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精霊剣の一閃  作者: ウィク
第一章 聖女(リン・イチノセ)
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16話 友達と護衛

誤字や表現のおかしな部分がありましたら、ご指摘をお願いします。

「……落ち着いた?」

「うん……」


 セシリアは、ようやく泣き止んだリンからそっと体を離す。それでも手だけは優しく握り、不安にさせないよう配慮している様子が伺える。


「ちょっと移動しよ?」

「……うん」


 二年生と一年生の教室を繋ぐ廊下は人通りが少ないとは言え、いつ誰が通るかわからない。リンが泣いている間に誰も来なかったのは奇跡的だと言えた。その為、場所を変えようとするのは当然と言えるのだが……このままではホームルームをサボる事になってしまう。

 リンは教室に戻るべきか逡巡するが、セシリアに付いて行く事を選ぶ。

(今戻っても、みんなに顔を見せられない……)


 セシリアはリンを連れたまま、校舎裏の周りから見えない場所へと移動した。

 日当たりが良いのに周りから死角になる、こんな場所があった事にリンは驚くが今は有難かった。


「こんな場所があったんだね〜?」

「うん、私だけの秘密の場所なの。みんなには内緒ね?」


 そう言うと、人差し指を唇の前で立て、ウィンクして見せる。


「こんないい場所、ボクに教えて良かったの?」

「いいのいいの!リンちゃんだけは特別ね、いつでも使っていいよ?」

「やったー!」


 さっきまで泣いていたとは思えないような、笑顔と明るさを見せる。側から見れば無理しているのがバレバレなのだが。

 その姿を見たセシリアは、繋いだ手をギュッと優しく握る。


「何があったか……聞いてもいい?」


 その言葉にリンは体をびくりとさせるが、ポツポツと話し出した。




「……」


 話を聞き終えたセシリアは、怒りで奥歯がギリギリと音を立てる。最初泣いたのを見た時には、何か失敗をしてしまったのだろうと思っていた。しかし、内容は予想以上に酷いものだった。教師によるリンへの嫌がらせ……それも年上で知らない人たちに囲まれた状態でとなると、想像以上に苦しい時間だったに違いない。


「ご、ごめん。聞いてて気持ちいい話じゃなかったよね。忘れて!」


 怒っている様子のセシリアに、リンは謝り立ち去ろうとする。

 セシリアはハッと我に返ると、慌ててリンの手を掴む。


「ま、待って! リンちゃんに怒った訳じゃないの! あのファルコって奴にムカついただけだから!」

「う、うん。ありがとう……。」

「私が何とかする!」

「ありがとう……でも、大丈夫だから! さあ、そろそろ教室に戻ろう? ごめんね、ボクのせいで怒られちゃうね」


 そう言うと、リンは笑顔を見せる。本当は大丈夫じゃないが、セシリアに迷惑を掛けたくなかったのだろう。話を切り上げる為、リンはセシリアの手を引いて教室へと向かう。


「……大丈夫よ。先生には私から上手く言うから、リンちゃんは後ろからついてくるだけでいいの!」


 これ以上何を言っても無理だと判断し、セシリアはリンの言う通り教室へと向かう。

(言葉で言っても納得できないよね……だから行動で示す!)

 一人胸の内に決意を固め、リンと一緒に教室へと向かう。




 ――――ガラッ


「あら? セシリアさんにリンさん? 一体どうしたんですか……ホームルームはとっくに終わっていますよ?」


 教室に戻ると、そこにはロレーナ先生が待っていた。表情から見て怒っている様子は無い、ただ心配をしたと言う顔をしている。

 リンとセシリアは内心ほっとする。


「ロレーナ先生、リンちゃんが気分悪そうにしていたので落ち着くまで一緒にいたんです」


 セシリアはリンを庇うように抱きしめ、ロレーナ先生に訴えた。まあ……嘘はついていない。


「何ですって!? リンさん、大丈夫!?」


 ロレーナ先生はすぐさまリンへと駆け寄り、気遣うように声を掛けてくれる。リンは優しく接してくれる先生に、また涙腺が緩みそうになるが何とか堪える。

 今のリンは、少し優しくされただけでも涙が出そうな状態だった。目を潤ませながら堪えるような表情……誰が見ても苦しそうな姿にしか見えない。

 当然、それを見たロレーナ先生はさらに慌てた。


「た、大変! とても苦しそうだわ! 今すぐ治療院へ!!」

「せ、先生。ボクは大丈夫ですから、落ち着いてください」


 リンは慌てて大丈夫だと伝えるが、ロレーナ先生は話しを聞かず、人を呼んで来るからと教室から飛び出そうとした。するとタイミング良く、護衛のカリーナさんが姿を見せる。


「あら……あなたは?」

「失礼、私はリン様の護衛をしている騎士、カリーナ・コレットと申します。リン様を治療院へと運びますので、先生には校門に立っている騎士へ馬車を用意するよう伝えてもらえますか? 私はリン様をお連れします」

「その剣……わかりました、すぐに伝えます。」


 カリーナさんは剣の柄に嵌っている水晶を見せる。すると魔力を込めたのか、水晶の中に十字架が浮かび出す。それを見た先生は指示に従い、校門へ向かって走っていった。

 この十字架が浮かび上がる水晶は、教会で認められた騎士にのみ渡されるもので、身分証明の一種になっている。もちろん、本人以外が魔力を流しても浮かび上がる事はない。



 先生が走って行った後、教室は急に静まり返る。セシリアの顔を見ると何故か、カリーナを強く睨みつけていた。それを受けるカリーナは、どこか後ろめたそうな表情をしている。


