陛下のお見合い騒動5
ディリアスはついに視察から帰ってきて、城でユティシアの出迎えを期待していた。
しかし、ユティシアは出迎えてくれなかった。
宰相のローウェが城の入り口に、にこやかな顔で現れた。
「ローウェ、ユティシアはどうしている?」
「部屋に篭ってずっと何かの作業をしていますよ。何をなさっているかまでは知りませんが、陛下が出発なさってからとても充実した日々を送っているようです」
正直、気に入らなかった。
ユティシアは自分を待っていなかったのだ。しかも、寂しがるどころか、充実した生活を送っているだと?
悲しみ、というより腹立たしさが湧き上がってきて、ディリアスはユティシアの部屋に向かった。
ユティシアは、部屋に篭ってお見合いの段取りの確認をしていた。
…計画は完成したといっても、それをきちんとこなせなければならない。
ユティシアは計画表を片手に机に座っていると…
「ユティシア」
聞き慣れた声が耳に響く。それは、久しぶりに聞く声。
「陛下、帰ってこられたのですね」
ユティシアはそう言ってディリアスのもとに駆けていった。
「お帰りなさい、陛下」
ぎゅっと抱きつきながら顔を上げて上目遣いに見上げてくるユティシアを見ると許したくなるのだが、そういうわけにはいかない。
「ユティシアにぜひ、出迎えて欲しかったんだがな。正直、俺は寂しかったぞ?」
ディリアスもユティシアを抱きしめ返しながら、言った。
「それは、すいません。でも、陛下のためです」
「俺のため?」
「はい、陛下のために私がとある計画を立てたのです」
「そうか、それは嬉しいな。…ちなみに、どんな計画だ?」
「それは秘密です」
ユティシアは、ふふ、と笑う。
「明日になったら分かりますよ。楽しみにしてて下さいね」
その夜、ユティシアはディリアスと共に眠ることをせず、お見合いのための準備に没頭した。
翌朝、ユティシアは顔を洗って気合を入れた。
…多少寝不足だが、今日のためなら仕方がない。
なぜなら今日は、お見合いの日だからだ。
陛下の妃獲得のため、絶対に成功させようと心に誓うユティシアだった。
長らくお待たせしました。