魔法学校2
魔法学校に着くと、すぐに子供たちが歓迎してくれた。
ユティシアはその歓迎に笑顔でこたえる。
ユティシアとアルは色々なクラスの魔法の授業を見て回った。
はじめは、一番下の学年の子たちの授業だった。
教室に入ると、アルは子供達から尊敬の眼差しを向けられ、騒がれる。しかし、授業が始まると先生の話に熱心に耳を傾けていた。
「魔法は、とても大きな力です。魔物にも対抗しうる力となります。しかし、それと同時に、人々を傷つける力にもなります」
先生の言葉に、子供たちはうんうんと頷く。
「先生、ほんとに魔物が倒せるのー?」
「ええ、そのような魔法師は数少ないですが、皆さんは“白銀の舞姫”を知っていますか?」
「知ってる。騎士団の中でも称号を持つ凄い人でしょう?」
「そうですね。今はやめられたようですが。皆さんも頑張って、称号を持つ人たちみたいに強くなりましょうね」
ユティシアは複雑な感情だった。
まさか、自分の話が出てくるとは思わなかった。あの頃を懐かしく思うと同時に、自分は魔法師をやめて良かったのかと考えてしまう。自分がやめたせいで、多くの人々が傷ついているのでは…と時折心配になる。
……もう、割り切れていると思ったのに…。
次に、最高学年…いわゆる魔法師の卵、とも言われる学年の授業を見た。
最高学年は色々な年齢の人たちがいた。飛び級で上がった子もいれば、何年も学校に残って魔法研究に貢献している人もいる。
今日は研究の成果を発表する授業だった。ユティシアとアルはわくわくしていた。ここは国内でも魔法研究の最先端を行く場所である。どんな内容が聞けるのかと興味津々である。
「魔法において大切なのは、発想の転換です。魔法の対象をどう認識するかで使える魔法の範囲が広がります」
これを聞いてユティシアとアルは顔を見合わせた。
これは、ユティシアがアルに最初に教えたことである。アルはこれを聞いて、現在自身の魔法に改良を加えようと試行錯誤中だ。
「王妃様ってすごいんだな」
アルは改めてそう思ってしまった。
研究員たちが必死で研究したものを、当然のようにアルに教えたユティシア。彼女の魔法に対する才能は計り知れない。
対するユティシアは、また後悔が駆け巡る。自分ができることがこの魔法という分野には残されていることを改めて知り、魔法師としてきちんと復帰した方が良いのでは…と思ってしまった。
魔法学校に来て、自分のすべきことが何か分からなくなってしまった。今は、王妃という立場にいる自分。魔法師である自分と、どちらの方が出来ることが多いだろうか。
それはもちろん、魔法師としてのほうが多くの人に手が届く。未熟な王妃としてでは、その手はいくら伸ばしても届かない。
そんなことを考えて、ユティシアは首を振った。
今、自分の居場所はディリアスの隣だ。王妃という立場が、ディリアスの妻という立場が自分の居場所だ。
これから、魔法の面でも貢献できる場所を探していけば良いだけの話だ。
ユティシアは王妃としてさらに頑張ることを決意したのだった。
忘れているかもしれないので補足。
称号とは、騎士団“光の盾”において、各部門で最も優秀な人たちのことです。
ちなみにユティシアは魔物討伐の部門で“狩人”という称号を持っていました。