表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/52

王妃を狙う者11

ディリアスは貴族の摘発によって、仕事量が膨大に増えていた。もちろん宰相であるローウェも忙しくしている。


「大変だなあ…」

「ですねー」

「ねー」

ゼイルとユティシアとその膝の上にいるフィーナは、ソファに座ってその仕事風景を見守っている。

…ちなみにゼイルの膝の上にはアルヴィンが、フィーナの膝の上には、シルフィがのっかっている。


ユティシアは久しぶりにフィーナと過ごせて嬉しいようだ。フィーナも、ご機嫌でユティシアの膝の上にいる。


「あの、陛下。私にもできることがあればお手伝いしますよ?簡単なことならできますし…」

「本当か?では、こちらの書類を任せる」

ユティシアは書類の束を受け取った。


「お前も手伝え」

そう言って不機嫌そうなディリアスがゼイルに書類を投げてよこす。

「へーい」

ゼイルは慣れているのか、すぐに書類整理を始めた。


ちなみに、ユティシアの書類の処理は驚くほど速かった。一応、ディリアスが確認したが不備はなく、文字も綺麗である。

これからは、政務の方を少しずつ手伝わせていっても良さそうだ。


「どこで、学んだんだ…?」


もう今さら何を聞いても驚かないが、一応。一応、聞いておく。


「私、一応王位継承権持っていたのですけれど。教育係がいなくなる前にはそれなりに勉強していましたよ?あとは…騎士団に、王族の方がいて…仕事を両立させるのが大変そうで、手伝ってあげていたのです。そのせいで、少しできるのです」


騎士団への入団に身分が問われることはない。ただ、すべての人に平等であるという騎士団の理念を守るのは、王族という立場ではかなり難しい。国の意志に従う時に騎士団が足枷になったり、逆の場合もありうる。

ユティシアはそれを両立させている彼の姿を初めて見た時、感嘆してしまった。思わず自分から手伝うと言ってしまっていたのだ。


ディリアスは少しだけ、彼女の騎士団での生活に感謝していた。不本意だがそこでの経験がなければユティシアは、今よりできることが少なかっただろう。まあ、何もできなくても自分は間違いなくユティシアを愛していただろうが。自分がユティシアに望むのは、王妃としての役割ではない。彼女の真っ直ぐで綺麗な心だから。


「また、有能ぶりを発揮しましたね、王妃様」

「あと、望むとすれば子どもだけかな~?」

ゼイルはにやにやしながらディリアスを見る。


「おかあさま、フィーナもおとうとかいもうとがほしい!」

「ごめんね、フィーナ。無理なの」

フィーナの期待にあふれる目を見て心苦しく思いながらもユティシアは答える。


いつの間にかユティシアはフィーナにくだけた言葉で喋るようになっていた。その事実に、ディリアスは軽い嫉妬を覚える。


…ではなくて。


「無理、か…」

いつの間にかディリアスはユティシアの目の前に立っていた。

口角をつり上げ、恐ろしい笑みを浮かべている。


「それはどういう意味だ、ユティシア?」

「言葉の通り、出来ません」

「だが、ユティは…王妃だろう?」


…子をなすのも、王妃の役目の一つである。ディスタールには王子がいない。シャラの活躍によって女性の地位はかなり向上しているので、最悪フィーナを女王とすることは可能であるが、それでも王子を望む声は多くある。


「それとこれとはまったくの別問題です」

ユティシアは笑顔で言い切った。


慈悲も何もなくばっさり切り捨てられたディリアスは明らかに落ち込んでいた。


「うっわー、かわいそー。見た、今の顔?」

「ですね。女性に対して百戦錬磨の陛下も王妃様には敵わないようで」




ユティシアの発言の本当の意味を知るのは後のことである。



ついに出ました、ユティシアさんの無理発言。

抱きしられめても口付けられても、顔を赤らめもしないユティシアさんです。


…ディリアスさんがいい加減不憫になってきました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