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異世界の旅路  作者: にくまん
Volume_1
6/45

◇0006_`スライム退治3

森の奥。ルリアはより速く走り、自分を追ってくるクラーナの攻撃を何度も捌く。

刃先が赤い、グレイブと思われる武器。クラーナが持つ武器が近づくと、一瞬赤い霧のような光が見える。

毒だ。恐らく、彼女の魔術スキルなのだろう。ルリアにすぐに変化を与えるほどの力ではないが、耐性を持たない人間にとっては猛毒となりえる。

「毒でこの私を制したいのですか?であれば、それは無意味なことです。私にある加護はそのようなもので屈したりはしない」

クラーナに対する強い牽制。その眼差しはより相手を倒すための力があった。ハルバートを構え、ルリアは彼女を倒すためにスキルを発動させる。

横一線の攻撃。ハルバートへ魔力が追加エンチャントされることで、衝撃波が発生して周囲を薙ぎ倒す。

しかし、その攻撃をクラーナは回避する。まるで蝶のように。そう簡単には命中しないことは分かっていたが、少しばかりルリアは気がかりな感情を抱いていた。

「貴方は、どうして・・」

頭をかかえ、何処か一瞬考えるような仕草をとってしまった。その隙をつかず、クラーナは、自分が降り立った大木の上で彼女を見ている。

「毒に酔ったわけでもない。何かおかしいことでもあった?」

首を傾げるクラーナ。どうやら彼女はかなり無自覚のようだった。

「街で衛兵から聞きました。最近、ギルド剣士が堕ちて山賊になったと。その話と貴方が関係あるのだとすれば、この状況は別に違和感のない話です。ですが、貴方のような人が山賊になる理由は解せない」


「分かってるのに分からないとか、いいかげんな言動を言うのね。見た目は頭良さそうだけれど、実際には馬鹿なのかしら」

「クラーナ、貴方がどうして山賊になったのか。私は知りたい」

「残念な子」

「なんですって・・?」

目をつぶるクラーナ。それほどまでに、ルリアの言っていることが駄目だったというのだろうか。

困惑に満ちているルリア、ただクラーナにとっては目の前に居るのはじぶんを邪魔する敵でしかない。

「私を可愛い女の子だと思って心配しているのなら、この場所を去ったほうがいいわ」

「何のために戦っているかも、答えないのですね」

「私に一体何を語らせたいのか。その意味も見出せないし。困ったわ、貴方は、本当に馬鹿みたい」

「そう何度も人を嘲るとは、不敬極まりないですね。分かりました、私は全力で貴方を倒しに行きます」

ハルバートの柄を振り回し、上段の構えをとるルリア。肉体の中で、魔術回路を総動員して、己の力を強化する。

「参ります」

全力で走るルリア。その速度はより早くなり、一瞬でクラーナの目の前まで移動した。そして、全力による攻撃が入ったが、クラーナには回避された。空振りとなったハルバートの刃先が、大木に命中してはその対象を一気に裂いてしまう。

「私を求めている。でも私は知ることもない」

クラーナを追うルリア。全力でハルバートを振り回し、攻撃するがその攻撃を何度もあしらわれる。

そうルリアの技術が悪いわけではないが、クラーナの方が戦闘慣れしているような感覚を覚える。

技術量では向こうが上回っている。その戦闘の中で、ルリアはより違和感を覚えてしまう。


自分とここまで戦っていても、クラーナは攻撃を何度も回避し、防御する。その一連の行動に一才の淀はなく、剣士としても一級品の技術を持っている。

クラーナは、ギルド協会であればそれなりの報酬を得られるにも関わらず、その年齢で山賊に落ちているのだ。

「この・・!」

ルリアの戦闘スキルの一つである三連撃の攻撃。ハルバートの突き攻撃が高速で放たれたが、それらも防御される状態に陥った。

ギルド協会であれば、ある程度周辺地域の事情は網羅しているはずだが。このような実力者が、スライムを操って森林を荒らすような行為をしていることは知らないようだ。

彼女がそれほどまでに用意周到なのか、それとも純粋にギルド協会が実は無能だったのか。

「無駄よ」

一撃、その攻撃が弾かれ、反撃として繰り出されたグレイブが向けられる。その攻撃を何とかルリアは防御したが、その時点で発生した毒蛾によってルリアの視界が遮られる。

「っ・・!?」

何とか退避し、クラーナによる追撃を回避する。蝶なのか、蛾なのかよく分からないが、それらしい精霊の姿も見えてきていた。

「土属性の亜種・・ここまで来れば、ランクA相当の実力者のはず・・?」

「目利きは良いのね。実際、私はランクAのギルダーだった。今では、山賊になって適当な仕事を受けているだけ」

「何故そのような行為を・・いいえ、それ以前に貴方たちは、馬車を襲撃して姫を攫ったグループなのですか?

