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56話 直談判しにいこう、そうしよう。

プレゼントとして渡された手袋。


「手作り!?」


これにはつい少女漫画脳が働いて、私はうっかり口を挟んでしまうが、さすがに首は横に振られた。


「無理よ、それは。でも、それなりに考えて選んだわ。レイナルトの手はいつも冷えているから」

「……すごく助かるよ。ちょうど、最近も冷えてしょうがなかったんだ」


リディアからそれを受け取ると、レイナルトはさっそくそれをはめて、すぐに「温かいな」と言う。


「火の魔石を使っているそうよ。つけているだけで発熱するわ」

「……これこそ高いんじゃないのかい」

「そこはお互い様でしょう。王子様ともなれば、これくらいあげないと満足しないでしょう」

「おいおい、俺を強欲の王子に仕立て上げないでくれよ」


最高のプレゼント交換会になっていた。

むしろ年越しの日に渡すのではなくて、今のほうがよかったんじゃないかと言うくらい、とてもいい雰囲気だ。


私も二人にプレゼントを持ってきていたけれど、これはもう渡さなくてもいいかもしれない。


むしろ今の流れに水を差してしまいかねない。


だから私はスカートの奥深くにそれを押し込むのだけれど、


「アイも、なにか渡すものがあるのでしょう?」


リディアにこう言われて、どきりとした。

さすがはママだ。どうやら、気づかれていたらしい。


二人が立派なプレゼントを贈り合ったあとだ。

少し出しづらかったけれど、私はポケットからそれを引っ張り出してくる。


そうして小さな手を開いて二人に見せたのは、星型のキーホルダーだ。


二つ重ね合わせれば星ができるようなもので、かつて前世で見たことのあるカップルグッズを参考にして、持ち手の紐部分はメイドさんたちに手伝ってもらった。


ただし粘土に色を塗って作ったものだし、すごく出来のいいものじゃない。


もしかしたら意図が伝わらないかもしれない。


「パパとママ、一つずつ持ってね――」


だから、こう説明しようとしていたら、まずリディアが手に取り、そのあとにレイナルトが残る一方を手にする。


「すごくいい! とっても嬉しいわ」

「うん。さっそく今日からカバンにつけようかな」

「私はそうね。髪飾りにしてもいいかもしれないわ。そのほうがいつでも身に着けられるもの」

「……じゃあ俺もそうしようかな。最近少し髪が伸びてきたんだ」


また妙な張り合いが始まっていた。それに、髪留めじゃないし。


「それはちょっと変」


だから私はこう言うのだけれど、二人は関係ないとばかりにすでに髪に巻き始めている。


「どう?」


と言うリディアはツーサイドアップの髪のリボンに、私の渡したキーホルダーを結び、私に見せる。


レイナルトも長くなっていたおくれ毛を束ねて、同じように私のほうに尋ねる。


「……変かも」


出てきた感想は結局、これくらいだ。


素材がいいから大抵のものは料理してしまえる美男美女二人にかかっても、さすがにキーホルダーを髪飾りにはできないらしい。


ともかくも、こうして無事にプレゼント交換会は完了する。



が、これで一件落着かといえば、そんなことはない。

根本の問題は片付ていないからだ。


結局、クローヴィス王がレイナルトに遠征をさせているという状況はそのままであって、これをどうにかしなければ、また次に会うことだって難しい。


「で、これからどうするの」


それは当然二人も分かっていて、リディアが問う。

それにレイナルトは、「もう決まったよ」と会心の笑みを見せた。


その笑顔は、とても晴れやかなものに映る。


「明日にでもここを抜け出して、父に直談判しに行くよ」


そして彼が切り出したのは、あっさりと出てくるにしては、とんでもない案だ。

一見すると簡単そうだけれど、相手は国王であり最高権力者。


簡単に組み伏せられるような相手ではない。


ただ、その心はもう固まっているようで、彼はカイルさんにも言う。


「カイル。すまないが、俺がいないことをうまく伝えておいてくれるかい? 後からちゃんと自分で説明しに行く」

「……まったくあなたは。私は王の命であなたについているのですよ。そのようなことをすれば、私がどうなるか」

「そこも纏めてなんとかするさ。首を切られるようなら、俺が雇おう。証書を書いても構わないよ」


カイルさんは深くため息をつく。


「それで手を打ちましょう」


そして最終的には、こう、認めてくれた。

もう完全に、私たちの味方だね。


「二人とも、ついてきてくれるかい?」


レイナルトが聞くのに、私はすぐに首を縦に振る。

リディアには立場があるから少しは迷ってもおかしくなかったのだけど、彼女も首を縦に振ってくれた。




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