1984年11月
私とハッサクは、元いた世界に帰る手がかりをなにも見つけられないまま、1984年の梅雨、夏休み、そして二学期を経験し、秋を迎えていた。夏はやっぱりこっちも暑かったけど、元いた世界の猛暑に比べれば、だいぶマシだ。九月に入ったら風が急に涼しくなった。十月からは冬服でも問題なさそうだ。
学校での生活では、クラスメイトのアケとトモとヒカリの存在に助けられている。私達がこの世界に来る少し前の出来事とか、お店の場所とか、私が知らないことを恥をしのんで聞くと『なに寝ぼけたこと言ってんのよ』とブチブチ言われながらも、ていねいに教えてくれる。
あ、軟式テニスの夏の関東大会で、アケのペアは準優勝という優秀な成績を収めた。アケに『ソフトテニスの準優勝、おめでとう!』とお祝いの言葉を贈ったら『ありがとう。でもソフトテニスってなに?』と聞かれた。
そんなこんなで、こっちの世界で暮らしていくことに慣れてきた。住めば都かな? スマホが無くても、なんとかやってける自分に驚いている。
ハッサクとは交換日記と家の電話で連絡をとり合っていた。お母さんからは最近電話が長いんじゃないのとたびたび文句を言われ、お父さんは私が誰と電話をしているのか気になっているみたい。
ハッサクは、『夜分にすみません、アマナツさんはいらっしゃいますか?』と電話をかける時は無茶苦茶ドキドキすると言いながらも、いつも彼から電話してくれる。電話口で私の話をよく聞いてくれ、日記には思ったことをしっかり書いてくれている。スマホなしでも、不便やストレスを感じていない理由は、彼のこういうところにあるのかも知れない。
高校受験に備えて学習塾や予備校に通い始める同学年の生徒も多くなってきた。受験対策について電話でハッサクに聞いてみた。
「ねえ、やっぱり塾に行って勉強した方がいいのかな?」
『うーん、こっちの世界の高校を受験するかどうかもわかんないし』
「そうだけど、私たちもうすぐ三年になるんだからさ、どっちの世界の高校に行くにしても受験対策はしといた方がいいんじゃない? 勉強する内容、そんなにガラッと変わってるわけでもなさそうだし」
『言われてみれば、確かにそうだね……じゃあ、冬休みくらいから始めようか』
「まあ、成績優秀なハッサク様に塾は必要ないかもだけど……じゃあ私、池袋あたりの塾、どこがおススメか、アケたちに聞いておく」
『うん、よろしく頼む』
ハッサクが、高校受験の準備にあまり乗り気じゃないのは、なんとなくわかる。元の世界にいるミカンちゃんのことが気になっているんだと思う。こっちの世界で高校受験するなんて考えたくないんだろう。
彼なりに、ここに迷い込んだ原因や、元の世界に帰るための手がかりをいろいろと考えている気配はある。でも、そのことを交換日記に書いたり、私に相談することはない。
元の世界に帰りたいのか。ここにいたいのか?
その気持ちを確かめ合うのを避けているような気がする……お互いに。
いつかはわからないけど、帰れる日がきた時、私たち二人はどっちを選ぶのだろうか。
――――
10月25日(木曜)
ハッサクからアマナツへ
今日、多摩動物公園にコアラが来たニュースをやってたけど、見たかな?
できれば一度コアラを見にいきたいんだけど、一緒に行かない?
まだ混んでるかもしれないけど、11月3日の文化の日あたり。
――――
10月26日 金曜日
甘夏からハッサクへ
うん、ニュースやってるの見た見た。
でも、ハッサクから動物園に誘うなんてめずらしいね。
動物好きだっけ?
11月3日、大丈夫だよ。
待ち合わせとか、どうする?
――――
10月29日(月曜)
ハッサクからアマナツへ
ありがとう。
いや、特にこれといった理由はないんだけど、ちょっと探したいものがあって。
じゃあ、その日、朝の8時にC号棟の前で待ってるよ。早いかな?
