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魔封じ3

ユティシアは完全に体が動かせるようになるまでディリアスに世話を焼いて貰うことになったのだが―――――。


「ほら、口を開けて」

「………………」

ユティシアは納得できないながらも食事を含む。


―――――食事の世話までしてもらうことになるとは…。


そういえば、こんなことが前にもあった。あの時、二度とディリアスに食べさせてもらうことがないよう頑張って食べようと誓ったのだったが、今の状況はどうしたことか。


ちなみに食事だけでなく、朝起きてから夜寝るまでディリアスと一緒にいる予定になっている。最近は事件続きで公務が取りやめになり、しかも書類もほとんど片づけてしまったらしくて彼はたいそう暇なようだ。

確かに、誰かの力がないと水を飲むことさえも難しいのだから、ありがたいのだが…ディリアスにそれをさせるのは躊躇われる。王妃が陛下にこんなことを頼んで良いのか。いや、そもそも妻が夫にさせることではない。


ディリアスは、数日食べていないので胃が弱っているユティシアに果物を用意するなど、すごく気を使ってくれている。


「ほら、これが最後だ」

最後の一口をユティシアに食べさせると、自分も最後の一口を食べる。


ディリアスの世話焼きはこれだけでは終わらなかった。


「ユティシア、風呂も一緒に入ろうか?」

「いえ、それは…」

「フィーナも、おとうさまとおかあさまと一緒に入るー!!」

突然現れたフィーナは、そう言ってユティシアに抱きついた。フィーナにお願いされたユティシアは――――あっさり陥落した。


「ユティ、体を洗ってやる」

「それはさすがに…」

「フィーナも洗ってあげる!!……おかあさま、いや?」

「……どうぞ」


フィーナの、体調が思わしいくない母に対する気遣いは嬉しいはずなのに、ありがたいはずなのに――――――今この瞬間だけは、それがユティシアを追い詰める結果となっている。


フィーナの援護によってディリアスの望み通り事が運んでいく。結果的に、ユティシアはディリアスの世話焼きに身を任せるしかなくなった。


「ユティ、のぼせていないか?」

「大丈夫です」

精神的にはまったく大丈夫ではないのだが。


「フィーナも、熱くないか?」

「うん、きもちいい」


ディリアスはフィーナが溺れないように注意しながら、二人の体を温まらせている。


ちなみにディリアスは気を使ったのか、ユティシアにバスタオルを纏わせている。無論、脱ぐときに裸を見られているので、意味はないのだが。



入浴後、ディリアスはフィーナを部屋に返し、ユティシアを寝台に運んだ。


「そういえば、魔封じの腕輪のおかげで、子供の問題は解決するな」

ディリアスは嬉しそうに笑みを浮かべながらユティシアに尋ねてきた。


確かにそうだった。この魔封じの腕輪はユティシアの魔力を完全に抑えていた。これで、魔眼と魔力は反発するおそれはない。


「本当ですね…」

「こんなことも、遠慮なく出来るわけだ」


ディリアスはユティシアに優しく唇を重ねた。そして、頭の後ろに手を添えると、深く、深く口づける。

確かに、触れることが危険と言ってからディリアスはユティシアに触れることを少しだけ、憚っていた。最近の行動は、その反動だろうか?


ユティシアは突然のことに驚いて、頭が真っ白になる。


「…………陛下っ…」

突然のことに、力のない手で前にある胸を押しのけようとしたが、出来なかった。突然自分を抱きしめた腕は、思った以上に力が強くて。


「良かった…。本当に、子が出来ないと聞いたときは、ユティに触れられないと分かった時は、どうしようかと思った…」


ディリアスの吐露した思いに、ユティシアは胸が熱くなる。


「本当に、方法が見つかってよかった」

ディリアスはそう言って、今まで見たこともないような眩しい笑顔を見せた。

ユティシアも、その綺麗な笑みにつられて口元が緩む。


「陛下の今の笑顔、素敵です。もう一度、見せてください」

その言葉に、ディリアスは一瞬驚いた顔をする。だが、もう一度笑みを浮かべてユティシアを見つめる。

「ユティの笑顔は華のようだ」

「陛下の笑顔はお日様みたいです」

そう言って二人は顔を見合わせ、微笑みあう。


「陛下、私、陛下と家族になれて良かったです」

そう言って、ユティシアはディリアスの首に抱きついた。

子供ができるのだと嬉しそうに喜ぶディリアスを見て初めて、心の底から嬉しいと思った。幸せだと感じた。


ディリアスはユティシアの額にキスを落とし優しく布団をかぶせて、二人は眠りに就こうとしていたのだが――――。



ディリアスはふと浮かんだ疑問を口にした。


「もしかして、子供が出来ないから女として見て貰えないと思っていたのか?」

「……………」

図星のようだ。

ユティシアは思わずディリアスから視線をずらす。


ディリアスに女として見てもらえないということ――――それは同時に、ユティシアもディリアスをそういう対象として見ていなかったということで。

ディリアスは呆れたような表情をしてユティシアを見る。


ユティシアはむぅとディリアスを見る。

仕方がないのだ。子ができない王妃なんて、愛情を注いでもらえるとも思えなかった。


しかし、ユティシアはあることに気づき、その思考を止めた。


だが、ディリアスは当初子供が出来ない事実を知らなかった訳で、それはつまり、自分は最初から彼にとって――――。


ディリアスはぽつりと呟いた。

「…………恋愛対象に」

その言葉に、ユティシアはぴくりと肩を揺らす。

「これから、俺はユティの恋愛対象に入るわけだな?」

甘い笑みを浮かべてユティシアに口づけた。


ユティシアは、顔を真っ赤にして俯いていた。

不覚にも初めて、ディリアスを男性として認識してしまったのだ。


ディリアスはその反応に、にこっと笑みを浮かべてユティシアの頭を撫でた。

――――初めて見せた彼女の反応は、可愛くて仕方がなかった。



ユティシアは心の壁をすべて取り去った。


どれだけ伝えても届かなかった想いは、彼女の心に届き始める。




白銀の華は闇を打ち払い



陽の下にその姿を現した




お久しぶりです。更新遅れてすいません。


ルーターを交換したところ、インターネットにつながらなくなってしまいました。

インターネットの使えない生活なんて、死んでしまう!!と思い必死で方法を模索した次第です。

知識を持つ方に協力して頂き、何時間もかけてLANがつながりました。

最終的にはルーターのボタンを連打!!! したらあっさり繋がったワケですが。…不良品ですか、コレ?



たぶんそろそろ(あと一話くらい?)闇に咲く~は完結します。完結しないことも考えたのですけど…。


読者様にはすごく聞き捨てならない事実だと思います。だって、メイン二人の関係はまだ……。


ユティシアさんとディリアスさんが両思いになってないのに終わるなよ!!という読者様からの熱い文句は受け付けますが、完結を覆すつもりはございません。


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