外科の新人の歩み15 実現した夢
4月になり、人生で初めての目標になった看護師の夢がついに実現する時がやって来た。
同僚とともに大学病院に入った。案内に従い会議室に入ると入社式が始まった。
理事長からお言葉を頂くと、看護師の代表者が宣誓を行った。
新人看護師達は、そのまま別の会議室に移動し、2ヶ月間の研修に入ることになる。
外科の新人「ねえねえ。宣誓した看護師さん。むちゃくちゃ綺麗だったねー。」
同僚「ねえ、びっくりしたわ。あんなに綺麗で何故看護師になったのかな?」
同期は最終的に総勢10名となり、各自希望を胸に指定された席に座る。外科の新人は宣誓した看護師の隣になった。
外科の新人を認めた唯一の看護師が講師として登場し、教育が始まった。
看護師「はい。。皆さん、入社おめでとう!とても忙しい職場ですし、責任の重い仕事です。1日も早く役に立つ看護師になって下さい。えー。。あっ!そうそう。皆さんのネームプレートの裏に予定配属先が書いてあります。これは現段階での予定ですので、研修の成績や皆さんの特性によって変わる場合があることは理解しておいて下さいね。では研修を開始します。」
いくぶん緊張して受けた午前の研修が終わり、昼休みとなった。各個人で持参した弁当を食べる。
外科の新人はプレートの裏を見ると「外科」と書いてあった。
それは何でもやるつもりだったから良しなのだが、隣の同期があまりに綺麗でずっと気になって仕方ない。
外科の新人「ねえ。あなたはどこに配属なの?」
内科の新人「えっ?あの。。内科だって。」
外科の新人「うわっ!ねえねえ、あなたの弁当すごい美味しそうね。」
外では噂を聞きつけて、男性医師や事務員が群がっている。
外科の新人「ねえ、あれ。。みんな、あなた目当てよね。まあ、当たり前よね。」
内科の新人「私ね。見た目で判断する人は好きじゃないのよ。」
外科の新人「そう。。まあ、綺麗だと苦労も多いか。私にはない悩みだわ。ねえねえ。内科配属って。。つまり、優秀ってことよね!」
内科の新人「そんなことないですよ~。私。。外科がうらやましいな。」
外科の新人「えっ。なんで?」
内科「いや、何となくですけど。。外科に行きたくてずっと勉強してきたし。。だから羨ましいな。」
外科の新人「へー。そうなんだ。。」
同僚「あなたはどこに配属に?」
外科の新人「外科だって。あなたは?」
同僚「血液内科だって。どんな仕事なんだろう。」
外科の新人「彼女は内科だって。」
同僚「うわ〜。つまり、優秀ってことよね。ああ、私達は大学病院の経営する看護学校から入ったの。よろしくね。」
内科の新人「はい。よろしくお願いします。」
外科の新人「ねえ、夕食は?」
同僚「彼がお祝いするって。あなたは?」
外科の新人「私は今日は予定無しになったから。家に帰るわ。」
同僚「あなたは?」
内科の新人「私ですか?私は自宅通いだから。。まっすぐ家に帰ります。今日は夕食担当ですし。」
看護師「ねえ、あのマロンケーキすごい美味しかったよ!」
同僚「あのね、先輩。外科の先生に、彼の話はするなと言われてます。バレたら妬みがヤバいって。」
看護師「ああ。。分かったわ。」
外科の新人「でも無理なのは分かってたけど、内科いいな〜。」
内科の新人「なんで?」
外科の新人「尊敬するこの先輩の元で働けるんだから。」
看護師「えっ!尊敬されるほどではないわよ。それに異動になったのよ?外科にね。」
外科の新人「うそ、うそ!やった〜。うれしい〜。」
外科部長「おい!婦長〜。ちょっといいか。」
看護師「あっ。はーい。外科部長なんでしょうか。」
外で外科部長と看護師は話をしている。
同僚「ね、ねえ。今、婦長って言ったよね。」
外科の新人「まあ、あの方なら当然でしょう。ねえ、それよりさ〜。今、外科部長って言ったような気がするんだけど。」
同僚「確かに!えーっ。部長ってすごい偉いよね?」
外科の新人「ヤバ。。ケーキ押し売りしちゃったよ。」
内科の新人「外科の医師のトップですね。あのー。病院のこと詳しいんですね。先輩とも親しそうだし。うらやましいなー。私、外科のこと教えてほしいんです。」
同僚「ああ。それはこの子の人柄よ。誰とでも親しくなるし、なかなかいい能力持ってるのよ。私、最も信頼してるの。」
外科の新人「言い過ぎよ!いいけどさー。外科の話があなたの仕事で何か役立つのかな?」
同僚「そうだ!お近づきの記念に、あなたが都合いい日に3人で夕食行きますか!」