――――
11月3日。
新宿で京王線に乗り換えた時から動物園を目指す人でいっぱいだった。
満員電車の中で、ハッサクは私が押しつぶされないように、ドア横のコーナーで体を張って守ってくれた。私はせっかく作ったお弁当が押しつぶされないように、両腕でガードした。
降りた駅の改札口を出たところから多摩動物公園の入口まで行列ができていて、入場券を買うのにも三十分くらいかかった。
正門でチケットを切ってもらい、ガイドマップを見て進む。ハッサクは途中何度も振り返り、私がついてきてるか確かめる。コアラ館はだいぶ奥の方だけど、そっちの方に人の流れができている。あまり進まないうちに、動物公園の係の人が『最後尾』のプラカードを持って『コアラ館に入場の方は、こちらにお並びください』と案内していた。
その列に並び、超ゆっくりと進む。家族連れを中心に、お年寄りや私たちみたいなカップルも並んでいる。
電車の中といい、この行列の中といい、私とハッサクは、なんとなく密着気味だ。照れくさいのか、彼はそっぽを向いて目を逸らしている。
「ひょっとして、髪型、戻した?」
唐突にハッサクが聞いてきた。
「え⁉ 戻したって……そうそう、戻した」
ココに来て初めて目覚めた朝、鏡の中の私の髪の長さはミディアムだった。今思えば、この世界の私(ってだれ?)はみんなと同じように聖子ちゃんカットにしていたのかもしれない。
そのまま髪の長さをミディアムでキープしてきたけど、この前の日曜、美容室でカットしてもらい、思いきってショートにしてもらった。『思いきって』といっても、元の私の髪型に戻しただけだけど。
「へー! よくわかったね。ハッサクは全然私の髪型なんか見てないし気にしてないのかと思ってたんだけど」
「そ、そのくらい短くなればわかるよ」
「髪切ってから学校で何度か会ってるんだから、もうちょっと早く言ってくれればポイント高かったのになあ」
「いや、気づいてたんだけど……前のアマナツに戻ったなあって」
「やっぱ、長い方が良かった?」
「どっちなんて……選べないよ」
その困り顔を見て私は笑う。
そう。選ぶって、難しい。
行列はノロノロと動き、四十分くらいかかってコアラ館に入ることができた。
周囲からは『かわいい!』『動いたー!』 という歓声が上がっている。
その場にゆっくり立ち止まることはできず、前に進みながら木の幹に抱きついている二頭のコアラを見物した。
「首元の白いフサ毛が可愛いよね」と私。
「タムタムとトムトムか……オス同士みたいだけど、繁殖させようという計画はないのかな」とハッサク。
「まん丸の黒目で無表情な動物ってなんか可愛いよね」
「意外に動きが速いね、もっとじっとしているのかと思ってた」
「それ、ナマケモノといっしょくたにしてない?」
彼がコアラを見に来た理由は、どうやら『可愛いイキモノに会いたいから』ではないようだ。
前の世界の上野動物園で見たパンダは、ごろんと寝てることも多かったけど、いざ動き出すと愛嬌たっぷりで、それに比べるとコアラ君たち、もうちょっと愛想よくしてもいいんじやないかね? と正直思った。
コアラ人気のせいか、園内はどこに行っても混んでいる。オーストラリアからコアラと一緒にやってきたワラビーを見たら、お昼の時間をとっくに過ぎていた。お弁当を広げられる広場を探し、空いているベンチを見つけて座った。
弁当の包みを開け、ハッサクにお絞りを渡し、バスケットの容器を差し出した。
「食べてくれる?」
「もちろん、すごい!」
「すごいって言っても、おむすびと唐揚げと玉子焼きなんだけどね……唐揚げと玉子焼きはお母さんに手伝ってもらったし」
ハッサクは、いただきますと手を合わせると、おむすびを片手に持ち、ひょいひょいと唐揚げと玉子焼きを口に入れる。
「うんうん、うまい! これが昭和の弁当か」
「……今とあんまり変わんないと思うけど。ほら、喉に詰まるよ」
そう言って私は水筒の麦茶をフタに入れて渡す。
喜んで食べてくれ、お褒めの言葉をいただけるのは、正直嬉しい。
おむすびが一つ消えた所でハッサクが聞いてきた。
「お母さんとは仲良くしてるみたいだね」
「まあ、そうだね……いろいろあーだこーだと口出ししてきたり、お小言ももらうけどね」
「でもほんと、よかったね」
「うん、ありがとう」
お弁当を食べたあと、園内はかなり混んできたので早めに切り上げることにした。
