新たな襲撃者2
お久しぶりです。
身内の危篤…ということで気を遣って感想・コメント等控えて下さった方、ありがとうございます。
色々ありましたが作者は復活しましたので、これからもよろしくお願いします。
「なぜ、王都に攻め込むような真似を…」
いくらユティシアを蔑ろにした者たちとは言え、王都に攻め込むことの意味は分かっているはずだ。
「陛下が悪いのですよ。私たちに兵を集めるだけの時間を下さった、貴方が」
魔法師は杖の先をディリアスに向けた。
「まあ、いいです。貴方たちはすぐに死んでもらいますから、事情を話してもいいでしょう」
魔法師は、自信たっぷりに前に進み出て語り始めた。
「実は、とあるお方が私たちを拾って下さったのです。その方は、兵を貸すからディスタール王国を潰して来い…と言われました。そのかわり、征服した王国の統治権は私たちに
譲っていただけるそうです。利害が一致しましたので、協力することにしました」
「あるお方…とは?」
「さあね、私もよくは知りません。ただ、莫大な魔力を身に宿した方だった。あの方こそ、わが主に相応しい」
魔法師は恍惚とした表情で語り、元騎士団長もそれに対し頷く。
「お前たち、一応勧告しておく。今すぐ、武器を捨てて投降せよ」
「陛下、あまり私たちをなめていると、痛い目にあいますよ。こちらの軍勢は一万。貴方は投降を命じられる立場でしょうか?」
「うちの騎士団はお前たちが抜けてから実力を上げた…信じられないくらいにな」
「はっ…まさか、勝てるとお思いで?」
「大陸一の国防を誇る、ディスタール王国の力を見せてやろうか?」
「こちらこそ、お相手して差し上げますよ」
元騎士団長が剣を振り上げ、兵を動かそうとしたとき――――。
「ユティ、今だっ!!」
ディリアスの声と共に、ユティシアはぱちんと指を鳴らした。
その音は、静寂の中遥か遠くまで響き渡った。
「な…んだと!?」
ユティシアが指を鳴らした瞬間、次々と兵が倒れていく。ドミノのように倒れていった兵は、だれ一人目を開けようとしなかった。
一万の軍勢は、ユティシアの魔法ひとつで眠りについてしまった。
「おっまたせ~、陛下」
ディリアスが振り向くと、そこにいたのは大勢の騎士達を従えたゼイルだった。
実は、最初の転移魔法でゼイルだけ城に飛ばしていたのだ。ディリアスが会話によって時間稼ぎをしている間にゼイルは騎士を集め、駆け付けたというわけだ。
「お前たちの駒はすべて使えなくなった。そのうえ、こちらの味方はたくさんいる。さあ、どうする?」
ディリアスは敵に勝ち誇ったように笑みを浮かべた。
一万の軍勢はほぼ戦闘不能、かろうじてユティシアの魔法を逃れた者も、不意を突かれたせいで出鼻をくじかれる結果となり、戦意を喪失していた
ディリアスの作戦によってユティシア達は形勢逆転に至ったのだった。