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精霊剣の一閃  作者: ウィク
第一章 聖女(リン・イチノセ)
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4話 ボクが聖女様?

誤字や表現のおかしな部分等ありましたら、教えてください~!

 どうしてこうなったのか……いや、多分ママのせい。

 目に映るのは白いワンピース。(女児用)

 そしてニコニコ笑顔のママ。


「娘の着替えを覗くわけには……いやでもパパだし……」


 ボソボソ呟きながらドアの前をうろうろしているのはパパ。

 状況変えられないならいっそ出てけ!


「……えっと、ママ…?」

「お着替えしましょ〜?」

「……」

「お着替えよ〜?」


 ど、どうしよう。


「パパに見られるのは……嫌…か?」

「出ていってください」


 ボクに即答されたパパは、肩をガックリ落として部屋から出て行く。

 ぶっちゃけ構ってる余裕はないから。

 地味にダメージ増やす人だし。


「ママ……間違っていたらごめんなさい。それ、女物だと思う。」

「そうよ〜?」

「いえ、そうよ〜じゃなくて……ボクは男ですよ?」

「知ってるわよ〜?だって私が産んだから」


 話しが通じない。

 いや会話自体は成立しているけど、ボクの気持ちが伝わらない。

 ……むしろ気づいてないフリしてない?

 ママはニコニコしながら近づいてくる。

 ボクはそれに対して、両手を前に出したまま後ろに下がる。


「リンちゃん、世の中にはどうしようもなく理不尽なことってあるのよ〜?」


 2歳ちょっとで理不尽な目に合うなんて、すごく理不尽だ。……だから理不尽なのか。あれ?何言ってるかわからなくなってきた。


 ――――トン


 少しずつ後退していたボクの背中に理不尽な壁が立ちふさがる。

 まぁ部屋の壁なんだけど。

 ……別に壁は理不尽じゃないね。


「ママ……どうしても着なきゃダメ?」

「ダメよ〜?だって昨日、神父さんとお話ししたでしょ?」

「うっ……」


 ママの言葉に昨日の出来事を思い出す。




 ――――――――――昨日の教会にて――――――――――



 ボクが光の羽を降らせた後の事だ。


「リン、大丈夫か?」

「大丈夫」


 パパは心配しながらも、ゆっくりと地面に立たせてくれた。こんな人集りの前で、抱っこされているの恥ずかしいし。


「無理しちゃダメよ〜?」

「そうです。あれほどの大魔法を使ったのですから、体にも負担がかかっているはずです」

「やっぱり抱っこしようか?」

「いえ!大丈夫です!問題ないです!!」


 神父さんの言葉を聞いて、さらに心配そうな顔になる両親。

 でもボクにとっては周りの状況の方が気になる。

 なぜなら、さっき立ち上がった時も。


「聖女様が立ち上がったぞ!」

「聖女様大丈夫ですかー!?」

「聖女様は無事だぞー!!」

「聖女様ー!!」


 かなりうるさい。

 水晶のある祭壇までは入ってきていないけど、かなり人が集まっている。


「それにしても……どうしよ」


 ボクの言葉が聞こえたのか、神父さんが近づいてくる。

 ……正直あまり近づかないで欲しい。


「お母さんとお父さんも少しこちらに来てください。お話があります」


 そう言って両親を呼び寄せ、小声で話しを始める。


「現在のあなたの状況を確認しましょう。いいですか?」

「はい?」

「あなたは全ての魔法属性を持っている事が証明されました。おめでとうごさいます」

「ありがとうございます」


 神父さんの言葉に、魔法が使える事を改めて実感する。

 つい嬉しくなって笑顔になる。

 そんなボクに向かって真剣な表情で話していた神父さんが頬を赤らめる。

 ……何この人、やっぱり怖い。

 ボクの引きつった顔を見た神父さんが、咳払いをして真剣な表情に戻る。


「ただ、これほどの魔法をかなりの人数に見られてしまいました。あなたの噂はあっという間に広がるでしょう。」

「あ……」

「それと、あなたは今何歳ですか?」

「2歳です」

「お父さんとお母さんは、この子について何か感じたりはしませんでしたか?」


 神父さんはボクに突然年齢を聞くと、今度は両親に話を振る。

 年齢が問題なの?


