陛下のお見合い騒動1
「ユティ、以前子を作るのは無理だと言ったよな?」
「はい。そうです」
「どうしても…駄目か?」
「今のところ、それはできません」
「そうか…」
ディリアスは悲しそうな顔をする。
「ユティは…俺のこと好きか?」
「はい、もちろんお慕いしております」
ディリアスの事は、好きだ。傍にいたいと思うし、誰よりも特別な存在だ。
「それは、家族としてか?…それとも、国王としてか?」
「どちらも、です」
先ほどからディリアスが何を問おうとしているか考えるが、分からない。彼の望む答えが、分からない。
「では、恋愛対象としては?一人の男としては、どうだ?」
恋愛対象…そんなこと、考えたことがなかった。だって、彼は家族で、国王で、大切な人。それ以外、分からない。他に、何があるというのか。
困った顔をするユティシアに、ディリアスは苦笑する。
「分かっている。ユティシアがまだ俺にそういう想いを抱いてくれていないことは。…でも、考えてみてくれないか?俺を男として、見てほしいんだ」
「陛下…」
「今日は、もう寝ろ」
そう言ってディリアスはユティシアを抱きしめて、寝台に横になった。
ユティシアは昨夜の会話を思い出していた。
恋愛…なぜ、彼がそんなことを口にしたのか。子どもについて言ったのか?
「王妃様。何かお悩み~?」
ゼイルがのんきに質問してくる。
「実は…」
ユティシアは昨夜交わした会話について語った。
「おーひ様は、子ども欲しくないの?」
「それは…欲しいですけど」
「へーかはね、愛してるって言ってほしいんだよ」
ゼイルは教えてくれた。
人は皆、愛する人との子を望む。だから、ユティシアの意志を確認しておきたいのだと。好きでもない者と子を作れば、愛情を注げない可能性だってある。
「そうですか…」
ユティシアは納得がいったようだ。
「じゃ、頑張って~」
「はい!」
ユティシアは満面の笑みで頷いた。
「陛下…あの、お話があります」
ユティシアは寝台に座るディリアスに話しかけた。
ユティシアはディリアスと一緒の寝室で眠るようになっていた。ディリアスが毎晩ユティシアの部屋を訪れるため、もう諦めた。
「何だ?」
「側妃を、迎えて欲しいのです。私は、子どもを作ることは出来ませんから」
「ユティシアは、嫌ではないのか?」
「へ?」
「俺の心が、その女に向いてもいいのか?ユティシアへの愛情が、薄れてもいいのか?」
「それでも…私は、陛下のためなら…」
このぬくもりを失うのは、怖い。苦しんで、悩んで、やっと手にしたもの。
それが離れていくと思うと、震えが止まらなくなる。いつまでも縋り付いていたい気持ちになる。
でも、自分が決心しないとこの国の世継ぎはいないままだ。
「俺は、お前が欲しいんだ。他の女などに興味はない」
優しく口付けられる。ディリアスの口付けはいつも優しい。
ユティシアはディリアスの口付けに身を委ねた。
「俺を、意識していないのは分かっている。…でも、いつか許してくれるまで待っている」
…ん?許してくれるまで…と言った?
まさか…………
ユティシアはようやく自分が思い違いをしていたことに気付いた。
思い違いが本当であるとすると…
ユティシアは嫌な予感を拭いきれない。
…これは、何としてでも側妃を迎えてもらわねば!
ユティシアは一人、決心するのだった。
この作品、R15ついてなかったですね~。
いままで、それっぽいの無かったかな?
自分の記憶に自信が無いです…
もし、問題あったらご指摘願います。