新しい魔法師長2
ユティシアとアルは訓練所に向かった。
もちろん、愛しい妻が心配でならないディリアスと、面白がっているローウェとゼイルも一緒だが。
さらに、ここで働いている魔法師の方々も集まっている。新しい魔法師長の実力が気になるらしい。
「さて、さっそく実戦といきましょうか」
ユティシアはそう言うと準備を始める。軽い準備体操。
明らかに魔法を使う準備ではないが…誰もなにも言わなかった。
「おい、杖は使わないのか?」
「いいです。私はもともと杖を使いませんので」
ゼイルのように騎士は別だが、魔法師なら杖を使うのが当たり前だ。
杖は魔法の威力を増幅させたり、魔法を補助する役割を持っている。杖によって魔法師の実力が大きく左右される場合もある。それほど大事なものである。
ユティシアは魔法師だが剣も同時に使用していたので、杖など使ったことがなかった。
「なめてんのか?」
アルはむっとした様子でユティシアに問う。
「いいえ…私は杖の代わりに剣を使用していましたが、魔法の試合で使うわけにはいかないでしょう?」
それでもアルは納得していないようだった。
「…さて、準備はいいですか?」
「おう」
アルは杖を持って構える。
「では、そちらからどうぞ」
ユティシアが挑発するように言う。
本人の性格をよく知るものなら彼女が人を挑発するような性格でないことはわかっている。
…が、アルはそうは思わなかったようだ。先ほどのこともあり、ついに怒った。
「じゃあ、遠慮なくいくぜ」
「…て、おい!いきなり上級魔術二つもぶっ飛ばしてんじゃねえか!」
ゼイルが叫ぶ。
ユティシアは驚いた様子もなく…
「すごいですね。さすが魔術師長なだけあります」
「だろ?王妃様はこれをどうするつもりだ?」
アルはそう言うと炎の上級魔法を2つ放つ。
魔法は空中で混ざり、大きな炎となってユティシアに襲いかかった。
ユティシアは、くるりと身を翻し、逃げた。
「そんなんで避けられるかよ!?」
魔法は上級魔法なだけあってその攻撃範囲はかなり広い。普通、これを避けることは出来ないだろう。
アルはユティシアが魔法を見て怖気づいて逃げたのかと思い、笑みを浮かべている。
「発動」
ユティシアは叫ぶと、ありえない速さで走り出した。―――身体強化の魔法だ。
魔法があたる直前、高く跳躍する。
その直後、ユティシアが先ほどまでいた場所に炎が叩きつけられ、地面に煙があがる。
「この魔法は避けても追いかけてくるぜ!」
アルは再び魔法をユティシアに向けようとした。
―――――が。
「なにっ!?」
アルが驚いて声を上げた。
炎は、消えていた。
ユティシアは炎が地面に当たった瞬間を狙い、水の魔法で炎を包み込んで弱め、さらに地の魔法で炎を飲み込んだのだ。
「は、まだま、だ……っ」
自分の魔法が消えたことに驚いているうちに、いつのまにかユティシアが後ろにいてアルの手をひねり上げていた。
「降参ですね?アルどの。近距離では、魔法師は無力です」
「くっそ…」
こうして、アルは呆気なく負けた。
今回は長くなってしまいました。随分短くしたんですが…
戦闘を省略したせいで、内容は最悪なことになっています。
今回の話はノリで入れてみたので色々事故が起きていますが、駄目な作者を放っておいてあげて下さい。