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創作の協奏曲  作者: 久遠未季
第零章 創作の序曲――機兵少女フリージア・ザ・クロニクル(連作短編)
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終、ためらわず突き進め――そして創作の協奏曲へ

終、ためらわず突き進め――そして創作の協奏曲へ


    *


『今まで誰も見たことのないようなロボットアニメを皆で作ろう――ロボアニメをつくるぜ! 委員会(by株式会社オールプラネット)』


 そのコンテストの存在を知ったのは二〇一四年五月のことである。

 誰も見たことのないようなロボットアニメの企画書を募集し、選出作品は短編アニメ化確約、短編アニメ完成後は動画公開し再生数が一番多い作品をTVアニメシリーズ化するという趣旨のコンテストである。主催のオールプラネットはケータイ小説投稿サイト兼イラスト投稿サイトであるという強みを活かし、イラストやシナリオが書けなくても、何か光るものがあれば企画として採用する――選出された企画書に沿ったイラストやシナリオを追加募集するという意欲的な試みもしていたようだった。そして実際、第一回募集で選出された企画書の中には『弾痕のメタファー』のように、イラストもなければ結末も決まっていないような作品さえもあった。

 そう、ワタシが『ロボアニメをつくるぜ! 委員会(以下、ロボつく)』を知ったのは、企画書の第一回募集が終了し、企画書選出が終わった後のことだった。もしももっと早くにこの企画のことを知っていたならば、ファンタジア大賞で落選した『機兵少女フリージア』を企画書としてまとめ上げて応募していたはずなのに。選出企画の中に『メカ少女』の類がないところを見る限り、おそらく他と競合していないという強みがあったはずなのだ。あるいはつい最近、他の賞に応募した『機械妖魔ヨウカイガー』というのも相当に自信のあるロボット作品だったので、このコンテストを先に知っていればこちらに出したのに。もちろん「応募すれば絶対選出されたはずだ」というほどの自信があったわけではないけれど、挑戦することさえ出来なかったからこそ玉砕する以上に悔しさが先に立った。

 でも、後悔なんてしていたって仕方がない。だからこそワタシは『ロボつく』の次なる募集、『企画書に合わせたイラストやシナリオ募集』に応募することにした。ロックという人の『SMプロジェクト』、照月という人の『弾痕のメタファー』、橘なるの『明星のチューリングマシン』。そして『ジェットストリーム!』『eternal force blizzard』『Star Carriage――星の乳母車』の合計六作品。どれもこれも魅力的な作品だった。

「ワタシは『明星のチューリングマシン』にしようかな。『弾痕のメタファー』が一番優れている作品で、本当は一番書きたいんだけれど……ちょっと、今のワタシの知識や技術じゃ手が出しにくくて、原作者に失礼になっちゃうかも知れないし」

「じゃあ、僕は『Star Carriage――星の乳母車』でも書こうかな。最近ではSFっぽいものを書くことが多かったし、基本的にメカしか出てこないっていう世界観が良い雰囲気出していると思うんだ。あとは『SMプロジェクト』。どっかで見たことがある内容ばかりだけれど、企画書はよくまとまっているし……面白そうかも」

「『ジェットストリーム!』はアニメ化したらこの中で一番面白くなりそうだし『見たことのないロボットアニメ』の趣旨に一番合致しているけれど、残念ながらワタシの趣味とは全然違うものなのよね。『eternal force blizzard』は……悪くはないけれど、ちょっと詰め込みすぎで上手くまとめ上げられそうにないかも」

 さながら『ドラマガ短編コンテスト』のときのように、ワタシたちは語り合い、互いに短編作品を完成させていった。

 もちろん、あのときと同じように、あくまでもエターナル・ミキというひとりの人間が書いているかのように繕うことも忘れない。

 でも、このコンテストが『ドラマガ短編コンテスト』の時のような危うさがあることには、最初の時点で気付いていた。

「まあ、僕が思うにpixivと比べると相当格下……というか賑わっていない投稿サイトだからさ」

「ううん、賑わっているかいないかということは、あまり問題ではないんじゃないかな。確かに利用者数は圧倒的に少ないけれど、ケータイ小説界隈の強みというべきか、投稿者と閲覧者の距離や結びつきはむしろpixivよりもずっと強いし。それよりも問題なのは、運営と投稿者共にプロ意識が異様に低い方かも」

