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外科の新人の歩み11 猛勉強

 年末年始を店長の家族と過ごし、穏やかな気持ちで寮に戻った。


 結果的に休み中に一円も使っていない。予定よりお金の消費が抑制された。


 この先も土日の昼間だけ手伝ったりしたら、ごはん食べれるから、卒業までのお金は繋がりそうだ。外科の新人は学業に専念するとアルバイト先に伝えると、昨今のゲームセンターの衰退で経営が苦しいのもあり、シフトが確定済みの1週間で辞めることになった。


 すぐに両親と店長に伝えると、手伝わなくていいから、都合のつく夜は定食屋の座敷で勉強しなさいと言われた。

 同僚に相談すると、あんなに美味しい夕食を食べらられるならと大喜びだった。


 結局は土日の昼間は同僚が彼とデートのため、定食屋の昼間のお手伝いをするのだった。


 無事アルバイトを引退し、平日は学校が終わるとそのまま定食屋さんに行って同僚に勉強を教わる。

 予定より時間が確保出来たため、1年の最初から徹底的にやることになった。



 いよいよ勉強の初日が始まった。


外科の新人「お母さん。お父さん。こんばんは。」

同僚「先日はありがとうございました。」


父「おお。息子の未来の嫁をよろしくお願いします。閉店後に夕食出すけど何がいい?」


外科の新人「あなたが選びなさい。」

同僚「いいの!じゃあ。。味噌カツ定食。」


母「あら〜。あなたもやるわね〜。」


同僚「先日、焼きそば定食にサービスでついてて。すごく美味しかったから。」


母「用意しておくから勉強しな。」



 外科の新人が教科書を読みながら、分からないところを質問することになった。


外科の新人「へー。初めて知ったわ〜。」

同僚「いや、初めてって。。あなたアルバイトして寝てるからでしょう。で、質問は?」


外科の新人「理解したつもり。」


同僚「本当に〜?じゃあ、ここは?」

外科の新人「前頭葉」


同僚「呼吸とかをつかさどる部位は?」

外科の新人「脳幹。」


同僚「あれ?ひょっとして、あなた頭いいの?」

外科の新人「いや悪いから、今勉強しているんじゃない!」


同僚「次読んで。。」



 真剣に勉強する。質問はほぼ無く、読むだけで理解しているようだ。


同僚「あっ。次、難しいよ〜。心臓と肺の働きよ。」


外科の新人「へー。動脈と静脈が逆転するんだね!ああ、東京発と東京行きが号車逆転するのと同じよね。東京が心臓なんだ。。なるほど。」


同僚「へー。私も腑に落ちたわ。なるほど。」



母「ちょっと。お父さん。あの子、かなり頭いいわよ。教科書読むだけで理解しているみたい。」


父「この間の動き見てたら分かるさ。あの子にはただ時間がなかっただけさ。」



外科の新人「へー。酸素と二酸化炭素をこうやって入れ替えるんだ。工場みたいね。だから一酸化炭素は危ないのか。これが出来なくなるのね。」


同僚「そうだけど。。どこに書いてあるのよ。」


外科の新人「何となく思っただけよ。誰が作ったのかな?天才ね!」

同僚「誰?いや〜。その発想なかった。。神が作ったとは言われてるけど。」


外科の新人「なるほど。それなら納得ね。」



 だんだん身体の下に勉強が移る。


外科の新人「なるほど、卵子は1個だけ!下りてくる最中に出会う。タイムラグがあるから生理後!つまり次を狙い撃つということか。」


同僚「時系列を理解するのは難しいんだけど。。」


外科の新人「でも右と左が連動するとは限らない。難しいわね!あーっ!」


同僚「どうした?」


外科の新人「生理終わって6日経ってる。ねえ、今月無理かな。。」

同僚「なっ。。」


外科の新人「まだ可能性あるわね。今日終わったら。」


同僚「もー。。しかし、予想外に進むわね。基礎は1週間でいけるわね。実習のほうもやれそうね。」


外科の新人「うん。ありがとうね!」



母「はい。お待たせ〜。3時間も勉強したら疲れたでしょう?食べたら帰りなさい。」


外科の新人「すごく楽しかった。」

同僚「ありがとうございます。」


同僚「うわ〜。美味しい!幸せ〜。でも、あなた予想外よ。たぶん。一気に成績上位ね。」


外科の新人「そんなわけないでしょう。」


同僚「ねえ。正月に帰ってね。考えたけど。大学病院に一旦入ろうと思う。彼と結婚を真剣に考えて結論出たら。残るか、地元に戻るか考えるつもり。」  


外科の新人「そう。あなたが幸せなら応援するわ。」



同僚「ねえ、ちょっと彼に話をしてくるから12時前にケーキ屋さんに行くわ。」


外科の新人「ありがとう。ちょっと。頑張ってくる。メールしないと!」


同僚「出ようか。あのー。美味しかったです。ごちそうさまでした。」



父「ああ。ありがとうね!申し訳ないけど、明日も頼むよ!」



 店を出ると、同僚の彼と店長が迎えに来ていた。2人は別れ、外科の新人は店長の店に入るとすぐさまシャワーを浴び、洗濯したナース服を着て、店長のベッドに入る。



 2人の愛情は燃え上がり、激しく愛し合う。


