魔法学校4
アルを呼び寄せたことで多くの見学者が集まって来た。中には教師の姿も見える。それほど、この魔法指導には興味があるということだろう。
「アル殿、あの魔法のどこに問題があるか分かりますか?」
ユティシアが突然王妃から魔法師の顔になったことに気付き、アルは驚く。…アルの顔は、すぐに真剣なものへと変わっていった。
アルは生徒の方をじっと見つめる。
彼は、炎の上級魔法を発動させたいようだった。だが、炎が現れるどころか魔法自体が発動しないのだ。魔力がうまく魔法に変換されない。
何が、おかしい?魔法は呪文と陣が完璧であれば、莫大な魔力がなくても発動できる。男子生徒はそのどちらにも悪い所は見られない。魔力が足りないわけでもない。
「何も、悪いところはないようだが…」
アルはお手上げといった様子で、ユティシアに答えを求めた。
ユティシアは苦笑する。
…こんなにあっさりと答えを見つけることを諦められても困るのだが。
「そうですね。確かに今までの過程で悪いところはありません」
「…今まで?」
「実は、呪文が足りないのです。残念ながら、彼が見た書物は間違っているのでしょうね」
…まあ、よほど優秀な魔法師なら詠唱を省略しても問題ないかもしれないが。
…言われてみれば、上級の魔法の割には呪文があまりにも短いことに気付く。
呪文は魔法の難易度に比例して長くなっていくものだ。
アルはユティシアの知識量に感心してしまう。4歳しか違わないというのに、この知識の差は何だろう。たとえ自分が16になってもこれだけの知識を得られるとは思えない。
さらには、ユティシアは王妃としても様々な才能を発揮している。異国の言葉も喋れるし、最近はディリアスの政務も手伝っているのだ。彼女の努力がどれ程のものか計り知れない。
ユティシアはすぐに男子生徒に正しい呪文を教えた。
最初はうまくいかなかったものの、アルの指導もあって炎の魔法は何度か挑戦すると、成功した。
男子生徒は感謝して何度もお礼を言ってきた。
「王妃様は、魔法師なのですか?」
教師が驚いたように質問する。
「ええ…元、ですけどね」
「まあ、素晴らしいですわね!」
教師は興奮し始めた。
「そんな、感嘆されるようなことでは…」
「謙遜するなよ。俺の師だろうが」
アルが口にした言葉に、周りにいた者たちは目を見開いて驚いた。
―――――魔法師長の、師。
師となるぐらいだから、彼の能力を超越しているのだろうか。歴代でも十指に入るのではないかと言われるアルの強さである。それを超える彼女の強さはもはや理解できない。
ここからはユティシアも指導側にまわり、的確で分かりやすい指摘を生徒たちにしていった。
王妃は魔法学校でたいそう気に入られ、魔法師長と並んで尊敬の眼差しで見られることとなる。