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創作の協奏曲  作者: 久遠未季
第一章 創作の協奏曲(クリエイターズ・コンチェルト)
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終、題名のないメカニカル・コンチェルト

終、題名のないメカニカル・コンチェルト


    *


 かくして、『ロボつく大戦(仮称)』改め『メカニカル・コンチェルト(前編)』はリリースされた。

 多忙な人間が多いということで全体でのオフ会は見送られたものの、一部のメンバは集まり、ささやかな祝宴を開く。

 集まったのは薩摩隼人とおもてがわしんじ、そしてエターナル・ミキだった。

 場所は千葉県の某市、薩摩行きつけの寿司屋である。

「エルさんと薩摩のアニキって、住んでいるところ、近かったんスね?」

「ああ、どうやらそうらしいな」

「ええ、同じ市内で、ギリギリ徒歩で行ける程度のところですね。まあ、四〇万人都市……鳥取県並の人口を誇りますし、確率的にはあり得ない話ではないですよ」

 カウンター席に三人で座り、左端に薩摩、中央におもてがわ、右端にエターナルという配置である。

 エターナルは「薩摩さんに避けられているかな?」と思ったものの、口には出さない。

 この店の美味い寿司を食べるときに、何もわざわざ飯が不味くなるような話は出したくなかった。

「この店は、オレの行きつけでな。……親父さんの長男と、高校の同級生なんだ。だから高校生の頃から、この店の馴染みでな。あの頃は、タダで食わせてもらったりした」

「へぇー、同級生ッスか。俺も、そういう腐れ縁みたいなヤツはいるッスけど……ヤツはエロゲマニアのしょうもないクソどもなんッスよねー。そんな美味しい思いなんて、したことがなかったッスよ」

 自慢げにいう薩摩と、本当に味が分かっているのかどうか怪しい調子でどんどん寿司を食らうおもてがわ。ただ、このふたりはゲーム制作ではろくな作業をしていないので、こうしてオフ会をしていてもゲームそのものの話題が出てこない。これで『完成慰労オフ会』だというのだから、本当、恐ろしいものだ。この場にエターナルがいるのはとんだ皮肉であるのだが、果たしてこのふたりは分かっているのだろうか。

 おもてがわは『おもてがわ企画(仮称)』を自然消滅させ、続いて発案した『おもてがわ企画第二弾(仮称)』はプロット完成度の低さからロックと薩摩に却下された。今は、『おもてがわ企画第三弾(仮称)』のプロットを提出し、シナリオを書き上げようとしているところであるが――正直、かなり危ういというのがエターナルの感想だった。先の『おもてがわ企画(仮称)』のメカデザインは雁間であり、『おもてがわ企画第二弾(仮称)』のメカデザインはヒキワリであり、どちらもラフデザインまでは完成させていたのだが、その上での企画廃案なのである。要はこの男、年少組ふたりの作業を二度までも反故にした張本人ともいえる。一体、今度は誰に迷惑をかけるつもりなのか。エターナルもさすがにそれはまずいと思うので、今度は企画廃案にならないように協力してやる腹づもりである――ただ、それはおもてがわのためというよりも、彼の行動に泣かされる人間を減らすためという意味が強いのだが。

 薩摩はオフ会の幹事としては役立っているものの、むしろシナリオを書かずに遁走したという意味では、プラスマイナスゼロといったところだろう。いや、むしろ最近はまた、シナリオを書くとか書かないとか言い出しているので、今後の動向に要注意といったところだろう。それで今度は『本物』になるというのならば良いが――場合によっては、何らかの手段を講じて排除してしまうぐらいのことをしないと不味いかも知れない。

「まあ、とにかく、今日はオレのおごりだ! ……遠慮せず、食べてくれ」

「おお、マジっスか? アニキ、太っ腹!」

 薩摩の言葉に、おもてがわが「ひゃっほぅ」と奇声を上げる。

 そういえば、このおもてがわという男、これで案外と若い人間だったらしい。

 趣味が七〇年代や八〇年代のアニメなので、てっきり四十代や五十代なのかと思いきや、実際の年齢は二十歳。

 つまりサークルの中では下から三番目にあたるわけで――一応、これで本来は年少組というべき立場なのだ。


「まあ、このサークルらしいといえば……らしかな?」


 問題が山積していて支離滅裂で、ダメな人間ばかりで、大義名分や志さえも矛盾している。

 それでも、エターナルはこういうのも悪くないと思っていた。

 ゴミ捨て場に落ちていた種を植えたところ、新しい品種が出来た――という逸話もあるではないか。

 むしろ、そういうものこそが、エターナルの性に合っている。

「んっ、どうしたッスか、エルさん?」

「ううん、何でもありませんよ。ただ……」

「ただ……?」


「いつか、この『メカニカル・コンチェルト』のこと、小説に書いて発表してやる……って、思っただけですよ」


 あまりに込み入った話で、整理することは難しいだろう。

 中には、物語としての面白さを優先して、現実にはなかったことも織り交ぜるかも知れない。

 それでも、いつかはそうしたいとエターナルは思う。

 それぐらい、彼らは最低で――最高のキャラクタを持った人々なのだった。


〈第一章 了〉


第一章あとがき

        作者代理エル


Lです。

もとい、エターナル・ミキです。


作者の久遠未季に代わって、ワタシがあとがきを担当します。

えっ、そもそもこの久遠未季って、ろくにあとがきを書かないだろうって?

そうでなくとも、エターナル・ミキというのは久遠未季という人間が創作した架空の人物だろうって?

まあ、固いことは良いではないですか。ラノベ界隈の古き良き伝統芸「登場人物にあとがきを書かせる」ですよ。


ともあれ、本作品は『第30回前期ファンタジア大賞』で二次選考落選したものです。

こんな危ない作品を新人賞に出すなよといわれれば、それまでですけれど……一応、配慮はしていましたよ?

前書きに、ちゃんと断りを入れていますし。

それに、この作品は『各登場人物を悪く書かない』ということを心がけましたから、大丈夫……な、ハズ。


とはいえ、どうしても自分のことを良く書いてしまう懸念はあったので……。

どうやら、作者自身をモチーフにしたキャラクタについては、いくらか嫌な人物として描写したらしいですけれどね。

でも、うーん、嫌な人物なんていましたかね?

ワタシなんかは、よく人に「いい性格しているね」って言われるぐらいですし。


あっ、ちなみにこの『創作の協奏曲』って、構想だと全四章構成らしいです。

ただ、何故だかこの作者、つい先頃「第四章が書けた(※第二章と第三章はプロットすら組んでいない)」と言っていましたっけ。

そんなわけで、完結済み作品にはなっていますけれど、そのうち第四章とやらが更新されるかもしれません。

というか、この作者は「小出しにするのが性に合わない」と、一気に全話公開しているぐらいですし……多分、数日内に件の第四章を公開するんじゃないでしょうか?


あとがきで書くべきことは以上ですね。


二〇一七年二月十六日

 それでは皆さん、機会がありましたら、またお目にかかりましょう。

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