第二話 大体だらしない奴に限って生き方が上手い
日向まこの朝は早い。
朝五時に起床。
というか五時まで起きてる。
彼女は朝ごはんを学校で食べるのだ。
支度をして五時半に登校。
6時頃学校に到着。
すぐに職員室に移動。
あかり「あら!もう来たの!?」
まこ「んふ…。んふ。」
あかりに抱きつき、しばらくした後勝手に電気ケトルを使い持ってきた味噌汁を作り始める。
味噌玉を持参しているのだ。
まこ「…のむ?」
あかり「えぇ!?いいの!?」
今日の味噌玉は海老の出汁がベースらしい。
因みに昨日は鮭がベースだった。
更に持ってきたおにぎりを頬張り、味噌汁で流し込む。
あかり「まこちゃん!なんか飲む?」
まこがピクッと全員を震わす。
まこ「まっちゃ!まっちゃたてて!」
そう、彼女の一つの楽しみは抹茶である。
あかり「は~いしゃかしゃかしゃかしゃか~」
まこ「ほぉ~」
抹茶を嗜んだ後に教室に移動。
掃除の時間だ。
まずは黒板だ。
黒板の文字をある程度消した後、マイクロファイバークロスで拭くと綺麗になる。
難点はまこは身長が小さいため上の方が届きにくい。
まこ「ぐぬぬぬ…」
ブッ!
おならだ。
ここでまこの楽しみの二つ目。
黒板消しポンポンだ。
煙が立つのが楽しい。
充分に堪能した後は床掃除だ。
勿論、机を移動することはない。
おっと?どうしたのだろうか?
日夏の机の中をゴソゴソしている。
これは…するめ板だ…。
飴なども入っている。
日夏はモデルということもあり食事には気を使っている。
空腹感と満腹感が嫌いらしい。
ちょびちょびとこういったヘルシーなおやつを食べているのだ。
次は花の机の中だ。
ん?これは?
盗撮写真だ…。
まこ「しね。ころす。」
盗撮写真を燃やして朝の活動は終わりだ。
余った時間はあかりの場所に戻り膝枕で寝る。
あかり「そろそろ準備いないといけないから…。」
まこ「むー。」
また教室に戻り日夏が来るまで寝るのだが…。
持参した毛布と枕で爆睡だ。
これがまこの朝活なのだ
私の名前は中野シェリー。
28歳。
英語教師。
私には天敵の生徒がいる。
日向まこだ。
この生徒。
一日中寝ている。
飯の時だけ起きる。
そしてまた寝る。
こういう生徒は見ていて腹が立つのだ。
シェリー「この前のミニテストを返却する。」
花「クソ!…またsixをsexって書いてしまったぞ!」
日夏「わざとだよね?絶対わざとだよね?」
花「そういう貴様は性別をsixって書いているではないか!」
日夏「ハァ…知ってて書いてないに決まってんだろ…恥ずかしい…」
煉火「俺よく分からんから両方ともmaxって書いておいたわ」
日夏「何でそうなる。それは分からんわ」
各々がわちゃわちゃ喋ってる中、まこの点数は100点。
まこ「ん-。」
急に立ち上がって私に近づいてくる。
シェリー「…。」
まこ「…。」
シェリー「席に座れ。」
まこ「むー。」
何がしたいんだコイツは…。
まこはそのまま自分の椅子を日夏の席まで持っていき、寝てしまった。
はぁ…疲れる。
シェリー「おい!いい加減にしろ!まこ!席に戻れ!」
花「別によくないか?」
日夏「まこは頭いいなぁ…。よしよし」
まこ「むふふ。」
私は怒りを抑えられずまこに黒板消しを投げた。
しかし。
煉火「よっと。」
煉火に止められた。
シェリー「お前ら。天使が来た時どう戦うつもりだ?」
煉火「知らねえよ。そんなスキル発動にも俺は興味もねぇ。戦う気もねぇ。」
日夏「少なくとも私達はモデルだからね。」
シェリー「歴史の授業で習ったろ?スキルは神と対抗するために人間が身に着けた進化だと。いずれ嫌でも戦うことになるさ。」
日夏「ッ!」