「ど、どうしたの……?」

「あんた! リンちゃんの護衛でしょ!? 何でこんな事になってるのよ!!」

「……」

「セ、セシリア……?」


 急に怒り出したセシリアに、リンは驚いて思わず萎縮してしまう。


「大きな声を出すな、リン様が驚いてらっしゃる」

「誤魔化さないで!」


 カリーナの指摘にも引かず、セシリアはさらに声を大きくする。するとカリーナは、歯を食いしばりながら静かに言葉を零す。


「ああ、私はただ見ている事しかできなかった……」

「何で……何でよ!?」

「リン様の学校生活には……極力介入しないよう言われているからだ」

「だからって……!!」

「セシリア!! ……お願い、やめて。カリーナさんを責めないで……。ボクが悪いんだ……だから」


 さらに追及しようとするセシリアに、リンは耐え切れず声を上げる。両目からは涙が溢れ、苦しそうに両手で胸を押さえて泣き出してしまう。


「リンちゃんは悪くないよ!」

「そうです、私が不出来なばかりに……」


 二人は慌ててリンのフォローをする。すると、リンは涙を流したまま笑う。


「お願い、二人とも喧嘩しないで……。二人ともボクにとって大事なんだ……だから」


 リンの言葉を聞いた二人は、静かにお互いの顔をのぞき見る。そして同時に頷き


「ごめんなさい。八つ当たりをしてしまって……」

「いや、こちらこそ申し訳ない。護衛だと言うのにリン様に悲しい思いをさせてしまった。」


 二人はそれぞれ頭を下げ、謝罪を交わす。それを見たリンは少しほっとしたような顔をした。


「ごめんね、心配かけて。ボクなら平気だから! さあ、帰ろう?」


 そう言うと、リンは自分の机から荷物を取り出して教室を出る。残った二人はリンの後姿を見ながら、小声で話し出す。


「ごめんなさい。あなたは実際の場面を見て、私よりムカついていたんでしょ?」

「いや、いいんだ。正直言えば、あの教師は斬り捨てようと何度か思ったんだが……」


 カリーナの言葉に、セシリアはくすりと笑う。


「斬っちゃえばよかったのに」

「そうはいかん。リン様に近づく者を感情任せに斬りつけていれば、リン様を孤独にしてしまう」

「……そっか。そうだよね。」


 カリーナが斬らなかった理由を聞き、セシリアは納得した。カリーナがリンの事をちゃん思ってくれているとわかった。


「こちらこそ、すまない」

「へ?」


 突然謝られたセシリアは、思わず変な声を出してしまう。


「君にまで辛い思いをさせてしまった」

「……いいのよ。私はリンちゃんの友達なんだから」

「友達か……いいな。私は所詮護衛、リン様の心の支えになる事はできない。勝手なお願いだが、これからもリン様を支えてもらいたい」

「そんな事、お願いされなくてもするに決まってるじゃない。それに、あなたも十分支えになってると思うよ?」


 セシリアの言葉に、カリーナは一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔に変わる。

 二人が笑いあっていると、先に歩いていたリンが急に振り向く。


「二人とも置いていくよ~!?」

「ごめんごめん! すぐいくー!」


(良かった、ちゃんと仲直りできたんだ)

 リンは二人が笑い合っているのを見て、少し元気が出た。


 この後、校門前で他の護衛やロレーナ先生と合流する。

 だいぶ楽になったので自宅で休みますと話し、治療院には行かずそのまま自宅へ戻る事にした。





 ――――――教会にて、カリーナ・コレット


 教会の一室に、二人の姿があった。一人はカリーナ、もう一人はエドだった。


「以上、今日の学校での様子です」


 ちょうど上司であるエドに報告した所だった。

 話を静かに聞いていたエドだったが、目には怒りの炎が宿っていた。


「そうですか、そんな事が……」

「はい。このままではリン様の体調にも影響が出ると思われます。早急な対応をお願いします」


 カリーナはエドに向かって、深く頭を下げる。


「もちろんです。すぐにでも対応しましょう。ただ、私が介入する為にはそれなりの準備が必要です。なるべく急ぎますが、それまでリンさんの事を頼みますよ」

「はい」


 二人は互いに頷くと、それぞれ準備のための行動に移った。




 ――――――自宅にて、セシリア・ルミエール


 セシリアは自宅の各部屋を、キョロキョロしながら回っていた。

 しかし、どの部屋を開けても探している人物は見つからない。


「セシリア? 何か探し物?」


 家の中を歩き回るセシリアに、母が問いかけてきた。


「お父様がどこにいるか知りませんか?」

「確か……出張とかで、一週間ほど家を空けるそうよ?」

「一週間……」


 母の回答に、セシリアはがっくりと肩を落とす。

(一週間も待ってられない……でも、どうしたら……)

 落ち込んだ様子で自室へと戻っていくセシリアを見ながら、母は一人呟く。


「そう言えば教会からも連絡が来ていたわね……。うちの主人は今日大人気ね」




いつもお読み頂きありがとうございます。


ちょっと内容が荒いです。自分の表現力の無さを痛感しています。

もうちょっと勉強しよう……。

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