内科の新人「ええ、是非。ちょっと申し訳ないけど。。再来週の金曜日なら何とか。。」
外科の新人「ずいぶん忙しいのね。私はどうにでもなるから再来週の金曜日でいいわ。」
同僚「彼に確認するけど。予定表見る限りは接待のはず。明日までにはっきりさせるわ。まあ、よほどの予定じゃない限り日にちをずらすから。」
内科の新人は思った。すごいわ。部長になられたのね。おめでとうございます。あの先生はどうしたのかな。。すごく気になる。今日集中出来ないわ。
※※※
同僚も金曜日は大丈夫とのことだった。あっという間に2週間が過ぎ、3人で夕食を食べる日がやって来た。
内科の新人の気になっていた先生は3人で院内を歩いている時についに見かけた。こちらに向かってくる。内科の新人はドキドキしながら挨拶をすると、挨拶を返してくれてホッとしたのだった。
外科の新人「先生。元気ですか?相変わらず格好いいな〜。あっ!研修が始まっちゃう。身体気をつけて下さいね!」
あまりに簡単に親しくなる外科の新人を内科の新人はうらやましく感じた。
研修終了後、病院の近くのレストランで3人で歓迎会というのか親睦会というのか食事会を行う。
研修を通じ、内科の新人が圧倒的実力だということは2人とも理解した。
一方の内科の新人も、外科の新人の独特の良さを理解し、血液内科の新人の鋭い着眼力に一目置き、2人に憧れを抱いていた。
外科の新人「ご家族3人だったよね?プレゼント。」
内科の新人「なに?えっ!あの昼に売り切れる有名なマロンケーキ!すごい。いいの!」
同僚「ちょっと訳ありでね。」
外科の新人「ねえ、注文は何にする?」
全員の注文を聞き取り、外科の新人が注文した。
内科の新人「ねえ。地元はどこ?」
同僚「私は近いわよ。電車で西に1時間弱。彼女は聞かないであげてよ。」
外科の新人「いいわよ。秋田なの。けどね。私は故郷は捨てたから。私の故郷はここなの。」
同僚「悪いけど、それ以上は聞くのやめてあげて。」
内科の新人「えっ。。分かった。」
外科の新人「さあ、食べましょうか。みんなで食べると何でも美味しいよ!」
同僚「そうね。」
内科の新人「私、外食しないけど。。なんか楽しいな。」
同僚「しかし、あなた初めて見た時びっくりしたわ。こんな綺麗な人は見たことなかった。親しくなったら性格も素晴らしいし。。」
内科の新人「そうかな。私はあなた達のほうがうらやましいわ。私は、彼なんていないし。。」
外科の新人「あなたならすぐ出来るわよ。」
同僚「いや〜。。これだけ綺麗だと、案外難しいかもね。ちょっとトイレ行ってくるわ。」
同僚がトイレに行くと内科の新人は外科の新人に話す。
内科の新人「あの。内緒にしてほしいんだけど。。」
外科の新人「なに?」
内科の新人「あの。今日すれ違った外科の先生。彼女いるのかな?」
外科の新人「んー。あの人は仕事命だからな。格好良くて優しいけどね。いないんじゃない?聞いてみようか?」
内科の新人「うん!お願い!あ、あの。2人だけの秘密にして下さい。」
外科の新人「分かったわ。ねえ、つまり。。好きなの?」
内科の新人「えっ!うん。。」
外科の新人「なによ。一目惚れ?」
内科の新人「いや。。その。。」
外科の新人「まあ、言いたくないならいいけど。」
内科の新人「あの。。」
外科の新人「な〜に?」
内科の新人「私。。せ、先生と結婚したいの!」
外科の新人「えーっ!。。付き合いたいじゃなくて結婚?一目惚れで結婚?信じられない。あなた本気なの?」
内科の新人「私、真剣よ!」
外科の新人「しかし。。いや〜。。えーっ。。んー。とりあえず、配属されたら彼女いるか聞いてみるから。まあ、考えたら。。私も出合った翌日に結婚の約束したしな。。普通か。」
内科の新人「えっ!そうなの!ねえ、どうか、お願いします!」
外科の新人「あなたが熱くなるの初めて見たな。。分かった分かった。聞くから。しかし、なかなか難しいな〜。あっ!帰って来たから、この話終わりね。」
同僚「楽しそうね。あなたはどこの学校なの?」
内科の新人「国立大学の付属の学校なの。高いレベルの学校に行きたかったから。あと、近かったし。」
外科の新人「もしかして。駅の向こうの?」
内科の新人「はい。」
外科の新人「あそこ。私達では入れないわ。すごいわね。」
同僚「中学卒業して入ったのよね。そんな年齢で看護師目指すって。私、高校卒業しないと入れないと思ってたから。。遠回りしちゃったな。」