「それを今聞くの?知ってて攻撃したんじゃなかったのかしら」


「スライムに関しては正当防衛です。とにかく、貴方たちが姫君をさらった山賊のグループだということは間違いないのですね?」

「それを聞いてどうするつもり?何の証拠もないのに人を人攫い扱いするの?本当に残念な子、もう少しいい子だと思ったのに、これでは幻滅してしまうわ」

「言うだけいいなさい。あなたをここで捕まえればギルド協会からの信頼も上がるでしょうから」

「そう。お役所仕事って別にそう楽しくないはずだけれど、何か欲しいものでもあるのか・・よく分からない。貴方も、それなりに事情があるかもしれないけれど」

「山賊相手に、私のキャリアを心配される筋合いはありません」

「あら、怒った・・?」

クラーナの言動に気に障ったのか、更にルリアは戦闘能力を高めようとする。現時点では、まだ魔力の調整が得意ではない。いくら女神の近くにいたとしても、ルリアという少女は魔術師としてはランクが低い。

「ただ、貴方は私を倒せない。これは能力の差異とかそういう意味じゃないわ。この場所では、絶対的に貴方は不利だということを教えてあげる」

「え・・?」

周囲に感じる魔力。

そして、彼女が作り出したと思われる精霊がより無数に現れる。舞う精霊、その一つ一つから発される瘴気に、ようやくルリアは自分の失態に気がつく。

「ここが、貴方の領域・・?」

「魔術工房には二種類あって、私の場合は外の領域を司れる。工房と結界では、ただ役目が違うだけかもしれない。でもこの領域であれば、ギルド協会に頼らなくても魔術師としてより活性化させられる力が出来上がる」

「うっ・・・・貴方は、そんな・・」

視界が歪む。

ここまで高濃度の瘴気を発生するとなると、さすがに耐性持ちであってもダメージが出てきてしまう。

「この、程度で、私は・・!」

「無駄よ。神経に影響のあるタイプである以上、魔術回路を総動員しても無意味だから・・」

「この、私は、まだ、負けてない・・、か、ら」

気絶するルリア。この時点で勝敗はついたが、クラーナはとどめをさすことは無かった。近づき、彼女を抱き抱える

「さて。私を見たのだから、大人しくさせておかないと。彼の計画を邪魔されないためにも、目撃者は少ないほうがいい。これで、大丈夫なはず」

そこで、向こう側からリッカが走ってくるのが見える。どうやら、スライムを一人で全て倒したらし。

「ルリア・・・!?」

「残念ね。そこで動かないほうがいいわ。彼女の命は大切でしょう?」

「人質のつもりか、っておい!?」

すぐに逃げるクラーナ。一人、自分と同じくらいの女の子を抱き抱えて彼女は疾走したのだった。彼女をそのまま追いかけるリッカ、少しばかり面倒くさい状況に陥ってしまったようだ。

「ついてくる気のようね。さすがに一人抱き抱えた状態じゃダメか。仕方ない」

クラーナによる合図。それによって、木々からスライムが溢れて出てくる。

それによって行動を阻もうとしたが、リッカはすぐに敵スライムを一刀両断していった。

「逃げるんじゃない・・!」

「しつこい、でも残念」

一気に疾走していくクラーナは、何か紐のような物に捕まり、一気に崖から滑走していったのだった。その最終地点に落ちていったとき、紐が断ち切られてしまう。

「くそ、主人公が移動手段に使えないってどういうことだ!?」

自分でも意味不明なことを言っていたが、後ろからくる嫌な気配に気づくのだった。

大量のスライムが迫ってくる。どうやら、クラーナが支配している魔物の数はかなり桁違いだったようだ。

大量のスライムによる攻撃にあおられ、リッカはそのまま下へ落下するのだった。


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