外科の新人の歩み29 休み明け
不安を抱く婦長は外科の新人に話しかける。
婦長「あのー。」
外科の新人「あっ。見守り巡回ですね。」
婦長「いや、そのね。。あなた。気づいてたのよね。」
外科の新人「何の話か全く分からないです。」
婦長「もー。分かってるでしょう?金曜日の夜の私のことよ。」
外科の新人「もー。は、私のセリフです。黙っていたら知らないフリするのに!」
婦長「いや、あなたが敵に回って言いふらすとか全く思ってないけど。。私、絶対に悟られない自信はあったのに。。」
外科の新人「ケーキのあ~んの反応と、定食屋さんの理事長が私を指定した瞬間にジェラシー感じた。それが夜頑張るでつながっちゃった。けど、理事長にアピールして気づかせないって。。かなりの高等テクニックですよ。2人が頑張ると言わなかったら。。たぶん。でもね、信頼してるのは分かるけど、ペラペラしゃべり過ぎよ!」
婦長「は〜。参ったな~。あなたの良さを理解して欲しくて。つい。。ごめんなさい。」
外科の新人「あのさー。あの副理事長の話って。。私情入ってないのかな?」
婦長「さあね。私はそんな仕事嫌だから。。ねえ、ペラペラ話して申し訳ないけど。。秘密に。。」
外科の新人「大丈夫!私、尊敬するお二人だから応援してます。ねえ、先輩。いつもより燃えなかった?」
婦長「確かに。。いつもと違って何回も求めてしまって。。もー。もの凄かったのよ。」
外科の新人「確かに凄く満たされた顔してますもんね。しかし、やっぱりそうか!なるほど。。」
婦長「何よ。」
外科の新人「私にバレてるの気づくように、応援してますって言ったの。やっぱり。。秘密だから、バレたから更に燃えちゃったんだ。。私ってナイスアシストねー。婦長。赤ちゃん気をつけてね。誰も幸せにならない。婦長が一番傷つくから。」
婦長「全く。参ったな~。一人前どころじゃない。はあ。。先輩。一生ついていきます。」
外科の新人「やめて下さいよ〜。とりあえず3人の秘密ね。2人が悩んだら相談出来るって貴重じゃないかな?」
婦長「はい。先輩。よろしくお願いします!」
外科の新人「もー。知ったところで私は何も変わらないから。」
午前の診察が終わると午後は入院患者の対応だ。各病室を回って戻る。
外科の新人「あれ?2人だけなの!」
看護師「ああ。月曜日はみんな手術に入ることが多い。私は受け付け終わったから、片付けと明日の準備さ。」
救急車の音が聞こえた。部長が走ってくる。
部長「ケガだ。外科にくるそうだ。」
直ちに処置室に運ばれる。
部長「ヤバいな。すぐに手術しないと。。」
看護師「人が足りなさ過ぎます!無理だと思います。」
部長「入院患者に何かあるとマズい。君は残れ。新人と。。2人。受け付けコンビ。手術に入ってくれ。」
看護師「いや、しかし。。いくらなんでも彼女には負担が多すぎます。私が。。」
部長「入院患者に緊急事態が起きた時を考えると、これが一番だ。足りないなら、新人だけで手術するが。」
看護師「分かりました。私が待機しますから。先生に従います。」
外科の新人「今から緊急手術なので、全身麻酔の準備をお願いします。大至急です。10分後には手術します。」
部長「おい運ぶぞ。」
外科の新人「はい。。あっ先輩。血液型を調べて分かったら連絡下さい。あと、輸血用血液の手配をお願いします。私は、手術室に向かいます。」
看護師「わ、分かったわ。」
外科の新人が着替えるうちに血液型はO型と連絡を受け、血液が届けられた。
部長「O型だ。輸血用血液を頼む。」
外科の新人「標準のO型で間違いないですね?」
部長「えっ。もう届いているのか!血液型は今確認したから大丈夫だ。」
素早く輸血の準備をすると、必要と思われる器具を次々と運ぶ。
外科の新人「先輩。汗とバイタルチェックだけお任せします。」
麻酔の用意が終わり、直ちに全身麻酔をかけると、苦しんでいた患者が眠った。
外科の新人は全身を見ながら裸にする。
先輩看護師「血圧82の59。心拍88。」