シェリー「どわぁ!?」
変な声も出るさ。
日夏が椅子を投げてきたんだから。
日夏「ルールや掟に何の意味がある!?あかり先生の部隊は総理大臣の命令をガン無視して沢山の人を救った!命令に従った部隊は全滅!なんの為の対天使撲殺部隊だったんだよ!あんたみたいな人がいるから!私の両親は!」
花「やめろ!」
日夏をビンタする花。
日夏「ハァ…ハァ…」
日夏の身体が揺れ始める。
まこ「…!?なっちゃん!」
まこは日夏のかばんを取り出し頓服薬を日夏に飲ませた。
日夏は周りにありがとうと呟き。
日夏「今日はもう帰ります。」
とだけ言った。
煉火「とりあえず保健室行くぞ。おぶったる。」
日夏「サンキュー。」
シェリー「ハァ…」
あかり「どうしたの?一匹狼さん?」
シェリー「日夏を怒らせたうえ、フラッシュバックを発生させてしまった。」
あかり「うんうん。聞いた聞いた。」
シェリー「どうすればよかった?街野隊長。」
あかり「や、やめてくださいよー!その呼び方!シェリーさんのほうが年上だし…えっと教師歴も長いんですから…。」
シェリー「…。」
あかり「…。」
シェリー「教えてくれ…。私には何が足りない?」
あかり「うーん。協力性ですかね?」
シェリー「私には程遠い言葉だな。」
あかり「シェリーさんは、頑張るのが普通だと思ってませんか?100点を取るのが普通。規則正しい動きをするのが普通だと。」
シェリー「ええ。なんのための点数、採点なんですか?」
あかり「生徒を褒めるためですよ」
シェリー「褒めるため?」
あかり「頑張りも褒めて、逃げるのも褒めればいいんです。」
シェリー「褒める…」
あかり「人間。死んだら負け。生きてるだけで勝ちなんですよ。私は皆で勝ちたい。そういう気持ちで戦ってきました。」
シェリー「もし、あの子達の前に天使が現れたらどうする?」
あかり「…は?」
しばらくしてあかりは大爆笑した。
あかり「アハハハ!!!何言ってるんですかぁ?そんなの…私達が守ればいい
じゃないですか!」
シェリー「はっ…。」
そうだ。
そうじゃないか。
何の為の力だ。
何の為の教師だ。
何の為の命だ。
シェリー「私は…ずっとあの子達を自立させようと必死にやっていたつもりでした…。でもそれは間違えだったんですね…。」
あかり「そうですね。だって生徒の皆はもう…とっくに自立してますから。」
シェリー「…。」
そうだ。
私があの子達を信じないと。
まこ「むー。」
今日も満点のまこが近づいてきた。
頑張ることは凄いことだ。
シェリー「よくやったな!」
私はまこの頭を撫でた
まこ「!?むふ…むふふ…!!!」
ギュゥっと私にしがみついてくる。
花「先生…変わったな…。」
日夏「変わったんじゃない。元に戻ったんだよ。」
シェリー「さて…帰るか。」
校門から出るとそこには日夏がいた。
シェリー「お前…」
日夏「お疲れ様です。伝説の一匹狼。」
シェリー「…なんで私のコードネームを…」
日夏「あかり先生から聞きました。部隊隊長の命令を聞かずに単独で天使から市民を守ろうとした英雄がいるって。」
シェリー「英雄なんかじゃない…。隊長を説得していればみんな助かっていた。いや、説得し続けていたら私は死ねた。死にそこねたんだよ私は。ほんと、ルール通りに動かないと不幸なことばかりだ。たった一人の女の子しか救えなかった。私にはそれしか…」
日夏がいきなり抱きついてきた。
シェリー「日夏?」
日夏「その救った女の子は…今モデルで頑張ってます。」
シェリー「!?お前まさか!?」
日夏はお辞儀をして帰っていった。
シェリー「…。人間生きてれば良いこともあるもんだな…」
な。
隊長。