外科の新人の歩み16 研修の終了
実習形式の研修になると、予想通り外科の新人の悪さは目立った。逆に内科の新人はあまりに実践慣れし過ぎていたため、噂通り講師の看護師すら上回ることが良くあった。
内科の新人と同僚は、外科の新人を一生懸命フォローした。この頃を境に他の同期から、優越感や妬みを感じるようになった。
内科の新人「大丈夫?気にしなくていいからね。」
同僚「そうそう。あなたの良さは分かってるから。」
外科の新人「全然気にしてないよ。恥ずかしくもないから。前の私なら落ちこんだと思う。最後に卒業するために勉強したから、実践形式は今は出来ないけど、内容は理解出来てるから。前は全く分からなかったのよ。道具の名前も全く分からなかった。でも今回は分かるのよ。だから前と全く違う。何回かやれば出来る自信は持てたよ。」
同僚「けどさー。手術の実践なんて研修でもしてないから。あんなのあなたしか無理よ。手術の大半は外科の担当だからな。。心配だな。」
内科の新人「実践って経験だけだからね。今は差があるけど。。たぶん2人とも経験積んだら。。すぐに私を上回ると思う。あなた達はいろんな人生経験をしているから、私とは違う。やっぱり強いと思う。」
同僚「まあ。私よりこの子のほうが伸びると思う。行列のお店を手伝って、あっという間に行列解消するし。周囲を見る目線が全く違う。本当にすごい能力よ。」
外科の新人「恵まれない家庭で生き延びるために必要だっただけよ。」
内科の新人「とにかく。あなたはすごく力つけてきてるわ。私には分かる。手術は外科が大部分を担当する業務。だけど、あなたなら大丈夫よ。でも、あなた達以外の人って感じ悪いわね。」
同僚「寮で仲良かった子ですらだからね。。働くとああなるのね。大切なものすら分からなくなるのってお金なのかな。」
外科の新人「さあね。私は、付き合う相手は選ぶからね。当たり障りなく付き合えばいいんじゃない?大切ではない人に時間割けないわ。あなた分かった?見た目で近づくのは悪いんじゃない。見た後でどう変わるかをしっかり見るほうが大事よ。私は初めはオープンよ。でもしっかり観察するからね。そうしないと大切な人を見逃してしまうからね。私達はあなたに見た目で近づいたと思うよ。すごく素敵だなって思ったからなの。」
同僚「そうね。。憧れみたいな感じだったな。」
内科の新人「良く分かった。。私、間違ってた。」
外科の婦長「あなた。まだまだだけど、ずいぶんマシになったわね。私はあなたは一番の看護師になると思ってるわ。」
外科の新人「いくらなんでも持ち上げ過ぎですよ〜。」
同僚「あなたねえ。婦長が唯一プロだと思ったのはあなただけなのよ?」
外科の婦長「そうね、プロと言うか。。ホンモノの看護師だと思ったのは確かね。技術以外は私より上よ。私はあなたから研修の時に教わったんだからね。私はあなたが超一流に育つ手助けをするだけよ。」
外科の新人「役に立ってないうちから持ち上げないでほしいなー。恥ずかしいわ〜。」
内科の新人「私は立派な外科の看護師になるために、ずっと努力してきた。でも、いずれあなた達が追い抜くのは分かります。看護以外で多くを学んできた。だから敵わない。でも悔しくはない。私も努力してついて行くわ。」
外科の新人「今は見習いにすらなってないから。。そういうのはもう少し先に考えましょう。先輩。最後の研修始めなくていいのですか?」
外科の婦長「始めてるわよ。全部終わったから、最後はみんなと話をするだけよ。ちょっと他を回ってくるわ。」
外科の新人「ねえ。来週中に彼に聞いてみるから、週末に2人で食事に行きましょう。」
内科の新人「分かった。予定キャンセルする。最優先だから。金曜日にお願いします。」
外科の新人「あら。すごいわね〜。」
