魔物の襲来4
翌日、ユティシアは貴族たちを集めるようディリアスに頼んだ。貴族たちは、数日でほとんどが集まった。皆、魔法などを使用して慌てて王都に来たそうだ。
王都の周囲は魔物が多いとあらかじめ言っておいたため、“光の盾”に護衛を頼んで魔物はうまく回避したらしい。
―――――ここに呼んだ目的はもちろん、魔物の情報を聞き出すため。
魔物の発生状況などを見ると、王都内に集中しているのは確かだが、魔物の行方はまったく掴めなかった。ユティシアは魔物が王都の外に住処を持っていて、そこから王都に襲撃に来ているのではないかと推測した。
貴族たちのほかにも、ローウェ、ゼイル、アル、さらにはシャラも参加して、おまけにシルフィとアルヴィンがユティシアの足元に座り、緊急会議が始まった。
ユティシアは貴族たちに現在の王都の状況を簡単に説明した上で、それぞれの領地で異常が起こっていないか尋ねた。
魔物による被害は貴族たちの間でも、問題になっていたらしい。しかし、魔物の出現は何人かから聞いても、魔に憑かれた者がいるという報告はなかった。
「あの…関係があるかどうかは分かりませんが、ある村で伝染病のようなものが流行っておりまして…。女子供が次々と倒れ、目を覚まさないそうです」
一人の貴族が、そう発言した。彼は王都の近くに領地をもっている者だった。
彼の報告によると、一ヶ月ほど前から病が流行り始めたが、治療法が見つからず為す術もないために放っておかれ、誰もその村には近付かなくなっているという。
ユティシアはその村の位置を地図で確認した。
「なるほど、ここからなら王都に来るのは容易いですね。それに、病気の症状も魔に憑かれた時の症状と一致しています」
「そうだな。そこが有力候補だな」
「それで、陛下…私はそこへ行ってみたいと考えているのですが、お許し頂けないでしょうか?」
ユティシアの発言に全員が目を剥いた。
「駄目に決まっているだろう!魔物に殺されるかもしれないんだぞ!?それに、本当に伝染病だったら移るかもしれない」
「私は、魔を祓うことが出来ます。ですが、早く行かないと手遅れになるかもしれないのです」
「王妃様、どんな理由があろうと、御身を危険に晒すようなことだけはおやめ下さい」
ローウェが必死に説得したが、ユティシアは譲らなかった。
ついにユティシアの熱意に折れたディリアスが口を開いた。
「…分かった、だが、俺もついて行くぞ。ゼイルも、護衛として連れて行く」
「王都の方が手薄になってしまいますよ。国王が留守にするのはまずいかと…」
「政治の方は、ローウェと母上が残っていれば、問題ない」
「そうですか…。では留守の間、アルとシルフィはシャラ様とフィーナの護衛をお願いします…シルフィは王城全体の守りも兼ねて」
現地にはユティシアとアルヴィン、ディリアス、ゼイルが向かうこととなった。魔に憑かれる可能性があるということで、他の者は連れて行かなかった。