I lived this world.
自分の学校の文学大賞として出す前に投稿します。
1度でもいい。少しでいいので考えてみてください。
貴方の友人が本当に信じられるかを。
いつからこんな考え方しか出来なくなったのだろう。冷たく客観的にしか見れない自分に飽き飽きする。たまには主観的に我儘を言ってもいいんじゃないのか。
自分の意見を言えと誰かが言う。周りに合わせろと父さんは言う。いた方がいいと誰かが言う。産まなきゃ良かったと母さんが言う。こんな生活やめて離婚しようと父さんが言う。子供の為にもそれは止めたいと母さんが言う。みんな、みんな、自分の為に何か言う。
君がいた方がいいと世界は言う。僕の代わりはいないと言う。
僕がいなくても世界が回る。僕の代わりに誰かがいる。
矛盾した冷たい世界で、僕は生きていた。
I lived this world.
「まだー?」
そう問いかけてきたのは僕の友人だ。気だるそうに、また少し急がせるように彼は低い声を発した。
「早くしろよーカラオケ行くんだろ?」
「あぁ、ちょっと待ってくれよ。もうすぐだから」
カバンに参考書などを詰めて背負う。昼飯にはちょうどいい時間。空も快晴、悪くない一日になると思う。
僕は首都圏内にある、とある大学の学生。身長は少し高め、体重は普通。無論ルックスも普通の目立ちはしない学生だ。友人はそれなりにいる。今、早くしろって言ってたやつとかあと今日一緒に遊ぶ残りの3人とか。彼が言ってたカラオケというのは今から遊びに行くことだ。今日は午後の講義は出ずに遊ぶ予定。僕は一応、真面目で通っているので欠席も少なく成績も悪くはない。遊ぶ余裕なんていくらでもあるということだ。
5人くらいで大学を出、電車に乗る。2個くらい先の駅が最寄りの所へ行く予定らしい。基本僕はこうやって付いていくことが多い。なので一番後ろで付いて行っていたのだが、どうやら迷子になっているらしかった。
「ここのカラオケ初めてでさー」
「ネットで見たら安かったんだよ」
なんて会話をしている。大学生なんて馬鹿ばかりだ。僕はそう思っている。むしろ同級生と言うのは皆効率とかそういうのを考えず突っ走るバカしかいない気がする。自分が天才と言うつもりはないが、同級生のレベルなんてたかが知れている。
「あ、あそこじゃね?」
誰かが指差す。そこに看板が大きく出されていた。実は僕としてはさっきから見えていたのだ。ただ言わないだけで。
「お前気付いてたろ。看板見てたしよ」
ばれた。多分、僕がじっと見てたから気になって何を見ているのか、一緒に見ようとしたら看板を見つけたということなのだろう。
「いや、行くところの店名、知らなくてさ・・・」
「言えよなー!ったく・・・ほら、行こうぜ」
ぞろぞろとビルに吸い込まれる4人。それにつられ僕も入る。一番後ろが一番安心する。だがそれと同時に寂しさも感じる。こうして見ると、大体2人と2人で話している。結果僕は1人余る形でみんなに付いて行くことになる。だからなのか、僕はいつも壁を感じていた。4人の中で2人と2人で話しているということはこのカラオケに入る瞬間に僕が消えてもきっと気付くのは店員が人数を確認した時だ。集団の中での僕はなんて酷く消えやすい存在なのだろう。自分が黙っていても世界は何も困らない。あの友人には彼が居て、もう一人の友人には他の彼がいる。僕の代わりはいくらでもいるこの世界で、じゃぁ何故僕はここにいるのだろう?