内科の新人「その話なら最優先だから。」
みんなと当たり障りなく話をする。誰かからみんなで夜出かけないかという話が出たが、外科の新人が3人で彼氏とトリプルデートだから無理と断った。
ようやく長い研修が終わり、来週から正式配属だ。帰り道を3人で歩く。珍しく内科の新人の機嫌が悪い。
同僚「どうしたのよ。さっきから。」
内科の新人「えっ?あっ。ごめんなさい。。あのね、私、頭に来て。」
外科の新人「何がよ。」
内科の新人「あなたをバカにする態度。許せない!何にも知らないくせに。。だから見た目で判断する人は嫌いなのよ!」
同僚「でも、あなたに対する妬みも酷かったわね。」
内科の新人「あれは慣れてるからいいのよ。でもあれは許せない!」
外科の新人「いいのよ。仲間だけが理解して大切にしてくれたらいいの。あなたにそう思ってくれてうれしいわ。私、黙って引き下がらないからね。相手に与えた感情と同じものは言葉選んで返すから。」
同僚「知ってるわよ。前からよね。線引きを明確にするのよね。まあ、気分悪い奴が二度と誘わなくなるわよ。彼氏のほうが大事。あなた達より2人のほうが大事って宣言したようなものだから言い返せない。」
外科の新人「くだらないこと考えてないで、楽しむんでしょう?」
内科の新人「うん!」
外科の新人は内科の新人と腕を組む。同僚も反対の腕を組んだ。
内科の新人はそんなことは、過去にされたことがなかった。ものすごくうれしい気持ちになった。
同僚「ちょっと!」
外科の新人「ウソ!」
内科の新人「どうしたのよ。」
2人は同時に内科の新人の胸を揉む。
内科の新人「えっ。えっ!」
同僚「うわっ!いいなー。むちゃくちゃデカい。」
外科の新人「負けてるのは分かったけど。。あまりにすごいわ〜。手に余るじゃない!」
外科の新人は腰を掴む。
外科の新人「うわー。。ウエストほっそー。あなた身体まで。。看護師なんてもったいなさ過ぎる。」
内科の新人「は、恥ずかしいよ〜。目立たない下着してたのに〜。」
同僚「そりゃ。。妬むわ。私がこの身体欲しいもん。ねえねえ、今度温泉泊まりでいかない?1ヶ月もしたら不規則勤務になっちゃうし。」
内科の新人「えっ!いや、あの。。お父さんが厳しいから許可出ない。」
外科の新人「ああ。分かる気がする。しかし、すごいなー。」
内科の新人「恥ずかしいよ〜。触らないでよ〜。」
外科の新人「あら。電話。。もしもし。はい。。ちょっと待って。」
外科の新人「ねえ。定食屋さんがごちそうしてあげるって。どうする?」
同僚「それは。。行く!彼は明日に変更ね。」
内科の新人「すぐに断るから。行く!」
外科の新人「待たせてすみません。3人でもいいですか?。。はい。今帰っている最中ですから、歩いて行きます。15分後には。。ありがとうございます。」
同僚「彼。大丈夫よ。快く了解してくれた。」
内科の新人「私もキャンセルしたから大丈夫。」
外科の新人「大丈夫なの?大事な用事じゃないの?」
内科の新人「日本舞踊の習い事。もう無理だから来月で終わりにするの。」
同僚「日本舞踊!私、男だったら。。あなたに子供産ませたいわ〜。」
外科の新人「すごい発想ね!でも。。確かに。分かるわ〜。今初めて自分が男になりたいと思った。」
内科の新人「もー。。ねえ、お店はどちら?ああ、看護学校の向こうか。」
同僚「むちゃくちゃ美味しいわよ。」
内科の新人「楽しみ〜。」
みんなに好かれて人気はあったが、あまり心は開かず生きてきた内科の新人だったが、2人には気を許せた。
そんな大切な仲間に誘われた温泉。行くのに踏み切れなかったのは内心後悔していた内科の新人だった。
いつか、克服したら。。私からお願いしよう。
何かを感じ取った外科の新人は、頭を抱きしめながら「楽しみましょうよ!」とケアするのだった。