 かつて『ドラマガ短編コンテスト』が失敗したのは、ファンタジア文庫が低迷していたことに加え、『キャラクタイラストが既にある』『キャラクタの名前が指定されている』など企画に制限が多かったということにもある。結果として集まった作品の質も量もが下がってしまい、選考もグダグダになったのだろうということが容易に推察できた。今回の『ロボつく』もそれと同様の要素を持っているのだから、それと同じ事態になるだろう事は明白だ。

 ただ、それでも『ドラマガ短編コン』は最低限のコンテスト要件を満たしているものだった。他のpixiv公式企画と同様の応募規約を備え、応募要項も長年各種新人賞やコンテストを主催してきた富士見書房らしく過不足なく整ったものである。一迅社文庫大賞や最初期のGA文庫大賞を始め、幾つかの新人賞やコンテストの類はなかなか酷いものだったりするので、そのあたりは腐っても富士見書房だと褒めたいものだ――まあ、昔は富士見書房も何度かとんでもないことをやらかしていて、ついこの間も某清水文化先生などが暴露していたのだけれど。

 でも、オールプラネット社のそれは、そのどちらもあまりにお粗末すぎるものだった。規約は応募作品の権利や所在の記述があまりに不明確でありすぎるし、応募要項に関してはいくつもの矛盾に満ちたものである。例えば『タグに作品名を明記してください』と書いているわりに、オールプラネットの作品タグは文字数制限があるのでほとんど全ての作品がタグ付け不可能な状態だった。ストーリー募集要項も小説形式なのか台本形式なのかシナプシス募集なのかの指定が何もない上、文字数制限も異常に厳しくてどの程度のものを欲しているのか不明瞭でありすぎる。イラスト募集の要項もキャラクタとメカの二通りあるとはいえ、いずれも『キャラクタデザイン(これを元にそのままアニメ制作作業に入れるレベルで三面図などが必要)』なのか『キャラクタ原案(これを元にプロが描き直す)』なのかいまひとつ不明瞭でありすぎる。