部長「マズいな。どこまで刺さっているのか。。よし、切開する。」
外科の新人「部長。メスを。」
部長「ああ。すまない。」
外科の新人「あっ。大腸です。」
部長「横から見てどうだ?」
外科の新人「大腸だけです。腎臓や膀胱にはダメージありません。すごい出血量。大腸の中身も。確実に取り除かないと。内臓の処理は。。」
外科の新人「もしもし。内科部長。すぐに外科の第4手術室に。緊急です。」
部長「お前。内科部長と。。」
外科部長「はい。仲いいです。」
外科の新人は吸引装置を用意する。
外科の新人「部長用意出来ました。」
部長「よし、まず吸い出す。」
先輩看護師「62の46。心拍61。かなりマズいです。」
部長「んー。輸血を。。」
外科の新人「待って下さい。大腸の中身がこれ以上出たらマズいです。もう少しだけ。」
部長「いや、しかし。」
内科部長「待たせた。。いや、これは。。」
外科部長「抜いていいか。血圧がもう。。」
内科部長「んー。どうする。」
外科の新人「それなら、抜いて。。まず大腸の中身を徹底的に吸い出しましょう。そうしたら、出血だけ気にしたらよくなります。」
内科部長「確かにそれがいいな。」
外科の新人「それでは輸血を開始してもよろしいですか?」
外科部長「はじめてくれ。」
外科の新人はコックをひねると、直ちに輸血用血液を運び、吸い込む装置をもう1台持ってくる。
外科の新人「先生。腸の中身は私がやります。出血だけになったら、内科部長は腸を閉じる作業をお願いします。外科部長は周辺の血液などをお願いしますね。ライト当てます。」
外科部長「分かった。いいな。抜くぞ!」
内科部長「大丈夫です。」
外科の新人「用意出来てます。」
外科部長が突き刺さっているものを引き抜くと、外科の新人が腸の中にノズルを入れ、意地でも中身は流出させない。
内科部長は周辺を観察する。
内科部長「大腸の貫通のみだな。外科部長。もう腸からは出てこない。腸の真下を先に頼む。」
外科の新人「あっ!先輩。動かさないで大丈夫ですから、ちょっとノズルを持ってて下さい。」
先輩看護師「え、ええ。分かった。」
外科部長「バイタルチェックをおろそかにするな。」
外科の新人「すみません。65の43。心拍61。輸血用外科取り換えました。O型を確認しました。」
外科部長「直ちに輸血を開始!」
外科の新人は新しい輸血用血液を運び、ナースステーションに電話をする。
外科の新人「あっ婦長。手術終わったの!大至急、標準O型の血液を。。3袋お願い。第4手術室です。」
外科の新人は2人の汗を拭く。
外科の新人「血圧76の59。心拍は78。先輩、ノズル代わります。バイタルチェックに集中して下さい。はい。手離しても大丈夫です。内科部長。逆流リスク分だけ吸い出したら、ノズル抜きますので状況確認して下さい。」
内科部長「分かった。」
外科部長「もう血液だけだ。洗浄も完了した。」
外科の新人「ちょっと待って。もう少し奥まで。。はい。もういいと思う。内科部長抜きますよ。いいですね。抜きます!」
内科部長「あっ。かなり大きいな。んー。」
婦長「輸血の血液です。」
内科部長「えっ!いつの間に。。」
外科の新人「輸血3本目。標準O型間違いありません。」
外科部長「輸血を開始してくれ。」
外科の新人「はい。」
外科の新人は空雑巾で床を拭く。
婦長「待って。あなた医師と同じ動きもしてるから、あなたの汗を拭かないと。私があなたの汗を拭くわ。」
内科部長「大腸を5センチ切除し、繫ぐことにする。それが一番安全だ。」
外科の新人は走って戻る「内科部長。。。切除用。。ハサミ。。」
外科部長「腸を持て。絶対に離すなよ。私が反対側を持つ。」
内科部長「いまから切除します。」
外科の新人の側から切除すると外科の新人は片手で腸を持ちながらノズルで血液を吸い取る。
外科の新人「外科部長。大丈夫。私が吸い取るから切除した腸を取り出して下さい。」
切除された腸を外科部長がトレーに置く。