ずっと外にいたので、体も少し冷えたし。
通路の両側の動物を眺めながら、出口の方に向かう。ぞろぞろと入場してくる人はいっぱいいるけど、帰る人はまだまばらだ。
しばらく進むと大きな売店があった。軽食や飲みもの、それにお土産を売っている。
「ちょっとのぞいて行っていい?」
ハッサクは売店を指さす。
「うん、いいけど?」
売店の奥に入ると、ライオンや象、ゴリラなど定番の動物のグッズが売っていた。
そこに、ひと際大きなコーナーを陣取っていたのは、コアラちゃん達だ。
大小のぬいぐるみからマグカップ、ぬり絵などいろいろなグッズが置いてある。
そして。
その片隅にソレがあった。
『エリマキコアラ』のキーホルダー。
「ハッサク、これってひょっとして⁉」
「うん、ぼくが持っていたのと同じだ」
なぜかシッポの生えたコアラが白いエリマキを巻いている。さっき確かめたばかりだけど、実物のコアラのお尻にシッポは見当たらなかった。
「エリマキトカゲが流行ってたから、シャレでこんなの作ったんだろうな」
そう言いながら、ハッサクは棚から突き出ている金属の棒からそれを二つはずし、手にとった。
「え、それ買うの?」
「うん、ちょっと待ってて」
そう言ってレジに向かった。
小さな二つの紙袋を手にぶら下げてハッサクが戻って来た。
「これ、一つあげる」
「え、私に? いいの?」
「うん、ぼくは一つ持ってるから……元の世界で」
「それはどうするの?」
「これはミカンにあげる」
「……ミカンちゃんに? だってここには……」
「この間、父さんと母さんの部屋に入る用事があって、その時に見つけたんだ」
「なにを?」
「戸棚の上に小さな仏壇みたいなのがあって、位牌っていうんだっけ? それに『蜜柑』」って書いてあった」
「……そうなんだ」
「ぼく、あっちの世界にいた時、いつだったかよく覚えてないけど、ミカンにこれを頂戴って言われた。でもあげなかった」
「……そうなんだ」
「だから、今度はちゃんとミカンにあげる」
帰りの電車はまだ空いていた。二人並んで座れた。
ハッサクはずっと黙りっぱなしだった。
今日、動物園に来たのは、ミカンちゃんにあげるコアラのキーホルダーを探すためだったんだ。
元いた世界で妹にあげることができなかったから……
あっちの世界とこっちの世界を混同しない方がいいんじゃない、とは言えなかった。
そして、偶然だろうか。ハッサクはエリマキコアラのキーホルダーを見つけた。
ん、まてよ?
元いた世界では、ハッサクは小学生の時からエリマキコアラのキーホルダーをランドセルにぶら下げていた……こっちをいつ抜け出して、あっちにいつ帰ったのかわからないけど、なんにせよハッサクは元の世界に帰ることができたっていうことじゃないのかな?
「ねえハッサク、これやっぱり返す」
私は紙袋に入ったキーホルダーを差し出した。
「一つはお家の仏壇でミカンちゃんにあげて。で、これはハッサクが持ってて」
「どうして?」
「だって、向うの世界にこれがあったっていうことは、ハッサクが持ち帰ったっていうことじゃない?」
「えーっと……確かにそうだだ。でも、ぼくが持ち帰ったかどうかはわかんないよ」
「君に持ち帰って欲しいの!」
「どうして?」
「いいから!」
私は強引に彼の手に紙袋を持たせた。
ハッサクはそれを握りしめたまま、下を向く。
「アマナツは、元いた世界に戻りたくないのかな」
私はそれに、ちゃんと答えることができなかった。
〇
その夜。
私は夢を見た。
小さい頃……たしか小学校一年生になった頃の記憶。
お父さんに連れられて行った場所には、黒い服を着たおとなの人がいっぱい集まっていた。
そこは、お花がたくさん飾ってあって……きれいな紫色の花びらが集まったお花もあった。今思うと、あれはラベンダーの花。その真ん中にお母さんの写真があった。
お坊さんがお経を読み終えると、おとなの人が並んで次々とお母さんの写真の前にお線香をあげた。その煙はいい匂いがした。今思うと、それはラベンダーの香り。お母さんの香り。
おとなの人はみんな私の頭を撫でて『こんなに小さいのにねえ』とか『お父さんといっしょにがんばるんだよ』と声をかけていく。
