王妃を狙う者10
後日、ディリアスとローウェとゼイルの3人はユティシアから事件の話を詳しく聞いていた。
…内容をすべて聞いて、呆れた。毒にやられたふりをして、自ら敵の邸に行くなど…
「さすが、王妃様ですね」
「そうだな。敵を壊滅させるなんて、どんだけ強いの~」
ローウェとゼイルが賞賛の言葉を贈る。
「そういえば、陛下」
「何だ?」
ユティシアの告白を聞いて机に突っ伏していたディリアスが、顔を上げた。
「従者の男ですが…他国の間者のようですね。この国を内側から崩そうとしているのでは…。今、うちを狙っているのは、隣の――と、軍事力をつけてきた――でしょうか…あ、でも……」
どんどん喋る彼女の口からは、国家機密とも言えるような重大なものもたくさんあった。
「何で、そんなこと知ってるんだ」
「私、騎士団にいたとき私的に諜報活動していましたからね」
今、さらっととんでもないことを口にしたような…。
「あ、もちろんこの国のことも知っていますよ。最近国境付近でどこぞの貴族が革命軍募っているとか、――の貴族が薬の取引しているとか、――の貴族は領地で脱税してますし………」
ディリアスは国内の現状を聞いて唖然とする。
…愚かな貴族どもは父の時代に一掃したはずなのに、どうしてこんなことがまた起きているのだ。
「ユティ。知っていることを、すべて言え」
「でも…」
「いいから、言え」
ディリアスが今までになく怖い顔をしていた。
ローウェは驚いていた。
彼女は政治の闇の部分を知らないわけではなかった。詳しすぎるくらいに、知っていた。闇を知りながらも光にあふれる彼女は、王を、国を、変えていけるのではないかと思った。彼女はきっと強い。その美しく、凛とした瞳は、この国を照らすの存在となり得るのだろうか…
その後、国王の手によって、いっせいに貴族の摘発が行われたらしい。これは、彼の父親の行った粛清とともに、後の世に名を残すほどのものとなった。