「うちの子は天才なのよ〜」

「自慢の子だ!」


 二人とも微笑みながら即答してくれます。

 ……恥ずかしいけど、ちょっと嬉しい。


「天才……やはりそうですか」

「もちろんよ〜」

「そりゃな」

「何がですか?」


 何か三人だけ納得してるけど、ボクには意味がわからない。


「いいですか?あなたはわからないと思いますが、2歳の子供はこれほど上手にお話しできません。あなたは敬語も使っていますが、普通にできる2歳はあまりいないでしょう」


 あっ……。

 しまった、普通に喋りすぎたみたい。

 気味が悪いかも……。

 そう思って落ち込むボクを、突然ママが抱きしめる。


「リン君、何も悪い事じゃないのよ〜?だって私たちはすぐにお話しできて、とっても嬉しかったのよ〜?」

「自慢の子だって言ってるだろ?お前は胸を張ればいいんだよ。それにお前ほどじゃないにしても、結構しゃべれる子もいるから心配するな」


 何か嬉しすぎて涙出てきた。

 ボクは見られないようにママを抱きしめ返して顔を隠す。


「も〜!可愛すぎよ〜!泣いてるのバレバレ!」

「あっはっはっはっ!」

「う〜……」


 隠せてなかった。


「話を戻していいですか?」

「あ、すみません」


 ボクたちの様子を微笑みながら見ていた神父さんが聞いてきた。

 恥ずかしい。


「あなたは天才なんです。もちろんさっきお母さんが言っていたように、それ自体が悪いことじゃないですよ?ただ、あなたは全魔法も使える。……大魔法ですらね。」

「……つまり?」

「それほどの子供を、周りは放っておかないでしょう」

「え?」

「あなたを利用しようとする人たちが出てきます。最悪、あなたを連れ去ろうとする人も出てくるかもしれません」

「なんだと!?」

「そんなの許しません!」


 神父さんの話に、パパとママが怒り出す。

 ボクは不安でいっぱいになり、無意識にママの洋服を掴む。


「大丈夫よ、パパとママがついてるから」

「俺が必ず守ってやるから、安心しろ」


 不安そうな様子に気づいたママがボクを優しく抱きしめ、パパは安心させるように頭を撫でてくれる。


「それで、対策が必要だと思います」

「対策……あるんですか?」

「もちろんです。あなたの存在はもう隠すことができません。ならばいっその事、あなたの存在を広めるのです」

「……逆に危険な人が増えませんか?」

「増えるでしょうね」

「ちょっ……」

「しかし、それ以上に味方が増えます」

「え……?」

「周りを見てください」


 神父さんに言われて周りを見わたす。

 ……相変わらず聖女様コールが続いていて、うるさい。


「あなた一人の為に、こんなに集まっていますよ?」

「あ……」

「これだけの人に注目されていれば、あなたを襲うのは難しいでしょう。それと、私の言う条件をクリアできるなら、教会の者が支援できます」


 つまり、言う通りにすれば守ってやってもいいって事か。

 ……むしろ利用しようとしているのはこの人じゃない?

 でも、ボクの存在は危険なものになりかねない。特に両親にとって。

 二人ともボクの為ならなんでもしそうだ。

 ボクも二人の為ならなんでもしたい。

 ……そこを狙われる可能性がある。

 一人でも多くの味方が必要だ。

 教会はかなり大きな組織だろうし、無茶な条件でなければ従った方がいいだろう。


「……条件はなんですか?」


 内容によっては断る。

 ボクは神父さんの目を見て聞く。

 すると目を瞑る。


 無駄にためないで……怖いから。

 5秒ほどすると意を決したように目を開け、真剣な表情で口を開く。


「聖女様になってください」


「えええええ!?」


 神父さんはそう言うと、頬を赤らめて目を逸らした。

 ……怖っ!

