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外科の新人の歩み10 家族というもの

 大晦日の朝、早く起きて外科の新人は家族の朝食を作る。昨晩の残りの材料で朝食を完成させ、ごはんが炊ける間にオリジナルの料理を作る。



店長「おはよう。いないと思ったら。。」


外科の新人「ねえ、朝食出来たから運んでくれない?あと11分でごはん炊けるよ。」



 会話が聞こえて母が起きてきた。


母「おや。もう朝食作ったのかい?私が作るつもりだったのに。」


店長「父さんは?」


母「ああ。極上の肉と刺し身を取り寄せ中だよ。いつもより気合い入ってた。」



外科の新人「ごはん炊けました。蒸らしをするから、そろそろお父さんを。」


母「ああ、呼んでくるよ。」



 4人集まると朝食を食べる。


父「いいじゃないか。自分達の発想と違うし。美味いよ。」

母「ごはん。。本当に違うわね!これは。。みんなおかわりするわけだ。」

店長「うん。確かに美味しいよ。」


外科の新人「みんなで食べるからですよ〜。1人だと違うはずです。」


父「昼は蕎麦。夜はすき焼きだ。明日の朝はすき焼きの残りと刺し身。」

店長「そんな豪華なの子供の頃以来だな。」


父「昨日の活躍凄かったからな。こんな程度では返せないくらいだ。」


外科の新人「えーっ。そんな、いいですよ〜。病院だって無給ですし。」

店長「えっ!無給なの!酷くない?」


外科の新人「だって。研修ですから。教えて頂いているだけで役に立ってませんから。」


父「そんなはずはないだろう。。まあ、新しい家族には喜んでもらいたいし。もう頼んでしまったからな。」

母「あなたが来てくれて、何だかすごく嬉しいねえ。」


外科の新人「お父さん。お母さん。。」


 外科の新人は号泣する。


外科の新人「私。こんな暖かい家庭初めてで。」


母「もっともっと幸せになろうね。」


外科の新人「はい。ありがとうございます。」



 朝食も終わり、片付けをすると外科の新人は冷蔵庫から店長に自作の料理を持っていった。


外科の新人「ねえ、作ってみたの。」


店長「へー。マロンケーキ?僕に勝てるかな?」


 店長が一口食べると吐き出した。


店長「びっくりした〜。何これ?」


外科の新人「不味かったかな?私食べてみたけど。。まあまあって思ったんだけど。」


母「なんだい?」


外科の新人「マロンケーキに見える胡麻豆腐にそうめん。栗の代わりに生姜なんだけど。。」


父「それは面白いねえ。」


外科の新人「良かったら、まだ2つありますけど。」


母「へー。食べてみるよ。」



 店長は箸に変えて、改めて食べる。


店長「最初に言ってよ〜。イメージと味があまりに違うから怖くなったよ。言われて食べたら。。まあまあ美味しいな。」


父「見た目はマロンケーキだな。」

母「良く見たら分かるけど。。マロンケーキには見えるわね。」


父「ん!胡麻豆腐とそうめんって一緒に食べると合うな。」

母「ええ。なかなか美味しい。ヘルシーよね。」


店長「僕の店では出せないから、父さんの店で出してみたら?」


父「見た目を騙す料理か。面白いね。味がある程度ないと難しいけど。これは出せるな。」



店長「そろそろ掃除を始めるか。昼までに終わらせたいし。」


父「そうだな。やるか!」



 みんなで掃除をするうちに高級な肉や刺し身、野菜が届いた。店の戸締まりをすると本宅に戻る。


 母が用意した蕎麦を食べるとのんびり過ごしながら、外科の新人のことをいろいろ聞いて理解を深めあった。


 夕方になるとすき焼きの準備に取り掛かる両親。1時間くらい散歩してこいと言われ、店長は小さい頃の思い出の場所を回り説明した。

 外科の新人には、店長の知らない一面を知れて嬉しかったようだ。



 店長の自宅に戻ると、ちょうどすき焼きが完成していた。


外科の新人「うわ〜。すごい!」


父「今日のは特別に美味いぞー。さあ食べるか!」

外科の新人「はい!」


 外科の新人はあまりに美味しい肉にびっくりしている。


外科の新人「こんな肉。。初めて食べた!」

店長「これは。。」


母「気に入ったみたいで良かったよ。ん!やっぱり美味しいねー。」


 年内最後の食事は外科の新人にとっては今年一番、いや人生で一番の食事になったようだ。


 みんなで紅白を見ると寝る時間になった。外科の新人が何か言い出そうとしている。


外科の新人「あのー。」


父「どうした。」



外科の新人「あの、4人で一緒に寝たいんです。」



 今までどれほど家族というものに飢えていたのかを痛感した両親。


父「分かった。和室を使うか!」

母「そうだね。」


店長「父さん。母さん。ありがとう。」


 布団を移動し4人で寝る。外科の新人はお母さんの腕に抱きつき泣きながら、母に頭を撫でられると安心したようで、あっという間に眠っていった。


母「まだまだ子供なのかねえ。ずーっと辛かったんだね。」

父「おい、お前の責任はものすごく重いぞ。必ず幸せにしないとな。」


店長「その覚悟をして付き合ったつもりさ。だからすぐに家に呼んだんだ。出会って今日で1週間なんだ。」


母「そうなのかい!てっきり半年くらいと思っていたよ。1週間でこんなに。。お前。絶対に逃したらダメだよ。一生後悔する。」



店長「分かってるさ。これは父さんと母さんしか出来ないこと。感謝してます。ありがとう。」



父「まあ〜。なんだ。。私も幸せだよ。寝ようか。」

母「そうだね。この子を離さないように寝るわ。」



 外科の新人には体験したことのなかった、ごく普通の安らかな幸せがここにはあった。


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