内科部長「よし、繫ぐぞ。」
外科の新人「待って下さい。血液を一旦全て吸い出しますから、最後に下側をしっかり確認して下さい。」
内科部長「分かった。。うん。これなら大丈夫だ。」
外科の新人「外科部長。私達も確認しましょう。」
外科部長「分かった。。問題ないだろう。」
外科の新人「私も同意です。内科部長。消毒しなくても大丈夫でしょうか?変な細菌とかの可能性が。。洗浄液は塩分と消毒入りも用意出来てますが。」
内科部長「点滴で対応出来るし。腸内に消毒液が入るリスクを考えると。。純水洗浄のみのほうがいい。では腸をつないで縫合する。いいと言うまで手を離すなよ。」
外科の新人「あれ?胆汁が。。胆汁が放出された気がします。」
婦長「おそらく間違いないです。」
内科部長「いかん!す、すぐにつなぐ。」
内科部長は素早く腸をつなぐと、血管を丁寧に繫ぐ。
内科部長「良し手を離しても大丈夫だ。あのー。」
外科の新人「保護テープなら右に。」
内科部長「ああ。ありがとう。」
外科部長「婦長。もう大丈夫だ。切除した腸の細菌検出を依頼してきてくれないか。」
婦長「分かりました。」
外科の新人「先輩。後は洗浄だけだからバイタルチェックも私がやりますので、明日の準備をお願いします。」
外科部長「ああ。それでいい。ありがとう。助かったよ。」
外科の新人「出血は大丈夫ですね。」
外科部長「では閉じる。」
外科の新人は次々と片付けに入る。吸い出し装置も戻す。
外科の新人「外科部長。輸血はどうしましょうか?少し低いですね。」
外科部長「内科部長。どう思う。これ以上の輸血は危険じゃないか?」
内科部長「判断迷うな。。若いから輸血のリスクを避けるほうがいいと思う。」
外科部長「そうだな。今は避けよう。」
外科の新人「安定していますね。ああ。外科部長。左足の中指骨折してると思う。」
外科部長「えっ!。。分かった。後で処置しよう。大丈夫だな。これで手術は終わりにする。内科部長。対応感謝します。外科の知識だけでは無理だった。」
内科部長「そうか?あなたが必要と言った看護師の判断のほうが私より的確だったぞ。あなたが育てたんだろう。医学的知識が看護師の領域を超えている。」
外科部長「大腸のことは教えていないぞ。ああ、手術終わった。すまないが患者さんを病室に頼む。」
内科部長「あなたの目はすごいな。こうなるのが分かっていたのか。。内科のスーパー新人が、私なんてあっという間に抜くって自信満々だった。今日意味が分かったよ。いいもの見たよ。では戻りますね。」
外科の新人「ありがとうございました。」
外科部長「しかし。。私より役に立ったな。」
外科の新人「そんな訳ないでしょう!私、身体閉じれませんよ。あっ。先輩。私が運びます。」
外科部長「いいから任せなさい。まだ話がある。」
外科の新人「はあ。」
外科部長「あのな。定食屋さん。次は私が払うから、また4人で。」
外科の新人「もー。手術の反省会じゃないの!。。そうね。皆様が一番忙しいから。合わせますよ。日にち決まったら予約しますから、教えて下さい。戻ってもよろしいでしょうか?」
外科部長「片付け。。は、終わるよな〜。普通じゃない。」
外科の新人「あーっ。輸血用血液が。。使えば良かったかな。」
外科部長「輸血のし過ぎは、それはそれで危険だ。使い道はあるさ。。ああ。済まないが外科第4手術室の輸血用血液を返却したい。ああ頼みますね。」
外科の新人「あの、どこに。。」
外科部長「回収してくれる。そのままでいい。戻ろう。」
外科の新人がナースステーションに戻ると、あまりの立ち回りに感動した先輩看護師が熱く語り、外科の新人の働きは看護師達に知れ渡っていた。
体裁が悪く、居心地が悪い外科の新人。
外科の新人「ちょっと病室巡回してきます。」
先輩看護師「そんなもの私らがやるさ。時間過ぎてる。帰りな。」
婦長「甘えなさい。」
外科の新人「はい。。お疲れ様でした。失礼します。」
何となく体裁悪そうな外科の新人だった。