外科の新人「まあ、私なんか彼女いなかったら卒業出来なかったからな。ダントツ最下位だったし。研修の成績も悪かったんだろうな。けど、この病院入るなら私達の学校のほうが良かったんじゃない?」
内科の新人「最新の医療を学びたかったから。勉強しっかりやれば、入れると思ったの。あのー。私、あなた達のこと尊敬してるんです。これからも仲間に入れてもらえたらうれしいんですが。」
同僚「もう仲間だから食事会したんだよ?」
外科の新人「看護師としては全くレベル違うけど。。なんか気が合うのよ。私も仲間のつもり。」
同僚「しかし、来週からあなたの最も不得意な実習形式よね〜。大変よ?」
外科の新人「まあ。研修では全くダメだったけど、あなたと勉強したから。。前よりマシかもね。」
同僚「彼女ね。成績は最下位だったの。たけど、卒業試験は2位だったのよ。最後すごい勉強したから。」
内科の新人「すごい!」
外科の新人「あなた3位じゃない。成績もそれくらいでしょう?」
同僚「万年最下位が2位のほうがすごいわよ。彼女は授業料も生活費も自分で稼い出たから。学校は寝てたからね。私達の中で一番キツかったと思う。時間があったら1位間違いなしよ。だって教科書読むだけで質問無しでほとんど理解したからね。本当なら天才のはず。」
外科の新人「そんな訳ないでしょう。」
内科の新人「でも、何となく分かるわ。知的な感じは良く感じたの。あの、血液データの考察で血圧データを測定していないということは血圧降下剤服用してるはずって。。中性脂肪の高さとコレステロールで管理職のデスクワークの人って。。すごいと思った。私は、尿酸値が高くないのに血糖値が高いのはお酒飲まない甘い物好きとしか感じなかったのよ。みんなが私の答えだと思ってたみたいで、悔しかった。本当はあなたなのに。。あなたの観察力はすごいと思った。」
外科の新人「んー。何がすごいのか良く分からない。そう言えば、あなたのインシュリンの出るのが遅いから血糖値高い。つまり早食いって推測。どちらの意見?」
内科の新人「そうそう!あれ凄かった。あんな視点思い付かないわ。」
同僚「まあ、あれは私だけどね。そうかな?そんなにかな?」
外科の新人「絶対に思い付かないわ。さすが血液内科ね。案外病院ってしっかり見てるのね〜。」
同僚「あっ。そろそろ帰らないといけないわね。あなた綺麗だから危ないわね。」
内科の新人「大丈夫なんだけど。。まあ、お父さんに迎えに来てもらうわ。」
外科の新人「じゃあ。迎えに来たら解散しましょうか。」
同僚「それまでお話ししましょう!」
内科の新人「ねえ、彼はどんな人なの?」
外科の新人「私は。。会社で言うなって口止めされてるからなー。今はやめておくわ。」
同僚「私の彼は営業マンね。盆明けにご両親に挨拶に行って。結婚の許可と時期を相談する予定なの。」
内科の新人「うわー。すごいなー。」
同僚「私。地元に帰って別れるつもりだった。けど、この子ともう少し一緒にいたいと思ったから就職しただけなの。そしたら。。まさか彼が結婚考えてるなんて思ってなかった。今は両方大事ね。」
内科の新人「素敵なお二人だな。。私も頑張らないと仲間になれないね。」
外科の新人「だから仲間だって。成績いいとか関係ないの。なんか、好きなのよね〜。仲間ってそういうものよ。」
同僚「そうよね〜。この子は、誰とでも仲いいけど。仲間には心の開き方が相手によって全く違うからね。選んだ人にしか本当の姿見せないわよ。まあ、そのうち分かるわ。」
内科の新人「あっ!お父さん来た。もっと話したかったけど。。また会ってもらえるかな?」
同僚「当たり前じゃない。」
外科の新人「でも、待ってたらダメよ。会いたい時は自分から。お互い自然に出来るから仲間なの。ねえ、お父さん待たせて大丈夫?」
内科の新人「いけない。帰りましょう。」
3人で会計に向かった。
外科の新人「店員さん。申し訳ないけど、別々で払わせてもらえませんか?」
店員「大丈夫ですよ。」
車に乗り込む内科の新人を見送ると2人で帰宅する。
外科の新人「私は、店長と土曜日の夜に実家に行くわ。昼間はケーキ屋さんを手伝う。日曜日の夕食には帰る。あなたは?」
同僚「泊まりでどこか行こうかな。私も日曜日の夕方に帰るから、一緒に夕食食べましょう。最近、お互い彼とデートで寝る時だけ一緒だから。あまり話せてないしね。」
外科の新人「そうね。大切な仲間だからね!」
腕を組んでマンションに戻る2人だった。




