透明人間
僕は透明人間。
誰の目にも映らない透明人間。
誰も僕に目を向けない。
誰も僕に声をかけない。
僕はいるのに。
僕はいない。
空気のように。
そこにあるのに。
目に映らない。
同じ場所にいても。
僕という存在は認知されない。
誰も僕を見ない。
誰も見てくれない。
僕は本当にここに居るのかな?
僕はここにいないんじゃないかな?
だって、僕はここに居るのに。
誰も見ない。
誰も声をかけない。
それって、ここにいないのと一緒じゃないか。
あはは、と僕は笑う。
その笑いは虚しく僕の心に響いた。
僕はそこを後にする。
階段を登って扉を開けて。
そこには青い空が広がっていた。
空の色は綺麗だ。
透明な僕なら、きっとあの綺麗な青になれるんじゃないかな。
僕はそうして飛び立った。
でも、僕は空の青にはなれなかった。
不思議なことに。
透明な僕は赤に染まっていたんだ。
誰かの叫び声がする。
誰かが僕を指差している。
ああ、透明な僕にも色が付いたんだ。
できれば青になりたかったけど。
透明人間じゃなくなったんだ。
そう思うと僕は嬉しくて笑った。
やがて赤は黒になった。