魔物の襲来8
今回もケータイからです。
ディリアスとゼイルが一歩足を引いた瞬間、魔物が二人に襲いかかろうとした。
しかし、寸でのところでユティシアが召喚した大剣で魔物の攻撃を受け止めた。
さらに魔物の動きが止まった隙をついて、アルヴィンが尻尾を鞭のように使い、魔物をふっ飛ばした。
「陛下、魔眼を使って下さい!」
ユティシアの指示に従い、ディリアスは即座に魔眼を解放させた。それによって、より濃密な霧が現れ自分の周りを取り囲んでいく。…しかし、先程までの、足がすくむような感覚は消えた。
魔眼の気配が、自分の周囲の魔を抑え込んでいるのが分かった。
未だ魔眼が覚醒していないとはいえ、魔眼の力は強大な力を持つようだ。…完全に覚醒すれば、魔を圧倒することが出来るのだろう。
隣のゼイルを見ると、魔眼の効果によって彼も魔の恐怖から解放されているようだった。
「さてと…反撃を開始しますか」
ゼイルがにやりと笑い、ディリアスに目配せした。
ゼイルが魔法で魔物の視界を遮ると、ディリアスは剣を抜いて魔物に切りかかった。
「陛下、いけません!」
ユティシアが叫んだが、ディリアスは構わず魔物に突っ込んだ。
ユティシアは身体強化の魔法を使い、ディリアスを助けるべく彼と魔物の間に身体を滑り込ませようとしたが、間に合わなかった。
「くっ」
「陛下!」
ディリアスの呻きにユティシアは悲鳴を上げた。
ディリアスは腹部を刺され、大量に出血していた。
目を見開いたまま膝をついて地面に伏した。
―――先程、何が起こったのか、見えなかった。…腹部に走った痛みで漸く理解できたのだ…自分は魔物に攻撃されたのだ、と。
これ程までに魔物と自分の間には実力差があるというのか。
「陛下、大丈夫ですか?」
ユティシアがディリアスの元へ駆け寄り、治癒魔法をかけた。
いつもと違い、魔力の消費を抑えるため徐々に治癒していく方法を選んだので、完全に回復するまでには時間がかかるだろう。
「ゼイル殿は、陛下を守っていて下さい」
「ユティシアちゃんはどうするの?もしかして、戦うつもり?」
「…このままでは、大切な人を守れません。私は、何も、失いたくないですから」
ユティシアの瞳には強い光が宿っていた。
「アルヴィン、行きますよ。これ以上魔物の好きにはさせません」
ユティシアは不敵な笑みを浮かべ、美しい動作で剣を構えた。
アルヴィンがユティシアに答えるように尾を揺らした、その次の瞬間―――二つの姿は消えた。