新しい魔法師長5
最近、ユティシアと共に過ごす時間が減ってしまった。それもこれもアルがユティシアの指導を望んだせいだ。
「どうしたのですか、陛下?」
ユティシアがディリアスの様子がいつもと違うことに気付き、声をかける。
ユティシアは周りの者によく気を配ることができる。ディリアスの気持ちもよく察してくれて、声をかけてくれる。
…だが、ディリアスが本当に察して欲しいことには鈍感なのである。
ある日の夜のこと。
ユティシアがディリアスの寝室を訪れた。
「陛下が眠るまで、一緒にいても…?」
ディリアスはその言葉に驚いたが、一緒にいたいと望んでくれたことが嬉しくて、つい抱きしめてしまう。
「いきなり、どうしたんだ?」
ユティシアは、ディリアスの腕の中で俯いて顔を赤くしている。
…これを言うのは、少し恥ずかしかった。子どもでもあるまいし、とも思うのだが…
「その…この頃、二人でいる時間が減ったと思ったので少し、寂しくて」
「ああ…俺もだ」
ディリアスの言葉に驚く。そのままユティシアは強く抱きしめられた。
ディリアスは少し困ってしまう。
…よりにもよってなぜ夜に会うことを選んだのか。少しは自分を男として意識して欲しいものだ。
ユティシアに問うと…
「ローウェ殿とゼイル殿に相談したら、夜ならお暇でしょう…と」
…あの二人、絶対、狙って言ったのだろうな。
彼らが自分を助けてくれているのは分かる。ユティシアを意識させようと色々根回ししている。
「ご迷惑だったでしょうか…?」
「いや、そんなことはない。一緒にいられて嬉しい」
ディリアスはユティシアの唇に、自分の唇を重ねた。
「今日は一緒に寝るか?」
「いいのですか?でも…私、前のように暴走したら…」
それは、お披露目の夜に寝ぼけたまま暗殺者を退治した時のことだろう。
「大丈夫だから、寝よう」
ディリアスは以前と同じようにユティシアを抱き上げ、寝台へ連れて行った。
寝台へユティシアを下ろそうとすると、ユティシアは首に手を回したまま離れない。
「陛下…私は、自分の力が怖いです。誰かを傷つけたら…と思うと、いつも恐ろしくて…でも」
言葉を切ったユティシアは、身体を離してディリアスと視線を合わせてにっこり微笑む。
「陛下は、私の力を受け入れてくれました。嬉しかったです」
今まで、自分の力の一端を見ただけでも離れて行くものが多かった。
ユティシアはただ、離れて行くその背を見つめているしかなかった。
―――だが、ただ一人ユティシアに手を差し伸べてくれた者がいた。
もう、この温かな存在を離さない。…いや、離すことが出来ない。
「当たり前だ。ユティシアは、俺の妻だからな」
ディリアスはユティシアを抱きしめ、口付けを落とした。
「…ところで、夜に来たということは、襲ってもいいんだな?」
「……………………え?」
一瞬、思考が止まる。
…陛下はこんな人だっただろうか?
いつも自分に愛情を注いでくれて、優しくて、頼りがいのある、旦那様。口付けは頻繁にされるが、そんなことを口にするような人だったのか?
…ディリアスが、並外れた美貌の持ち主であることを久しぶりに思い出した。
色っぽい表情を浮かべる彼は、さらにその魅力が引き立てられているように感じる。
「えと…陛下?」
ユティシアは思わず後ずさった。
ディリアスはユティシアの手を捕まえて抱きしめる。
必死に身を離そうとするユティシアは、ディリアスの肩が震えているのに気付いた。
…笑っている。
「…陛下、からかいましたね?」
「…ユティシアは可愛いな。もう寝るぞ」
ディリアスは寝台に横になってユティシアを手招きした。
先ほどまで膨れっ面をしていたユティシアは頬を緩める。
掛け布に潜ると、ぴったりとディリアスに身体をくっつけて寄り添った。
「最近、へーかとおーひ様、一緒に寝てるらしいね」
「仲が良いようで何よりです」
「アルが来て、おーひ様が離れていたようでへーかが怒ってたけどな」
「俺のせいか!?」
「うん。正直、邪魔だろうな、お前のこと」
「まあ、逆に一緒にいる時間が増えたようですが」
ローウェとゼイルは嬉しそうである。
「結局俺は二人の仲を深めるのに役に立った訳か」
アルが後日そう漏らした。
ごめんなさいいっっ
ストーリーがまったく進んでないです。
というかこの話、正直必要なかったです。