 この人の趣味じゃないよね!?

 と、とにかく条件は女のフリをしろって事かな。

 それぐらいで家族や自分の身を守れるなら安いものだけど。

 普通に嫌だ。


「いいですか?まず聖女になる事のメリットを教えましょう。一つは先ほども言ったように、教会からのバックアップを受けられる事。二つ目は、普段聖女として活動していれば、男の格好をしている時のあなたと聖女が同一人物だとバレにくい。つまり安全に動ける時間ができます」


 なるほど……。

 魔法を使えるのは聖女だと噂が広がれば、男として出歩いていてもボクだとばれない。聖女って言うくらいだから女だって思っているだろうし。


「でも、男だってバレませんか?」

「大丈夫ですよ。私たちがカバーします。それに、聖女ともなればその体に気安く触れるような人もあまり出てこないでしょう」


 うーん……悪くない条件かも。

 自分が自由に動けるって言うのはかなり大きい。

 出歩けなくなるのはいやだもんね。


「……その条件、呑んでもいいです。」

「そうですか!では!!」

「ですが、こちらの条件も呑んでもらいたいです」

「……条件とは?」

「家族の安全も……守ってもらいたいです」

「リン君……」

「リン……」


 神父さんは一瞬驚いたような顔をするが、すぐに温かい目で微笑み出す。

 両親はボクを優しく抱きしめながら涙ぐむ。


「もちろんその条件呑みましょう。もっとも、イチノセ様にその必要は無いかも知れませんが……」

「いや、せっかく俺たちを心配して言ってくれたんだ。この子が安心できるなら構わない。それに、味方は多い方がいいだろ。何かあっても対処しやすくなるしな」


 ん……?

 神父さんとパパが話しているけど、よくわからない。

 そもそも……。


「あの……イチノセって誰ですか?」

「何言ってるんだリン」

「うちの苗字だよ~?あ、そう言えば教えた覚えがないよね~?」

「ええ!?」

「そうだったか、そうだったかもしれん」

「と、言う訳であなたの名前はリン・イチノセよ~。覚えてね~?」


 名前……日本語じゃない?

 一之瀬だよね?

 って言うか……。


「あの、パパの名前って……レヴィン・イチノセ?」

「おう!」


 芸名か!?

 ボクは引きつった笑みを浮かべつつ、内心ツッコミの嵐だった。

 ……深く考えるのやめよう。そういう文化だと諦めよう。

 それはともかくとして。


「えっと、パパは強い?」

「おう!流石に世界一とは言わないが、それなりに強いはずだぞ」

「パパは竜と戦った事もあるのよ〜?」

「え……竜!?」


 竜が存在するの!?


「絵本を読んであげたことがあったでしょう?」

「うん、空飛んだり火を吐いたりする大きな生き物?」


 絵本だったから、てっきりフィクションだと思っていた。妙にリアルな絵だとは思っていたけど、実物を参考にしているんだなきっと。


「戦った事があると言っても、パーティー組んで行ったからな。俺一人で戦った訳じゃないぞ?」

「十分凄いよ!」

「はっはっはっはっ!」


 ボクの突っ込みに、何故かパパは嬉しそうに笑う。


「とりあえず、パパが強いなら安心です。ボクはむしろ家に居た方が安全ですね」

「ええ、ですが一応家の周りくらいは警戒させてもらいますよ」

「ありがとうございます」

「では、お互い条件を呑むと言う事で問題ありませんね?」

「はい……あっ、でも勝手にボクを聖女にして大丈夫なんですか?」

「大丈夫ですよ?私は教会本部の幹部ですから。結構権限があります」

「え……?」

「実は各教会の様子を、視察して回っている途中だったのです。今日こちらでお会いできたのは、まさに神のお導きですね」


 何故か嬉しそうにニコニコ笑う。

 この神父さん、教会のお偉いさんだったのか。

 ……こんな変態で大丈夫なの?


