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平凡貴族の日常談  作者: ロイ
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双子とロイとリリア

「はい、そこで右手を捻らない」


 訓練場で、リリアに剣術の手ほどきをしているロイをレイナとリアナが眺めていた。

 それはまるで監視するかのようであり、ロイは落ち着かない様子だった。

 またそれはリリアも同じなのか、ちらちらとそちらを気にしている。


「……リリアという娘はともかく、ロイ殿はそこそこだな」


「えぇ、強くもなく弱くもなく。

平凡ですね」


 本人たちは聞こえても構わないと言わんばかりに話しているが下手をすれば不敬罪に当たる。

 しかしロイもリリアもそのことを追及するつもりはなかった。

 ロイは下手にかかわるだけ面倒と思い、リリアは兄の顔に泥を塗るような行為は控えるべきと自分をいさめていた。

 しかし、次の瞬間リリアとロイが豹変することとなった。


「この程度ですか、これならばアレン殿の方がましです」


 妹の方、黒いドレスのリアナがそういった瞬間、その鼻先にロイが木剣を突き付けた。

 双子の周囲に数百の魔法が展開され、いつでも殺せる状況が作られる。

 否、ロイがいなければ確実にリリアは二人を殺していたであろう。


「僕のことはどうでもいいですがアレン兄さんを『マシ』呼ばわりとはどういう了見ですか」


「アレン兄さんはともかく、ロイ兄様を軽視するようなら殺します」


 二人の声には怒気が含まれていた。

 いつでも殺せる、その意思が伝わったのか双子は顔色を変える。

 しかしそこは数多くの修羅場を乗り切った貴族の娘らしく気丈に振舞っていた。

 

 普通の小娘であれば失禁して泣き出していたかもしれないこの状況で不敵に笑って見せた。


「私共の目が曇っていただけでした。

大変失礼しました、ロイ殿」


「先程の発言を全面的に撤回させていただきます」


 言葉だけ、とはいえ謝罪を受けたロイは剣を下す。

 またリリアも兄が許したのなら、と魔術を霧散させた。


「これは……なんというか人間離れした実力ですね」


「よく言われます」


 リリアの作り出した光景を見てレイナが声を絞り出すが、リリアはそれに冷たく返す。

 一度地に落ちた評価を取り戻すのはすさまじく難しい。

 それが恋敵の評価となるとなおさらだ。


「ロイ殿も、あの距離を一瞬で詰めるとは」


「あの程度、アレン兄さんならあなたの背後に回り込んでいますよ」


 ロイも角を立てるつもりはないが、嫌味を籠めてそう言い放った。

 早くも彼らの関係はよからぬものとなり始めていた。

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