魔物の襲来5
「では、行って参ります」
ユティシアたちは城の前でローウェ、シャラ、フィーナに見送りをしてもらった。皆、心配そうな面持ちでこちらを見ている。
「気をつけてくるのよ。政治の方はこちらに任せて。王都内での魔の被害者はこちらで対処しておくからね」
シャラ様はフィーナを抱っこしながら言った。
「迷惑をかけます、母上。絶対、無事で帰ります」
「頑張って来てね?」
シャラ様はディリアスの頭を撫でた。
…きっと彼女にとって、何歳になってもディリアスは息子に変わりないのだろう。
「おかあさま、ずっと会えないの?」
フィーナが不安そうに問いかけてきた。
…彼女は、漠然とだが周りの雰囲気から何か感じ取っているようだ。その瞳は頼りなく揺れて今にも泣きだしそうな顔をしていた。
「大丈夫、すぐに帰ってくると約束するから、ね?」
ユティシアは安心させようとフィーナの頭を撫でる。
「おーい、そろそろ出発すんぞー!」
馬車に乗っているゼイルから声がかかる。
村には馬車で向かうようだ。魔の蔓延している場所に御者を連れて行くわけには行かないので、ゼイルとディリアスが交代で御者をするらしい。
「ユティ、行こうか」
ディリアスはユティシアの手を引いて、馬車に乗り込んだ。
揺れる馬車の中から問題の村の方角を見ると、どんどん魔の気配が濃くなっているのが分かった。
「これはやはり、魔の影響と見て正解ですね」
ユティシアは隣に大人しく座っているアルヴィンを撫でながら言った。
「ああ、そのようだな」
ディリアスは魔眼を発動させて答えた。濃すぎる魔のせいで、辺りが暗く見える。
「ところで、ユティ。…その、手元の大剣は何だ?」
ユティシアの手に抱えられている大剣を見て、ディリアスは尋ねた。
「護身用です。だって、魔物に遭遇したら困るではないですか」
「魔法を使えばいいだろう。魔法師なのだから」
「そうですけど…」
魔法を使っても倒せないこともない。しかし、制御しきれない魔法はどうしても剣より確実性に欠けてしまうのだ。それに、敵は最強ランクの魔物だ。
最強ランクの魔物は恐ろしい。彼らはどんな能力を持っているのかすら分からない。
上級までの魔物は、炎、水など自分の持つ属性の攻撃や、物理攻撃ぐらいしかしてこない。しかし、最強ランクの魔物となると奇怪な進化を遂げているものが多い。新しい魔物を次々に生み出す能力を持っていたり、相手の能力をコピーできたりするものもいる。
騎士団でも最強ランクの魔物を討伐できる、“狩人”の称号を持つ者が少ない理由はそこにある。最強ランクは、上級を隔絶した圧倒的な強さを持っているからだ。
―――――絶対に、油断などできるはずもなかった。
更新が遅くなってすいません。
しかし、受験生なので勉強の方を頑張らないといけないんですっ!
これから更新が遅くなっていくかもしれませんが、大目に見てください。