その夜から、お父さんのおばあちゃんが一緒に暮らすようになった。お母さんのおばあちゃんは時々来ていたので一緒に遊んでくれて楽しかったけど、お父さんのおばあちゃんは遠く仙台にいたので、あまり会ったことがなかった。だから、最初はちょっと怖かった。学校から帰ると家にいづらく、団地の中だけならいいよ、とおばあちゃんから許可をもらってすぐに外に遊びに出た。
その頃は友達もいなくて、団地の中の公園にスケッチブックと色鉛筆も持ち出し、お花や蝶やら、街灯やベンチなんかを描いていた。この団地は、少し前に新しく立て替えられて、子供たち用の遊具はあまりなかった。
「うまいじゃん、ピンクのちょうちょと、きいろい花」
いつのまにか私の後ろから男の子が、スケッチブックを覗いている。
「えー、それ、ぎゃくなんだけど。お花がピンク。きいろがちょうちょ」
「そうかな、ぜったいピンクのがちょうちょだと思うんだけど」
私はムッとする。
……それがハッサクとの最初の会話だったと思う。
確か、幼稚園が一緒だったから、ハッサクの顔は知っていた。部屋も隣の隣同士だったので、お母さん同士は仲がよかった。
「さいきん、よくそとであそんでるね」
「おうちにいてもつまらないし……あれ、わたしのことしってるの?」
「うん……そうか、うちのママが言ってたよ。なっちゃん、お母さんがいなくなっちゃったって。だから、なかよくしてあげなさいねって」
「あれ、きみ、お母さんのこと、ママってよんでるの? 小っちゃい子みたい」
「おかしいかな?……じゃあこれから、母さんってよぶ」
「いいなあ、お母さんがいて」
「じゃあぼくのママ、じゃなくて母さんをかしてあげるよ」
「……ありがと。あなたのなまえは?」
「ハッサク」
「おもしろいなまえだね。ハッサクはわたしとなかよくしに、ここにきてくれたの?」
「……まあね」
ハッサクのほっぺたが少し赤くなった。
「君は? 母さんが『なっちゃん』っていってたけど」
「あ、ごめん。ほんとはね、『あまなつ』っていうんだ」
「ふうん……かわいいなまえだね」
そう言ってハッサクはもっと赤くなった。
「あ、そうだ、グリコのじゃんけん、やらない?」
「なにそれ?」
「えー、ようちえんでやらなかった?」
「あー、お友だちとかやってたかも……わたしはしらない。やり方、教えてくれる?」
「うん! じゃあ、あっち行ってやろうよ」
そして私達は赤羽台トンネルの脇の階段をグリコのじゃんけんをしながら上がったり下りたりした。
十回くらいやった。私は負けてばっかりで、最後の方はハッサクがわざと後出しじゃんけんして負けてくれたと思う。
そこに、買い物帰りのハッサクのお母さんが通りがかった。ミカンちゃんもいっしょだったと思う。
「ハッサク、ここで遊んじゃダメって言ったでしょう!」
「ごめんなさい」
「おばさん、わたしがね、グリコじゃんけんおしえてって言ったの」
「あら、なっちゃんじゃない。今、おうち、一人なの?」
「ううん、おばあちゃんがいるけど」
「それじゃあ、おばあちゃんに断って、うちでおやつ食べようか? ちょうど伊勢屋の豆大福を買ってきたから」
「わーい!」
「ハッサク、喜んでるけど、あなたの分を一個なっちゃんにあげるのよ」
「え! ……まあいいか、アマナツ、一緒に食べようよ」
ハッサクは少し照れながら私を誘ってくれた。
「それからねママ、じゃなくて母さん」
「……どうしたのハッサク、気味悪いわね」
「あのさ、アマナツのお母さんにもなってあげてくれる?」
ハッサクのお母さんは一瞬きょとんとしたけど、私にニッコリと微笑んだ。ミカンちゃんはちょっと不機嫌そうだったけど。
「ええ、いいわよ。なっちゃん、お母さんだと思ってどんどん甘えてちょうだいね」
その言葉を聞いて、私はわっと泣き出し、ハッサクのお母さんにしがみついた。
お葬式の時に流せなかった涙が次から次へと流れた。
○
カーテンの隙間から光が漏れ、目が覚める。
体を起こしてあたりを見回すと1984年の私の家だ。遠い天井、畳の匂い。
今、私がいる場所はここ。
さっき見た夢は、ただの夢。
こっちが本当の世界だ。
だって、ここにはお母さんがいるんだもの。
お母さんがいないのは、ウソの世界。
そうに違いない。そう思いたい。
でも。
そのウソの世界では、ハッサクが私に声をかけてくれた。ノロマな私を待っていてくれた。
そこにミカンちゃんも加わった。三人で遊んだ。三人で大きくなった。
ハッサクのお母さんも優しかった。
ねえハッサク、
あっちの世界がホントなの?
