魔法学校3
午後からは実技の授業らしく、生徒たちが外の演習場に集まって行く。演習場は主に、中級以上の魔法を扱う者たちが利用するものなので小さな子どもはいない。
演習場には、大きな結界が張られており、万が一生徒の魔法が建物などに当たることがないようにしてある。生徒といってもここの生徒は上級魔法を扱えるものも多い。魔法が暴走すればただではすまないだろう。
ユティシアとアルは演習場に足を踏み入れた。
憧れの魔法師長の存在に気付いた生徒たちはいっせいに群がってくる。
「アル様、魔法を教えて下さい」
「いえ、ぜひとも私に指導を!」
「僕も、お願いします」
生徒に取り囲まれたアルは困ってユティシアに視線を向けた。
「いいですよ。生徒たちにとってこんな機会は滅多にないのだから、教えてあげてください」
ユティシアがそう言うと、アルは生徒たちに引っ張られ、どこかに行ってしまった。
「王妃様、危険ですからあまり生徒に近付かないようにして下さいませ」
教師からそう言われ、ユティシアは了承したように微笑んだ。その微笑みに魅了された生徒は数え切れない。
ユティシアは教師に説明を受けながら演習場を見て回る。
生徒たちはそれぞれ、自分の好きな魔法を選んで練習している様子だった。教師が生徒を見回り、問題のあるところを指摘していく。
「王妃様、あれが学校で最も優秀とされている生徒です」
教師から紹介された視線の先にいるのは、先ほど難しい顔をして試行錯誤している男子生徒だった。年齢は、ユティシアと同じくらいだろうか。
「王妃様、初めまして」
挨拶はそっけないもので、生徒はすぐに魔法に打ち込む。男子生徒は魔法がうまくいかないらしく、どうにかできないものかと悩んでいるようだった。
「申し訳ありません、礼儀がなっておりませんで…」
「いいのです。とても熱心でいらっしゃいますね」
ユティシアがそう言うと教師は、ほっとしたようだった。
ここは王立の学校だ。王妃の機嫌を損ねることがどれだけ最悪の事態を生むか分からない。
…教師も大変だな、とユティシアは思ってしまった。
「魔法が、うまくいかないのですか?」
ユティシアは男子生徒に声をかける。ユティシアは困っている男子生徒を助けてやることにしたのだった。
「はい。できれば、魔法師長にご指導いただきたいのですが…」
教師たちも扱ったことのない魔法で、質問しても首をひねられるだけらしい。魔法は、古い魔法書をあさっていた時に見つけたらしく、教師たちが専門外と言うのも頷ける。
ユティシアはどうしようか迷った。アルは強いが、経験に基づいた知識はあまりない。
だが、これも経験のうちだと思いアルに男子生徒を指導させることにした。