家に帰る。みんなにとってはきっとそれは安息の時かもしれないが僕にとっては一番辛い時でもある。いつものように母親のヒステリックな声と父親の怒号が鼓膜を揺らす。こんな日常にももう慣れたと諦めて、自分の部屋にいきPCを立ち上げヘッドフォンをした。自分の世界に閉じこもれば外の音は聞こえない。
もう耐えられない離婚しようと父親が言って、僕がいるから可哀そうだから離婚できないと母親が言う。なんでそうやって親は僕を、子を盾にするのだろう。わかっている。僕は母親にとって父親を繋ぎ止めるだけの鎖でしかない。そんな声、事実を聞きたくなくて音量を最大にしてスピーカーの部分を思いっきり耳に押し付けた。皿の割れる音。何かが投げつけられ地面に落ちる音。僕は何も聞いてない。何も知らない。
翌朝。
いつもの時間に目が覚めた。廊下で泣き崩れそのままうずくまる母を見る。リビングにはいつものように誰もいない。割れた皿、散らばった物を避けてトーストを作る。父親はもう仕事に行ったと思う。自分用に作られたトーストをほおばりつつ用意を進め学校へ行く。本当にいつもの日常。僕にとってはこれが一般家庭の日常だと思うくらいの「普通」だ。誰かが言ってたっけ。そういうのを普通と思ってしまう家庭を作った親は、精神的虐待を子にしていると。当時小学生だった僕にはわからないけど、父親は聞いていたと思う。でも、まぁ関係ないか。
今日はいつもと違うことをしてみようと思う。誰にも話しかけないということをしてみようと思うのだ。特に意味はない。ただ、友人に話しかけないだけで僕の存在はどこまで薄くなれるのかの実験。僕はこの時点で、あれほどまでに衝撃を受けるとは思ってはいない。そう、あれほどまでに。
朝。誰も話しかけに来ない。登校時はまぁいつもこんな感じで一人で登校することが多いからいつものことと言えばいつものことだ。何も変わらない。
昼。誰も昼食に誘いに来ない。どれだけ自分が友人に粘着していたかを思い知らされた。僕はまるで寄生虫のようだったのかもしれない。
放課後。結局誰一人、僕のもとへは来なかった。いったい今まで僕はどれだけ友人に寄生していたんだろう。バカみたいだと自嘲した。そこで僕はハっとする。気づいた。気づいてしまった。
親友でも友人でも恋人でも両親でも信用できる人なんていないということを。
たとえどんなに口で言っても、それが真実だと確かめる証拠なんてどこにもない。たとえ体をどんなに張っても、どれだけ一緒にいても、その人にとってはあくまで暇つぶしにしかなっていないのかもしれない。つまり、人間はいつ裏切るかわからない。あそこで仲良く話している二人組。すぐ隣にいる友人だと思っている奴が他の場所で相手の陰口を言い、秘密をばらしていないとは保証はできない。そう思ったとき、僕はどうして今まで安心して友人なんてものに秘密を預けたり話したり仲良くしたりしているのかわからなくなった。
そしてもう一つ気づいた。僕の存在意義。今何も話さずに一日を過ごし、皆は何も思わずに僕の存在を無視し一日を過ごした。ならば僕なんていなくても世界は回るということ。
僕が死んでも、何も変わらず世界は在るということ。
僕はそれに気づいてしまった。きっと泣いてくれるのは慣れあった友人たち。でもその友人たちも日がたてば何もなかったかのように僕を忘れまたバカ騒ぎし、やがて社会人になって・・・と未来を生きるのだろう。ふと頭をよぎる母親の言葉。あんたなんて生まなきゃよかった。父親の言葉。お前さえいなければ。むしろ僕は消えたほうがいい人間なんじゃないか?そう思った瞬間にもう僕は駆け出していた。大学の屋上、5階の、それはきれいな屋上に。
明かりがついている。もう夕日が沈み夜が始まったばかりの時間。僕の存在なんて無しに世界は回る。いつからこんな悲観的になったのかは覚えていない。けど、両親に裏切られたあの日からきっと僕は狂っていたのかもしれない。
僕が死んだら、きっと両親は悲しむだろう。でも、父親はようやく離婚ができると安堵し母親は重荷がなくなったと歓喜するに違いない。友人たちは悲しむかもしれないがそれも時間の流れが消して、僕をなかったことにしてくれる。僕はそう知っている。
冷たい手すりが早くしろとせがんでいるようだった。それを飛び越えて何もない淵へと立つ。風が少し涼しい。
誰かが早く飛び降りろといった。それは多分幻聴で母親のような、父親のような、友人のような、他人のような声で何回も何重にも聞こえてきた。誰からも愛されず誰からも必要とされずなんて、なんて悲しいのだろう。せめて、せめて誰かに必要とされたかった。少しでも。ただそう願っただけなのに。でも、きっともう遅いんだ。
一歩を踏み出す。地面のない床。頭が必然的に下になり、スゥッと血の気が引いたように冷たくなって。意識を失う直前思った。
もう少し、生きていたかった。
目が覚めると大学の前だった。僕は死んだような記憶がある。どうしてここにいるんだろう。しかも何も持たずして。
周りを見るとみんな登校してきている頃だった。しかし何かが違う。僕だけ何か雰囲気が違う。そう思って一人に声をかけようと手を伸ばした瞬間だった。その手は触れず、相手の肩をすり抜けて空をつかんだ。どういうことだ。僕は幽霊になったのか?
そして振り返るとそこには真っ黒な姿の僕がいた。
黒いスーツ、黒いステッキ、黒いメガネ、黒い靴、しかし反対に真っ白い肌。
そう、その姿はまるで
「死神・・・?」
To be continued・・・?
憂鬱な気分になったら、それが私の目的達成です。
この青年には救いはありません。
あったら私自身こんな卑屈な性格ではなかったと思います。
人なんて信用に値しない。
これは誰しもが知ってて誰しもが見て見ぬふりをしているのではないかと思っています。
この小説に救いがあるのなら、どうか私に教えてください。
それは私の人生の糧になるかもしれませんから。