それとも、
こっちの世界がホントなの?
あっちと、こっち、どっち?
あっちこっちどっち?
あっちこっちあっちこっち…………
〇
こんばんは 中山みゆきさま
ハガキで投稿するの、初めてなので、すごくドキドキしながら書いています。
東京に住む女子中学生です。
月曜の夜は、みゆきさんのユーモアたっぷりのお話とか、勇気づけられる励ましのコメントとかが聞けるので毎週楽しみにしています。週の初めから寝不足をひきずっちゃいますけど……
相談をして、なにかアドバイスが欲しいとかっていうわけではないんですけど、また、自分で決めなくちゃいけないから、そもそも相談なんかしちゃいけないことなんですけど、みゆきさんに聞いて欲しいなと思って筆をとりました。
空想、いえ、妄想と思ってもらってもいいです。
私は、1984年の今に、2025年からやってきました。
一人じゃなくて、幼なじみ? 彼氏? の男の子と一緒に。
小さい頃、私は母を亡くしました。でも、こっちの世界では、母が生きています。
一緒にここに来た男の子には、妹さんがいました。でも、こっちの世界では生まれてこれませんでした。
だから、男の子は元いた世界にすごく帰りたそうにしています。
私はというと、迷っています。ここには母がいるし。
それにこの世界でとても楽しく過ごせています。
最初は、スマホが無くて、連絡を取り合ったりするのが不便だと思ったんですけど、直接話したり、交換日記でお互い考えていることを伝えあえて、それってすごくいいなって思います。
かえって、もっと会いたい、もっと話したいっていう気持ちが強くなりました。
未来と今、どっちがいいかなんて比べられないけど、ずっとここにいてもいいなって思っています。
あっ、スマホって、なんだかわからないですよね?
一人ひとりが持っている小さな電話とコンピューターみたいなものです。うーん、うまく説明できてないかな。
いつか、元いた世界に帰れる時が来るかも知れません。来ないかもしれません。
でも、もしその日が来たら、私はどっちを選ぶんだろうかって考えてしまいます。
ここに残るか、男の子といっしょに帰るか。
一つだけ言えるのは、あの子とここに来れてよかった、ということです。
とりとめのない話でごめんなさい。
初恋は甘夏の味 より
〇
では、次のおハガキを紹介します。
と、言いたいところですが、書いてくれた内容がすごく重いことなので、読むのはやめておきたいと思います。
でも、私なりに考えたことは伝えておきたいので、このコーナーで取り上げさせてもらいました。
リスナーのみなさんには『なんのこっちゃ?』なお話かもしれないですね、スミマセン。
えー、ラジオネーム、『初恋は甘夏の味』さん
お便りありがとう。
あなたの話が、実際に起きていることなのか、はたまた、なにかの比喩なのか、正直私にはわかりません。
でも、素直で真剣な気持ちで書いてもらってることは十分に伝わってきます。
ここに残るか、元いた場所に戻るか。
そうね。あなたが書いてくれた通り、『こっちにしたら?』なんていうアドバイス、責任重大すぎて、私にはとてもとてもできません。
ひとことだけ言えるとしたら、『運命』に従ってもいいんじゃないかなって思います。
運命って時にはすごく残酷。それは別の場所から来たあなたが強く感じているかも知れないけどね。
でもね、字のごとく、時には思いもよらない結果を運んできてくれることもある。
その時が来たら、あなたの気持ち、そして幼なじみさん? ボーイフレンドさん? を想う気持ちを大事にしながら、運命に『命を運ばれて』みたら、どうかな。