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平凡貴族の日常談  作者: ロイ
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ロイのお見合い

 ある日の午後、ロイ含む5人の兄妹は両親とともに応接室にいた。

 7人の対面には3人の帰属が座っており、内二人はロイに近しい年齢の双子のようだ。

 その容姿は瓜二つというに相応しく、また貴族としての礼儀も教え込まれているのかお茶を飲むにしても優雅な手つきである。


 しかし、ロイは冷たい汗を感じていた。


(これはだいぶまずいですね)


 冷や汗を流しながら右隣に視線を向けると不機嫌を隠すかのようにひきつった恵美を見せるリリアの姿が目に入った。

 それを見て炎の雨が降らないことを祈りつつ、左隣に座っている父に目を向ける。


(が・ん・ば・れ……か。

なんと無責任な)


 父からはアイコンタクトで応援が帰ってきたのみで具体的にどう白という指示はない。

 今、ロイはお見合いを行っていた。



 事は3日前になる。

 マーキュリー家は上級貴族でありながら、市民からの信頼も厚く、そして戦力的な観点でも力があった。

 それ故に、貴族同士の面会も多く行われ、時には親善試合やお見合いも多くあった。

 しかしお見合いは長男であるトリスが、親善試合は力自慢のアレンが、と

いうのが通常であった。

 しかしその時ばかりは話が違った。


「此度は我が娘たちをロイ殿の妻として迎え入れていただきたいと思います」


 ロイの父にそう話を持ちかけたのは同じ上級貴族の一員であり、ロイの父、ロード・トマス・マーキュリーの古い友人であるブルー・シード・アメジストだった。

 アメジスト家は長らく王国の調停官を務め、不正を行った貴族へ罰を与えることを仕事としていた。

 それ故に恨みを買うことが多かったが、代々武力に優れており事有る旅に貴族からの報復や夜盗を撃退してのけていた。


「それは随分と急な話だな。

こればかりは本人の意思という物もある」


 ブルーの要求にロードはそう答えたが、互いに譲る気配はなくそれならばとお見合いが行われることになった。

 下手をすれば貴族仲に亀裂が入ることとなりかねないがその時はその時という事になっている。


「……それで、どうしてこの時期に私に妻を持てと」


「ふむ、そこからですか」


 お見合いの場でする話ではない、と分かっているもののそれを知らねばどうしようもない。

 さらにそれを聞き出せるのは、立場上自分しかいないという事を悟ったロイは渋々といった感じで切り出した。


「実は私はもう長くないのですよ。

心臓を患っておりましてな。

持って3年、それが医者の見立てです。

そうなるとこの子たちはアメジスト家の頭となります。

しかしそれは、貴族から恨みを買う者の筆頭となるという事でもあります」


 だから、自分の生きているうちに後ろ盾を得てほしいという事だろう。

 みなまで言わずともその場にいた全員が理解していた。

 しかし、頭でわかっていてもとロイは思う。

 ブルー卿が連れてきている二人の女性、黒髪の見目麗しい方々ではあるが何を考えているのかわからないほどに無感情だ。

 自分はいい、貴族として政略結婚など日常茶飯事だ。

 しかし妹の手前、それを口にするわけにもいかず、更に言えばリリアには幸せになてもらいたいと考えているロイは政略結婚には否定的だった。

 だからと言ってここで断れば、誰もが苦い顔をすることも目に見えていた。


「……わかりました。

ですがいきなり結婚というのも気が早い話。

お互いに少し歩み寄りましょう。

まずは友人としての付き合いを行いたいと思います。

その間他の帰属への求婚、私との縁談の破棄、その他諸々はそちらの意向に従います。

いかがでしょうか」


「うぅむ……では1年以内に決めていただくという条件を飲んでくださいますか。

その期限を過ぎたら娘たちを娶っていただく。

そして、貴族として普通の生活が送れるという条件の元好きに使っていただいて構いません。

いかがかな」


(このタヌキおやじ……余命3年とか言って結構元気ですね)


 内心毒づきながらも、顔には出さないように平静を保つ。

 時に右隣から発せられる無言の圧力に、ロイは冷や汗が止まらなかった。

 それが功を弄したのか、頭を冷やす事が出来た。


「それでは、1年互いに歩み寄れるよう努力いたしましょう」


「ありがたい、この赤いドレスの方が姉のレイナ。

黒いドレスの方が妹のリアナです。

よろしくお願いします」


 そう言って、ブルーは立ち上がり合わせて双子も立ち上がった。

 それに合わせてロイ達も立ち上がり、そして双方頭を下げた。

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