外科の新人の歩み22 特訓
外科の看護師としての仕事が始まった翌日から、部長が緊急の用事がある日を除き外科の新人の特訓が始まった。
部長「今日は、まずは注射だ。」
外科の新人「はい。では、血液取らせていただきます。アルコール消毒でかぶれとかは大丈夫ですか?」
部長「はい。問題ありません。」
部長「おーい!痛い痛い。ち、ちょっと抜け!」
部長「お前。ちゃんと血管見ろよ!全く血管から外れているじゃないか。」
外科の新人「見ましたよ。手で確認もしたし。」
部長「あのな、歳をとると血管も細くなる。手を出せ。。へー。すごい綺麗な手だな。。ああ、いかん。例えば、手をこうやって押すんだよ。心臓に戻るのを加速させたら血管が良く分かる。」
外科の新人「なるほど!」
部長「まあ、私は注射前には何回か深呼吸するんだよ。血管が分かりやすくなるから、外されないんだ。。ほら。どうだ?」
外科の新人「あーっ。本当だ!私、全く違うところに刺してた。ごめんなさい。」
部長「もう1回やってみろ。」
外科の新人「はい。」
部長「おお、いいじゃ。。痛い!。。おい!血管突き抜っるぞ!抜きなさい。」
外科の新人「す、すみません。」
部長「深さは感覚だ。血管入ったら軽くなる。もう一度力が要る場合は血管の奥の壁だ。あと、血管入ったと思ったら軽く血液を採取だ。血管入っていれば簡単に血液が入ってくる。これは。。もう左手は使えないな。右手でやってみろ。」
外科の新人「はい。。あっ。ここだ!注射しますね。少し痛いかも知れないです。」
外科の新人の感覚では、血管に入った。軽く引くと血液が採取出来た。
部長「おお。いいじゃないか。」
血管の新人が綿を当てて、押さえながら針を抜く。
部長「痛い!痛い!お前。。そんなに押さえて抜いたら痛いに決まっているだろう!軽く押さえて、抜いた瞬間に強くだ。しばらく押さえたら、綿を取る。。見てみろ。血は止まったか?」
外科の新人「少しまだ。」
部長「テープを刺したところに吸収材があたるように貼る。。そうだ。。おい。患者さんに言葉は。」
外科の新人「あ、はい。五分くらい押さえておいて下さいね。。では終わりましたので結果出るまでお待ち下さい。」
部長「おお、いいじゃないか。手が治ったら、もう一度やるからな。あ〜あ。。左手が黄色くなっちゃうよ。」
外科の新人「はい。。あの、痛くしてごめんなさい。部長。。ごめんなさい。」
部長「いや、泣かなくていいから。大丈夫だ。予想以上の成長だぞ?私は認めてるから。最後までしっかりついてくるんだぞ。」
外科の新人「はい。。」
部長「じゃあ。今日使った物の名前を全部おさらいだ。」
外科の新人「はい!」
部長は使用機器と関連するものの名称を教え、外科の新人はメモしながら一生懸命聞き取り、時間は過ぎていった。
部長「あっ!熱くなりすぎたな。もう時間じゃないか。そうだ、採取した血液を分析器にかけなさい。」
外科の新人は、注射器から試験容器に血液を移す。
部長「おいおい!手袋しろ!何を考えている!感染対策なんだぞ!」
外科の新人「私。失敗すると思ってないですから。。」
部長「バカ野郎!。。確かに、君のケーキ屋さんでの立ち回りや段取りをみたら。。君の言うことは正しいのかも知れない。なあ、今もし震度5の地震がきたらどうなる。それも考慮しての行動か。」
外科の新人「えっ!全く考えてなかったです。」
部長「たった一度のミスが人生を台無しにする可能性のある行為なんだ。私は大丈夫では済まない。最大限の注意をして、初めて成り立つのがこの世界だ。君が失敗したら婦長は何と思う。私が手塩にかけた看護師がそんなことになったらどう感じると思う。」
外科の新人「ご、ごめんなさい。」
外科の新人は再び号泣してしまう。
部長「身の安全確保は最重要だ。これから多くの人を助けるのなら、途中で事故は意味がない。なあ、この先は気をつけたらいいんだよ。まだまだひよっ子なんだ。しっかり学べばいいんだから、もう泣くな。」
外科の新人「ごめんなさい。改めます。」
部長「よーし。分析器のかけ方を教えるから結果出たら解散だ。」
分析器の使い方を学び、分析を待つ間、外科の新人は考える。じっと部長を見つめた。うつむく外科の新人。
私、彼ほどではないけど。。部長を愛してるのに気づいちゃった。。でもこれは絶対に悟られてはいけない。決して誰も幸せにはならない。とにかく部長から全て学ぶことだけを考えよう!
部長「分析出たな。装置止める処理と結果の送信と印刷を教える。」
外科の新人「あっ。。はい。」
部長「なんだ全く。。お前、彼のことを考えてたな?印刷したの持ってきて。」
外科の新人「ち、違います。ちょっとボーっとしてしまって。。どうぞ結果です。」
部長「うわー。中性脂肪が。。何故だ。」
外科の新人「なるほど。。ケーキの食べ過ぎですね。大切な方ですからお身体を大事にして下さい。。あっ!か、家族の方が大切なはずですから。」
外科の新人は真っ赤になったことに部長は気付かない。
部長「そうだな。。少し運動するか。じゃあ今日は終わりにする。」
外科の新人「ありがとうごさいました。明日もよろしくお願いします。」
部長「気をつけて帰りなさい。」
外科の新人は帰っていった。
勤務が終わり、一部始終を陰から見ていた婦長は思った。
新人さんは自分の気持ちにようやく気づいたみたいね。。だけど部長は気づいてないのかな?奥さまが一番の人だから気づいてないのかな?
やれやれ、この2人はどうなることやら。先に好きになっていることに気付いてないなんて。。あの鋭い部長が自分の気持ちに鈍感なんて。。2人の関係は、ちょっと気になるわね。
しかし、やっぱり新人さんは化けるかも知れないわ。飲みこみが早いわ。明日は採血やらせるか!いや、完璧になるまで待つか。
やっぱり、あの子はすごいわ。もう次は注射は出来るはずね。
こっそり抜け出しながら、改めて感心する婦長だった。