 だからワタシもワタシの運営しているブログで、不特定多数へ向けた警告記事を書いたほどだ。



●面白そうですけれど地雷です 二〇一四年六月十四日

ちょっとばかり、面白い企画を見つけました。

その名も『今まで誰も見たことのないようなロボットアニメを皆で作ろう――ロボアニメをつくるぜ!(ロボつく)』。


もっと早く知っていれば、某小説新人賞にあの作品は応募しなかったのですけれどね。

小説としての出来は微妙だったものの、この手の企画にちょうどよいネタでしたから。

でも、さすがに小説新人賞応募中の作品を企画書として出すわけにはいきません。

映像化権などは、落選決定まで出版社側にある場合が多いわけで……規約を確認してみたところ、何とも微妙なところですけれど多分ダメなんでしょうね、これは。


ただ、たしかにこれは魅力的なものの……それでも現状、問題が多そうな企画であるというのは事実です。

非常に面白そうなのですけれど、何となく頓挫しそうな雰囲気が漂っています。

面白そうなのに、非常にもったいない。


【※紹介動画のリンク】


第一に、募集するプラットフォームを間違えている気がします。

発案者がそのサイトの社長なのだとしても、ケータイ小説メインのコミュニティで募集する内容じゃないです。

本気でメカアニメを作り上げようというつもりなら、他の競合サイトで募集した方が良いものが集まることでしょう。

『大人の事情を抜きにして』と公言しつつも、コミュニティサイトの運営という大人の事情が透けて見えます。


そもそも権利関係がどうなっているのか、よく分からない企画なのですよね。

企画書が通るなり、シナリオやデザインが通るなりして実際に売り上げが発生した際、どうなるのでしょうか。

パーセンテージで収入が入るのか、その都度相談なのか。

それとも企画した会社が全部持っていく(ただし失敗した場合の負債も全て企画会社が負う)のか……。

まあ、いずれも一長一短ですし、それこそとらぬ狸のなんとやらでしょうか。


たしかに、考えようによっては、企画の規模に対して競争率が低いともいえるのでしょう。そういう意味では、狙い目なのでしょうね。

だからこそ、ワタシがこうした宣伝のような記事を書くのは……実は一応募者として不利な行為なのかもしれません。

ただ、頓挫して何も結果を残せないとなったら、全くの無意味ですから。

やはり、ワタシもライバルを増やしてしまうことを承知で、微力ながらも宣伝をしておきますね。


企画書、シナリオ、キャラクタデザインなど。

どのジャンルでもよいので、興味を持った人はドシドシ応募するべきでしょう。

直近の締め切りは今月末なので、少しでも気になった人はお早めに。



 結論を言ってしまえば、ワタシのこの危惧は相当な部分で的中してしまうのだけれど、それはまた別の話である。

 ともあれ、その一週間後には、ワタシはさらなる苦言を呈している。



●pixivなどであれば、締めきり間際にどっと来ますが 二〇一四年六月二十一日


『ロボつく』って、本当に企画として成り立っているか微妙なところです。

普通、この手の企画であれば、もっと多くの応募があるべきですよね。


多分、pixivで同様の企画をすれば、軽く1000作品は超えると思うのです。

それが、現状ではこれですから……。

意地でもアニメを作るのか、それとも中止になるのか。



まあ、最悪企画書だけでもアニメは作れるのでしょうけれどね。

仮にたくさんのデザイン応募があったのだとしても、そのまま使うなんていうことはありえません。

プロがブラッシュアップする(場合によっては応募アイディアを完全無視する)ことは折り込み事項なのでしょう。

その際、元デザインの人がもらえるものは……ほとんどないのでしょうね、多分。


そのあたり、この企画の怪しいというか、こすいところですよね。

どうにも、契約や権利の関係の書き方が曖昧な気がするのですよ。

別途契約すると書いてあるのも、ある意味で良心的かもしれませんが、場合によってはトラブルの元になる気がします。


 ちなみにこんなことを書いてはtwitterで流したりしたものだから、ワタシのアカウントは『ロボつく』公式アカウントから早々にフォローを外された。ブロックされなかっただけマシかも知れないけれど、正直、公式がそういう大人げない対応をする時点でかなり危険な兆候といえただろう。

 それでも、ワタシとしては『この企画を利用してやる』ぐらいのつもりでいた。大体、創作するというのは、そのぐらいの意気込みと覚悟がなければ続けられるものではない。何かを犠牲にしても、誰かを踏み台にしてでも。それでも貫き通したいものがあるからこそ創作しているのではないか。

 ワタシは突き進むことを躊躇わない。

 そしてだからこそ、ワタシは最悪で――そして最高な彼らと出会うのだった。


〈第零章 了〉




第零章第四話あとがき

作者代理エル


さて、というわけで無事、第零章は完結です。

そもそもこれは連作短編なので、基本的にそれぞれが完結した内容なのですけれどね。

えっ、所々、尻切れトンボな感じがする……ですか?

いえ、元々、そういうものなので。


ところで、ウチの作者ですけれど、次は「第三章を書くかもしれない」とか言っています。

今現在、少しプロットを立てたみたいですけれど……。

これ、第三章って、色々と危ない内容含んでいませんかね?

いえ、まあ、第零章もこれはこれで危ないネタがわんさかとあるわけですけれども。


あっ、ちなみにややこしいかも知れないので、ここらで『創作の協奏曲』の章立てについて時系列順に整理してみますと、


 第零章 創作の序曲――機兵少女フリージア・ザ・クロニクル(連作短編)

 第一章 創作の協奏曲クリエイターズ・コンチェルト――あるいは狂想曲ラプソディア

 第二章 タイトル未定

 第三章 タイトル未定

 第四章(最終章) 創作の狂想曲――ツナガラナイ未来


……という感じで、あえて順番滅茶苦茶に書かれているわけです。


もっとも、書くつもりになっていても本当に書くかどうかは不明です。

賞に出せるわけでもない作品に、あまり時間を割くものでもないですし。

なので、とりあえず作品管理としては『完結済み』にしておきますね。

気が向いたら、新しい章が増えているかも知れない……という程度に、とらえていただければ良いかと思いますので。<(_ _)>


二〇一七年六月一日

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