 外科の新人の身体の中に幸せが広がった。愛する人との時間はあっという間に過ぎ、約束の時間に同僚が到着すると、店長が2人を寮まで送る。


店長「勉強ありがとう。マロンケーキ。2人で食べて。」



 寮に戻った2人。


同僚「どうだった?」


外科の新人「うん。彼が中に来てくれたよ。今日すごい情熱的だった。あなたは?」


同僚「うん。彼ね、結婚考えてくれてたみたい。私、嬉しくて。。」



 泣く同僚を抱きしめ「良かったね。幸せになろうね。」と外科の新人も一緒に泣く。


同僚「彼が看護師になって落ち着いた盆くらいから。。彼が。。私の中に。。いいって。もちろん。その前に両親に挨拶する。結婚はもう少し先になるけど。。あなたを見てたら。彼に来てほしいし。彼の赤ちゃん欲しくなって。」


外科の新人「やったわね!すごい!あっ。ねえねえ。考えたの。ほら。」


同僚「何?パンツがどうした?」


外科の新人「いや、これ以上は見せれないけど。。生理用品使えば出て来ても安心だなって。ただ、パンツに付くほうが幸せなんだけど。。匂いとか。落ち着かないし。今回試してみるわ。」


同僚「なるほど!すごい勉強になる。」


外科の新人「しかし、良かったわね〜。私、すごく嬉しいわ。あっ。忘れてた。マロンケーキ。」


同僚「そうだった!」



 2人でマロンケーキを食べる。


同僚「何これ!むちゃくちゃ美味しいよ。すごい!」


外科の新人「でしょう?テレビも取材する人気店なんだって。」


同僚「この間調べたのよね。かなり有名人なのよ。ご両親のお店は、彼が街ではかなり有名って。」


外科の新人「へー。。まあ、みんな素敵だし、頑張っているから当然だと思うわ。そろそろ寝ましょうか。」


同僚「そうね!」



 外科の新人と同僚の勉強は続いた。1月末の土曜日の昼間に同僚は大学病院に就職希望書を提出した。


 内科の教育係の看護師が声をかける。


看護師「あら。どうしたの?」


同僚「はい。卒業後、お世話になろうと。」


看護師「そうなの!嬉しいわね!あなた、あの子と仲いいよね。助けてあげてよ。」



同僚「先輩。あの子。どう思います?」


看護師「んー。あのね、私だけだと思うけど。あの子。トップクラスの看護師になると思ってる。ただ、回りが手助けしないと難しいかな。けど、あの子だけなのよね。研修生の中でプロだって感じたのは。分からないかな。。」


同僚「たぶん、私は先輩以上に理解していますよ。あの子ね。学校の授業料も生活費も全て自分で稼いでいるんです。授業中寝てるのは仕方ないです。1月から私が勉強教えているんですけど。怖いくらい覚えるの早い。どんどん吸収しています。実践の勉強も教え込むつもりだから、実践の体験だけを補えばあっという間のはずです。ただ、彼女は看護師と彼の赤ちゃんを同時に狙っていますから、看護師をあきらめることはないけど、看護師は計画が遅れるかもしれません。」


看護師「えっ。そうなの!」


同僚「確か先輩の研修の初日に彼と出合った。翌日には赤ちゃん作るって。愛し合ったはず。彼女はようやく家庭の温かさを知ったんです。彼に会いましたけど。すごくいい人。すごい有名人で、たぶんすごいお金持ち。なのに、彼女は彼のお金には全く興味ないの。彼が愛してくれるのなら、自分が稼いで支えるってさ。本当に、むちゃくちゃお金持ちのはずなんだけどね。あの子に一番必要なのは家庭。愛なんです。」


看護師「そう。。あのね、担当の患者さんが亡くなったのね。彼女号泣してね。プロになりなさい。感情は捨てなさい。って言ったの。なんて言ったと思う?」



同僚「想像もつかないです。」


看護師「泣いていけないのなら看護師辞めるってさ。一生懸命やって、大切にしたから涙が出るって。その代わりに申し訳ないけど、これを区切りにする。自分が前を向いて生き続けるために。号泣して、遺族にお辞儀して、出て行った瞬間に笑顔で他の患者さんのケアしてた。私、自分が情けなくてさー。そんなこと誰にも教えられなかった。本当の看護師の姿だと思った。。私。彼女。。先輩に見えた。私、何にも教えられなかった。なのに彼女にすごいことを教わった。あんなに人間としての魅力ある人はいないわ。すごく苦労したんでしょうね。私は彼女が成長するためなら全力を注ぐ。すぐに追い抜くわよ。」


同僚「あの子。。すごい!私、あの子と同じ病院で働けて良かった。ほぼ地元に帰るつもりだった。結局は地元に帰りたくない理由は。。あの子だけだったのかな。彼氏もあったけど。。別れてもいいと思った。あの子ともう少し一緒に人生を歩みたかったんです。」



看護師「そう。。配属先が同じになることは、おそらく無い。まだ決まってはいないけど、それは理解しておいて。」



同僚「それは大丈夫です。では、彼女の勉強に付き合うから帰りますね。卒業したら、よろしくお願いしますします。」



 順調に勉強を続け、2月末には外科の新人は看護学校でトップレベルに並ぶくらいまでになった。止血方法など実践の基本も理解したが、研修前に理解出来なかったのが残念だった。




 卒業試験に向けての2人での学習は続いていった。


 

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