陛下のお見合い騒動8
「ところで、子を成せないというのは、身体に問題があるということか?」
「いいえ。身体には何も問題ありません」
「じゃあ…どういう…」
訳が分からなかった。身体に問題はないと言う。ならば、なぜ子供ができないのか。
「以前、私は魔法などの魔に属するものと魔眼は相容れないものだと語りましたよね?」
魔眼の特性を教えてくれた時、確かに話していた。魔眼は、魔法や魔物と相容れないものであると。魔法は、魔眼に反発してしまうのだと。
「まさか…魔力を持つユティシアと魔眼を持つ俺は、相容れないものであると…?」
「魔力を持つだけなら問題ありません。魔眼は魔法を超越する存在です。普通に魔力を持っているだけなら魔眼に力を抑え込まれます。問題は、私が莫大な魔力の持ち主であるということです」
「魔眼では、抑えられないということか…?」
「そうです。今までこんなに接触していたのに、何も起こらなかった方が奇跡です。口付けは、問題なかったようですね」
ここまで聞いて、ディリアスは耐え切れなくなった。なぜ、ここまで二人を隔てるのかと。そして初めて自分の力を恨んだ。愛する人と自分を隔てる力など、欲しくない。
「何か…方法はないのか?」
「魔眼の力に触れても反発が起こらないくらいに、私の魔力を抑制しなければなりません」
「封印は、出来ないのか?」
「調べていますが、私の魔力を完全に押さえられるほどのものは見つかったことがありません」
「じゃあ、俺の魔眼を封じることは?」
「それが一番不可能です。魔眼はすべての上に君臨する絶対的な存在です。魔眼と対等の力など、どこにもありません」
ディリアスは心が壊れそうになるが踏みとどまる。本当は壊れてしまいそうだった。何かにこのやるせない思いをぶつけたかった。でも、一番辛いのは当人であるユティシアだ。自分はしっかりしないといけない。
「それでも、それでも俺はユティを愛している。何か…方法はあるはずだ。俺は諦めないし、もし駄目でも俺はユティを見捨てない」
たとえ二人の間に壁があったとしても、お互いの気持ちは変わらない。自分がユティシアを愛する気持ちは絶対に変化することはない。
「陛下…ありがとうございます」
「俺たちは夫婦だろう?これからは、隠し事はするな」
「はい…」
ユティシアはディリアスに抱きついた。その顔は、少し穏やかになっていた。
ユティシアの魔力を封じる方法については、今後探すことにした。
妃は、娶る必要はない。
ディリアスの金の瞳に映るのは、たった一人の愛しい存在だけだから。
この問題は解決するんでしょうかねー?
とりあえず、次から新しい話に入ります。