第0話 創世神話(一部要約)
神がこの世に降り立った時、世界は終わろうとしていた。
赤茶けた大地に枯れた海。ろくに日も差さぬ分厚い雲に覆われた空。
僅かに生き延びた人々は残り少ない食料を求めて相争い、自ら滅亡の危機に瀕していた。
神は大いに彼らを憐れみ、己が胸に抱いていた一冊の書を開いた。
金と銀の細工で装丁されたその書が開くと、頁の一枚一枚が光り輝き、空に、大地に、そして海に降り注いだ。
すると、瞬く間に空は晴れ、大地は緑に覆われ、海は満ちた。
それだけではない。
これまでに見たこともないような多くの命もまた、姿を現すこととなった。
空を舞う竜であり、大地を走る獣であり、意思を持つ木々であり、海を泳ぐ大魚であったという。
この奇跡の御業に人々は大いに喜び、神をたたえた。
☆
それからしばらくの時が過ぎたころ、神は人々の祈りを耳にした。
「おお、神よ、どうか我々をお助けください。このままでは死んでしまいます」
いったい何事かと驚いた神は、人間の長の前に姿を現し事情を聴いた。
「おお、神よ、あなたがこの地に生み出した数多の者たちはあまりに強く、そして恐ろしい。我々は彼らと共に生きていくことはできません」
すっかり滅びに向かっていた人間はあまりに弱く、神によって生み出された新たなる命はあまりに強く。
弱肉強食の理を持ち出すまでもなく、人間はほかならぬ神の手によって滅ぼされようとしていた。
神は大いに嘆き、そして自らの所業を恥じた。
昼と夜が何回も繰り返されたのち、神は人の長に己が胸に抱いていた書を手渡した。
「これなるは、我が産み出した命を支配し、使役しそして封印するものなり。これをお主たちに授けよう」
そう云い伝えると、神は眠りについた。
人間は神から与えられた書を用い、新たなる命たちを退け、大陸に再び栄華を取り戻した。
☆
この時、神から与えられた力こそ召喚術であり、
神から与えられた書物こそ万象を支配する力の顕れ、すなわち『万象の書』である。
力は先祖から子孫へ受け継がれ、現代まで人間種族の繁栄の源となっている。
胸に『書』を抱いてこの世に生を受ける者こそ彼らの後継者であり、召喚術士と呼ばれる存在である。
(以下省略)