センパイの趣味とオレの運命
8月8日に夏ホラー作品として出品したものがもう一つあります。ご興味がおありでしたら是非お立ち寄り下さい。
「センパイ、何スか話って」
外の灼熱地獄が嘘のようにクーラーが効いたマンションの一室。センパイに呼び出されたオレは、出された麦茶を一気飲みして聞いた。
「ああ、ちょっと相談なんだけどさ。実は俺、殺したい奴がいるんだ」
テーブルに煎餅を盛った器を置きながら、センパイは淡々と言う。
「またっスか。一昨日トモキ殺したばっかじゃないスか」
オレは呆れを含んだ素っ頓狂な声を上げた。
「うん、まあそうなんだが、こればかりは仕方ない。唯一の趣味なんだから。という訳で、また死体処理手伝ってくれ」
センパイは真面目腐った顔でしれっと言い放つ。
「いやっスよ。大体先月二十人殺したでしょ。その度にオレは安い金で死体処理に駆り出されて、迷惑してんスよ」
オレはこれまで積もりに積もった鬱憤を爆発させた。
「殺し足りないんだからしょうがないだろ。お前だって好物の人の死肉が食えるんだし、ギブアンドテイクだ。しかもこっちは金まで払ってる。一度に二度おいしいじゃないか」
開き直るセンパイ。
さっきから蚊が飛び回っている。この家に虫を撃退する類の物は一切ない。
「いくら好物でも毎日だと飽きますよ」
オレが言うと、センパイはこれみよがしに舌打ちする。
「贅沢者め。じゃあ牛や豚や鶏の肉を食うってか?」
オレは有り得ないとばかりに首を激しく左右に振る。
「そんな可哀相な真似できる訳ないスよ。オレもそこまで残酷じゃないっス」
飛び回っていた蚊が、テーブルに置かれたセンパイの右腕に着地する。オレは煎餅を取ろうとした手を引っ込めた。センパイは蚊に一瞥をくれただけで話を再開する。
「断るならお前を殺すまでだな。俺の秘密握ってるし、生かしてはおけん。残念だが、新しい相棒を募集するよ」
「そんな、人の頭スイカ割りに使うみたいな軽い言い方やめて下さいよ。あっさり相棒を捨てて恩を仇で返すなんてマジヒドイっス。この鬼! 悪魔!」
オレは声を潜めて罵倒する。センパイの腕にいた蚊は、血をたっぷり吸って満足したのか、飛び去っていった。それを目で追ってから、センパイはオレを見据える。
「一応希望は聞いてやるよ。どうやって殺されたい? 絞殺、毒殺、銃殺、刺殺……。ちなみに俺が得意なのは刺殺。好きなのは絞殺な」
愉快に話すセンパイに、オレは肩をガクッと落とした。
「殺す気満々なんスね……」




