王妃を狙う者6
ユティシアは牢を抜け出すと、屋敷の探索に向かった。逃げ出すわけがない。逃げ出すなら、何のためにわざわざ捕まったのかわからない。
令嬢に毒を仕掛けられた時に、抵抗するなり何なり出来たけど、ユティシアはそうしなかった。それは、令嬢に関するある噂があったからだ。
ユティシアの狙っていた物は、忍び込んだ一つ目の部屋で難なく見つかる。
―――人身売買の証拠。
令嬢は人を攫い、他国に売り渡していた。
このことが、なぜ露見しなかったのか。令嬢は、あまり頭がまわるようには見えない。本当ならば、すぐに見つかって処罰されていたことだろう。
これには理由がある。一つには、令嬢の父親は国王に重用されている大臣の一人であまりこの本邸に顔を出すことはなく、普段は令嬢と使用人たちだけであること。
そして、もう一つは――――
「あなたは囚われの身の立場で、何をしているのでしょう?」
そこに立っていたのは、従者の男。腰にある剣に手をかけているが、ユティシアがそんな脅しに屈するわけもなく、男を見つめる。
「それはこちらの台詞です。この邸であなたは何をしているのですか?」
…犯人は、間違いなくこの男だ。すべて裏で事を動かしていたのは、この男。この男、ただ者ではない。おそらく、令嬢以外の、大きな力を持った誰かの指示で動いている。この男の手によって、令嬢の犯罪は綺麗にもみ消されていたのだ。
「あなたは、この女性を使って、何をしようとしたのですか?」
「関係ない。それより、あなたには消えてもらわねば」
男は、剣を抜く。
ユティシアも、男が剣を抜いたのを見て攻撃に備える。
「私ごとき消えたぐらいでは国は揺るぎませんよ」
「そんなの、やってみなければ分からないだろう?」
男が、ユティシアに切りかかった。
「ちょっと、どこ行ったの?私の従者、出てきなさい!」
令嬢は探しながら、各部屋を覗く。お茶を始める準備を頼みたかったのだが。令嬢は次々に部屋の戸を開けていく。
しかし、ある部屋で足を止めることとなる。
「な、なによ…これ…」
令嬢は言葉を失った。
そこにいたのは、牢に入っていたはずの王妃と、倒れて気を失っている従者。
「あなた、自分が何をしたか、理解していますか?」
王妃は冷たい目で令嬢を見つめる。
「こんなことをする方は、陛下は認めません」
「なにも…悪いことはしていないわ。王妃は、化け物だもの…殺して、当然。陛下をだまして富と権力を手にした。陛下を救うのは、当たり前じゃない。…あなたみたいな女より、私のほうが陛下にふさわしいに決まっているわ!!」
「では、人身売買のことは、どうやって説明するのですか?」
「なんで、それを…」
女は、明らかな動揺を見せる。
「悪いことをしている人の事は、自然と耳に入るのですよ?」
ユティシアはにっこり笑った。
「もう…生かしておけないわね。あなたたちっ、出てきなさい!!」
令嬢の一言で、黒い衣服を身につけ、顔を隠した者たちが姿を現す。30人くらいはいるだろうか。
「そう…こんな組織とも、つながっているのですか…」
女は罪が増えるばかりだ。従者の男がユティシアに倒された今、女は無力だということを理解しているのだろうか。
「殺してしまいなさい!!」
女の命令で、黒服の男達がユティシアに襲い掛かった。
ユティシアさんが、強いです。ちょっと怖いです。イメージ壊れてないかな?
でも、あくまでユティシアさんはいい子です。腹黒ではありません。
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