹になったら~♪、どうするつもり?~♪」
「う~ん……そうですね……2匹でクリアにならないか、神様に聞いてみます。
ダメだったら、僕が死にますよ」
キツネはあっさりと、なんでもないように言いました。
そして、その言葉は本当だろうと思わせる強い目を、キツネはしていました。
「……お人好しすぎじゃ~♪、ないかな~♪」
「コマドリさんは、僕の大事な友達、ですから。
……昔、僕がアライグマさんにいじめられている時に、歌って励ましてくれたましたよね。
あの時は本当に、心の底から救われたんですよ?」
キツネの語った昔話を、コマドリは覚えていませんでした。
悲しみにくれている動物がいたら、歌って励ますということは、コマドリにとって毎日の日課のようなものだったから、仕方がないことなのですが。
「……?
そんなこと~♪、あったかな~♪」
「あはは、ありましたよ。
……あの日から、コマドリさんは僕にとって、特別な友達です。
僕は、大事な友達を殺してまで、生き延びたくないだけなんですよ」
コマドリは、キツネの告白に、驚きました。
そして、自分の歌で、キツネがそんなに心を動かされていることを、うれしく思いました。
だから。
だから。
周りの警戒をするのを、疎かにしてしまったのでした。
先に気づいたのは、キツネ、でした。
そして、その時にはもう既に、その動物はキツネとコマドリを、射程圏内に収めていたのです。
「ややややあ、きききキツネくんに、こここコマドリさん、げげげげんき?」
笑顔のクマが、近づいてきたのでした。
「あ、ああ、まあまあ、ですかね」
キツネはそういうと、クマと後方を交互に見ながら、逃走経路について考えていました。
「どどどどうしたの?
ううう後ろばっかり見て。
ききき傷つくなあ、ななななんで逃げようとしているの?」
クマもまた、笑顔のままで、キツネとコマドリににじり寄ります。
「ええ~♪、フフフ~♪、ところでクマさん~♪」
コマドリは、キツネに目配せをすると。
笑いながら、言いました。
「……どうしてそんなに~♪、血の匂いを~♪、させてるのかな?~♪」
クマが硬直した次の瞬間、コマドリは飛び立ち、キツネは弾かれた様に走り出しました。
けれどコマドリは、見ました。
キツネより速いスピードで。
その動物が、キツネを追いかけるのを。
「ごごごごめんねぇ、えええ栄養をぉ、ととと取らないとぉ、ぼぼぼぼくもぉ、ししし死んじゃうからあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」