「とりあえず、ボクはそろそろ疲れたので帰りたいです」

「ああ、今日は初めての外出だったからな」

「そうね~。そろそろ帰りましょうか?」

「では明日そちらに伺いますので、詳しい話は明日しましょう」

「はい」

「あ……それとですね、大変言いにくいのですが……」

「……なんでしょうか?」


 また妙に間を作って……。

 そして神父さんはもじもじし始めた……気持ち悪い。


「聖女としての噂を広める為、明日から女として生活してください」

「はあ!?」

「恐らく明日には噂が広がっていて、家の近くまで見に来る人も多いと思います。男だとバレてしまえば、この作戦は無意味になってしまいます」

「うっ……」

「と言う事で、お父さんとお母さんもそのように対応をお願いします」

「わかった」

「やったー!」

「やったー!?ママ!?」


 何でママ喜ぶの……。

 あと冷静な声でわかったと言いつつ、一瞬ニヤっとしたの見えたからねパパ。

 それはともかく。

 確かに家で男の格好している所を見られれば、疑問を持たれてしまうかもしれない。

 ではどうするか。

 しばらく女の格好で過ごす方がリスクが少ない。

 ……ボクの心労はともかく。


「しばらくは女として生きる術を、お母さんから習ってくださいね?」

「うぅ……」

「この先聖女として、他の人たちの前に出る事もあります。そんな時にぼろを出さないよう、今のうちに練習してください。いいですね?」

「……はい」

「それでは、今日の所はお家に帰ってゆっくりお休みください。あれだけの魔法を使ったのですから、大丈夫だと思っていても今日一日はしっかり休むようにしてください」


 大丈夫なんだけど……。

 しぶしぶ頷くボクを確認した神父さんは、立ち上がって人集りの前へ歩いていく。


「みなさん、聖女様はお帰りになるそうです。あれだけの魔法を使い、疲れ切っています。皆さん道をあけてください。それと、しばらく自宅で休む必要があると思いますので、皆さんは、聖女様を疲れさせないようご配慮ください」


 神父さんの言葉に、集まっていた人たちは一斉に道を開ける。


「さ、行くぞ」

「はい……わわっ!?」


 歩き出そうとするボクをパパが持ち上げてお姫様抱っこする。

 何で!?って目を向けると


「さっきの神父さんの言葉聞いただろ?」

「あなたは今、疲れ切っているのよ~?」

「大丈夫ですよ!」

「だが、その方が都合が良い」

「そうね~。疲れ切ってるならみんな遠慮してくれると思うよ~?」

「うぅ……」

「余裕があるなら、みんなに笑顔で手を振ってやれ」

「そうね~。その方がポイント高いわね~」

「ポイントって……わかったから、早くかえろーよー」

「はいは~い」

「それじゃ、帰るぞ」


 そしてボクは引きつった笑顔を振りまきつつ、大歓声の中家へと向かったのだった。





 ――――――――――現実に戻る――――――――――



 回想終了。


「思い出した~?」

「……はい」

「それじゃ、諦めてね~?ふふふ……」


 と言う事で、ボクはどうやら聖女として生活する事になりました。

 しばらく女の格好しないといけないなんて、考えただけで頭が痛くなりそう。

 でもこれで自分と家族の安全が確保できるなら、頑張るしかないよね?

 よし、頑張ろう!

 頑張るぞー!




 それはともかくママ、涎出てますよ…。

 あと、ドアの隙間から覗いているパパ……ばれてますよ?


正直、何でこんな流れ(聖女に)になったんだろう?

一応大体の流れや大きなポイントは決めていますが、頭の中で文章読みながら想像していると勝手に話が進んでいきます。

こんな流れになるとは思わなかったけど、とりあえずこのままいけるとこまで行って見ます。


次回も、更新早めにできるよう頑張ります。

今後ともよろしくお願いします。

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