外科の新人の歩み3 高揚する気持ち
外科の新人は朝早くから、故郷の看護師に連絡した。
看護師「久しぶりね〜。どうしたの?」
外科の新人「あの。教えて欲しいのですが。」
看護師「何?」
外科の新人「あのね、私。昨日、生まれて初めて男の人を好きになって。。今日仕事終わったらデートなの。ねえ、どうしたらいいのかな?」
看護師「そんなの、なるようにしかならないわよ。そうね。。仕事終わったら、下着は新品に変えたほうがいいかもね。万が一に備えて。ねえ、どんな人?」
外科の新人「はい。ケーキ屋さんでいろんな料理上手で。。真面目そうで。。なんか運命の人みたいな感じがしたの。あの、彼は看護師が憧れだって。。」
看護師「なるほど。。だったらナース服で行くのがベストかも。いけない!もう仕事行かないと。いい?相手に合わせて自分の気持ちを素直に伝えなさい。あなたの人あたりは独特の良さがあるから、いつも通りなら大丈夫よ。いい報告待ってるからね。」
先輩のアドバイスに従い、急いで未開封の下着をカバンに入れ、病院の研修に向かった。今日はどこかうわの空ではあったが、命に関わる仕事のため気持ちを抑えて取り組んだ。
昼休み、仲のいい同僚に相談する。
外科の新人「あのね。今日彼とデートで。。なんかいい理由ないかな。門限が。。」
同僚「えっ?あなたが彼氏!全く気配なかったのに。。分かった。私が一緒に出かけるということにしましょうか。研修はみんな26日だけ一律休みだから、昨日は我慢して食事だけにした。だから今日は、朝まで彼と過ごすんだ〜。いっぱい愛してもらうんだ!だから、それは私にとっても非常に都合がいいわ。ただね、私は彼と泊まるから朝帰りよ。あなた時間合わせられるのかな?」
外科の新人「努力してみるわ。時々連絡しあいましょう。」
同僚「上手くいくといいわね。でも、あなた。。ちょっと緊張し過ぎよ。」
外科の新人「仕方ないでしょう!人生で初めてのデートなのよ?」
同僚「あなたがナンパ受けるなんて。。よほどいい男なのね。」
外科の新人「私から誘ったの!すごく真面目でいい人なのよ。」
同僚「そう。キスくらい出来るといいわね。しっかりアピールしなさいよ!真面目な人ならあなたからいかないと。」
外科の新人「あの。。昨日。。私からキスした。ファーストキスだったの。」
同僚「えーっ!。。あなた大胆ね。浮いた話も聞かなかったから、昨日知り合ったってことかな?私より大胆じゃないの!あなた、ものすごいわね。。」
外科の新人「私。。生きるのに精一杯だった。冬休みは授業無い代わりに実習長いし、プレッシャー多いから自分へのご褒美のつもりでケーキ買ったら。出会っちゃった。。運命の人だと思うの。だから、どうしても次に繋げないと。私、必死に考えて。。キスするしか思い付かなかった。ねえねえ。憧れの先輩のアドバイスで未使用の下着だけ持ってきたんだけど。。どうしたらいいかな?」
同僚「ん?つまり。。昨日のケーキ。。まあいいわ。ちょっと、あなた。。捧げる気?」
外科の新人「分からない。とにかく気持ちがもっとって。。」
同僚「ん~~。だったら下着無しで行けば。どうせ脱ぐのでしょう?」
外科の新人「そ、そんなの無理無理。」
同僚「まあ、あなたの思う通りにしなさいよ。他人の言うことに従って失敗したら一番後悔するわ。あっ!そろそろ入院患者さんの見回りの時間ね。年末と正月明けの研修終わったら試験だけね。最後の研修頑張るか!」
外科の新人は看護師に同行し、体温の確認や薬の服用の手伝いをしながら1日の仕事は終わっていった。
更衣室で新しい下着を眺めながら悩む。下着無しがいいのかな。。新しい下着かな。。どうしたら。。
んーー。下着無しなんて恋愛経験の無い人間のすることじゃない。それに冬だから風邪引いちゃうかもしれない。ここは尊敬する先輩の意見に従おう。
いや、待てよ。使用済み下着のままのほうがいいのかな。。
いやいや。恥ずかし過ぎる!
そうだ!この新しい下着なら胸が強調出来るって書いてある。これよね!
いや、待てよ。。もし裸になったら胸がバレる。。
もー。私、どうしたらいいの!ああ、どんどん時間が。。
散々悩んだ挙げ句、シャワーを浴び、新しい下着を身に着け、しっかり消毒したナース服を再び着るとコートを羽織った。
看護師「あら、あなた。まだいたの?私が怒られるから早く帰ってくれないかな。」
外科の新人「あっ。先輩お疲れ様です。」
看護師「着替えしないで帰るなんて珍しいわね。あなた明日休みなんでしょう?ただ帰るだけなんて。。世間は今日までクリスマスよ。気分転換に駅前のイルミネーションでも見てきたら?たまには息抜きしないと。あなたは看護師としてはまだまだだけど、一生懸命やっているのは分かる。あなたって、すごく患者さんや仲間、先生にも評判いいのよね。いい部分を残して看護師の実力つけたら化けるんじゃないかとは思うわ。ああ、旦那に餌やらないといけないから帰るわ。お疲れ様。」
外科の新人は、頭を下げて見送ると、ケーキ屋さんに向かった。
結果的に昨日より早くケーキ屋さんの本来の営業時間内に到着した。
店長「本当に来てくれたんだ。。来ると信じていたけどね。さて、店を閉めるか!」
外科の新人「えっ!営業時間。。まだ1時間くらい。。」
店長「楽しい時間を邪魔されたくないからね。」
緊張してドキドキしながら、1日中ずいぶんいろいろ考えた店長がシャッターを閉め閉店にした。
外科の新人「あのー。大丈夫ですか?赤字にならないですか?」
店長「おかげさまで、結構な黒字でして。今年ついに貸店舗を買い取りましたから。」
外科の新人「そうなんだ。。まあ、朝から晩まで働いたら当たり前か。」
店長「当たり前ではない厳しい世界ですよ。へー。あなた。。やっぱり。お金で全く目が輝かなかったね。」
外科の新人「ん?私のお金じゃないし。。貧乏な家庭だったけど、こちらに来てからは自分のお金で全てやることしか考えてなかったからな。。最低限あれば十分よ。お金。。そうね、確かに興味ないな。」
店長「なんか。。本当に自分には理想の女性だな。出会いって不思議だな。」
外科の新人「それは私も感じたんですよ〜。私、綺麗じゃないから。。」
店長「私には綺麗に見えますけどね。心が綺麗だから余計にね。。さて、どうしましょうか。ああ、そう言えば今日は門限は?」
外科の新人「同僚と出かけると報告したから大丈夫なの。門限は。。朝まで帰れないのが門限ね。」
店長「えっ?それは門限というの?時間まで帰れない門限って。。」
お互い何かを期待しつつ、とにかく相手を楽しませようと考えるのだった。
私の別の小説「たいせつな ぬいぐるみ」
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に登場する「外科の新人」を主役に据えたストーリーです。