王妃を狙う物3
「王妃様、昨夜は大変刺激的な夜を過ごされたのでは?」
いつもの日課で暇つぶしに執務室に行くなり、宰相であるローウェにそう問われた。
…確かに、昨日の襲撃者の件は刺激的…と言えば、そうなのかもしれない。記憶にはあまりないが、最近身体がなまっていたし調度良かったのかもしれない。
「そうですね。予想以上に刺激的でした」
ユティシアは素直に頷く。
…思いがけない答えにローウェは無言のまま固まっていた。
どうしたのだろうか、とユティシアは首をかしげる。
「くくくっっっっ」
ディリアスが声をあげて笑い出す。
「ローウェ、お前の負けだな。ユティシアを、からかうつもりだったのだろう?」
「まさか、こんな反応が返ってくるとは」
ローウェは降参、といった風に両手を上げた。
「実のところ、昨日の夜何があったのですか?」
ローウェが問うと、突然ディリアスの顔が真剣なものに変わる。
「実は、ユティシアの部屋に暗殺者が送り込まれた」
「…やはりまだ、王妃の座を狙う者は多いようですね」
ローウェは顔をしかめる。
ローウェと会話をしていたはずのディリアスがいきなりユティシアの方を向いた。
「ユティシアは、何故あの時気付けたんだ?」
彼女の気配を察知する早さは、ディリアスでも舌を巻いた。人の気配を察知することに慣れている自分でも、ユティシアより気付くのが遅れた。
「えと…昔は寝込みを襲われることが多かったので…無意識に感知用の結界を張り巡らせるようになったのです」
…もちろん襲ってくるのは魔物。討伐に行って野営の際に襲われることなど頻繁にあった。魔物は夜に活発に動くので。まあ、師匠もたまに寝込みを襲うというありえない冗談をしでかしてくれたが。
「そんなことも出来るのか。しかも、魔法を近接戦に応用していたな?」
「はい。それほど得意ではないのですが…」
そうは言っても、暗殺者を一撃でのしてしまう実力はかなり凄い。ユティシアの基準はずれている、と思わなくもないディリアスである。いまだ彼女の本気を誰も見たことがない。それと同時に彼女の限界も見たことがない。一度本気で手合わせしてみたい。
「そうか。ユティ、いくら腕が立つといっても十分気をつけるのだぞ?」
―――そう言っていた、矢先。翌日のことだった。
「大変だっ!ユティシアちゃんが攫われたっ」
慌てて駆け込んで来たのは騎士団長のゼイル。
中庭を散歩している時に突然、何者かに攫われたのだという。今はお披露目の後で賓客がたくさん滞在している。犯人はそれを狙ったのだろう。
ディリアスは護衛をつけておかなかった自分の甘さに歯噛みした。
ユティシアは腕が立つから大丈夫だと、多少楽観視している所があった。彼女の自由を縛りたくなかったという思いもある。だが、そうは言っても彼女はディリアスの守るべき対象であり、これは明らかに自分の失態だ。
「それで…犯人は?」
「今のところは…分からない」
ゼイルの言葉にディリアスは絶望する。
その後もユティシアにつながる情報は、まったく出て来なかった。
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