◇0003_ギルド協会
朝、リバーデイルに存在する宿で1日目の朝を迎えた。
良く眠れたと同時に、ルリアが起こしてくれたこともあるだろう。
メイドとしては十分なくらいだが、基本的にルリアの主はアリスティアになるため、リッカの事をご主人様とは呼ばない。
メイドとしての責務を果たす義理は当然無いわけだが、ベッドにいつまでもねているのを見ているのも駄目な感じだったようだ。
安い宿なので、食事は昨日の売店で買ったパンを食べることになる。それなりの味だったが、すぐに食べ終えた後はすぐに村を出てグラスリムという街へ行くことになった。
その場所にギルド登録を可能とするギルド協会の支部がある。そこで、リッカとルリアが登録を完了すれば、魔物退治で大きな利益を得ることが可能になってくる。
登録条件は満たしているため、すぐに受付でギルドカードを発行できると言われる。
村をすぐに離れることになったのは少し惜しいことだが。
「グラスリムへ行く道のりはここから10キロ先。行くのは余裕ですね」
そう、ルリアが言っているわけだが、ただそう運命が簡単に自分たちを通してくれるわけがなかった。
グラスリムへ続く道のり。
その途中で二人は止まっている馬車を見かけた。
破壊されており、近づいて確認してみるとそこに怪我をした男性がいた。格好からして馬車を運転させている人だろう。馬の方は逃げたのかどこにも居なかった。
「どうしたんですか?ゴブリンに襲われたとか」
「いや、ゴブリンなら私は既に死んでいるはずだ。
相手は山賊だった。姫君を、さらって何処かに・・・・」
苦しそうに言う男性。
命に別状は無いが、その姫君というのが気がかりな事だった。
「人攫い。攫われた人はこの国の姫君。これは一大事ね、リッカ。さっさと山賊を皆殺しにして名誉を得ましょう」
「昨日の感動を返してくれ。そして思い出すんだ、自分たちは人類の殺戮に来たわけじゃないんだと」
「わかっています」
本当に昨日の言動はなんだったのか、理解に苦しむ言動になってしまった。
「ルリアが魔法による治癒行為で男性の傷を回復させる。
その後、彼をグラスリムまで送り届ける。
衛兵たちと話し合った時、馬車を襲った山賊の話を聞くのだった。
「最近になって腕のいい剣士が山賊となったという話がある。姫君が攫われたのは大変遺憾に思うが、これから先も、警備の隙をついて攻撃してくるだろう。
下級剣士上がりの連中が、そのようなことをするとは残念な話だ。
君たちも注意するといいだろう、敵はすぐ近くにいるのだから」
そう言われたが、その山賊については話を聞くことはできなかった。ここから先は国家警察の役目だと言っていた。
「つまりどういうことですか?私たちを一方的に」
「自分たちは立場上は一般人だから逮捕権なんて無いんだよ。実際に山賊をこの手で殺すことはできないことになってるんだろう。正当防衛以外の武力行使は認められないかもしれないな」
「何ですか、その面倒な話。個人的にはすぐに山賊を殺したいのですが」
「現実的に考えて、いくら相手が犯罪組織でもだ。たとえ依頼されていても殺人は殺人だから。こちらも捕まってしまうことになりかねない。仕方ない案件だな」
「納得ができませんけれど。姫様はどうなるんでしょうか」
「無事に助けられるのを祈るしかないな」
「・・・・いいえ、私たちも探すべきです」
「人の話を聞いていなかったのか?恐らく、この国法律上なら、ルリアがそんな事をしたらあの衛兵に捕まるぞ」
「ならばれなければいいだけの話です」
「・・・・ルリア、本当はお姫様に会いたいだけなんじゃないか?」
「ぎく」
分かりやすい奴だったが、それなりに彼女も興味のある話なのだろう。
宮廷で暮らしているはずのお姫様が山賊に攫われているのも重大だが、その事件に自分たちが関わる権利はないのは事実だ。
それはリッカが生きていた世界でも同じ。世界は割と狭く感じられるものだった。
「あの車掌が犯人・・?」
「そんなわけないだろう。ある意味、もう手遅れだけど。とりあえずギルド協会へ行こうか」
「姫様を助けることはできないんですね」
「多分、他の誰かが助けるだろうから。自分たちはギルド協会に行くほうがいいと思う」
なんとか出しゃばろうとするルリアを説得しつつ、ギルド協会の施設へ移動することになる。
街を歩き、ギルド協会の施設に到着する。
大きな入り口を通り抜けて、ギルド受付嬢が居るところまで行く。
「いらっしゃいませ。こちらはグラスリム・ギルド協会の受付です。認定ご希望の方ですね?」
「はい」
ほとんどカード入会、スマホの手続きとかそういうのと変わらないような気がする。
書類に目を通し、色々なチェックをした後にサインをする。
というか、まだ住所とかないのに登録できるものなのか不思議に感じられた。
しかし、本人の個人情報修得のためにと受付嬢に言われた後だ。
特殊な機械が現れ、顔や手をスキャンされることになる。
「ロードスフィアという機械で、対象の姿を全て記録する魔導器ですね。また、魔術カイロの詳細な写しを行うことができますから、住所確認以上のセキュリティを確保することができるそうです」
ルリアからの説明のおかげで納得できたが、割とハイテクすぎないか。
ロードスフィアの、複雑なリングが、本体である球体の周りをぐるぐると回転する。
その特殊な機械は、リッカとルリアの情報を全て自身の記憶装置に取り入れることになる。
スマホでいえば、フェイスIdの登録みたいなものだろう。それによって二人はグラスリムのギルド協会の何処かに存在するデータに記録され管理される対象になった。
「これで登録完了ですね。あとはこちらでカード手続きを行いますので、その席でお待ちください」
といった受付嬢は、そのまま奥へ移動していった。割と大変そうな仕事かもしれない。
リッカとルリアは、言われた通り椅子に座って待機することになる。建物の中は豪華な内装となっており、色々な人が賑わっている。
「ロードスフィアみたいな機械もよく分からないけれど、場所は中世風だし、ちぐはぐだな」
「機械ではなく、魔法器具、あるいは魔導器です。錬金術と魔法の複合技術であり、ギルド協会の全ネットワークを支える要になっていますね。詳しくは知りませんが、あと数百年経てばリッカ様の生前の世界、その国々のGDPをはるかに超える世界になる可能性があります」
「それって全く想像がつかないんだけど。やけに現実的な推測だな・・」
「現実ですから。とりあえず、まだ来ないのでしょうか」
「俺の経験上、ああいう手続きは妙に長いことが多い」
受付嬢を待ち続ける。ただ、こういったこともそう悪くはないが。やはり住所明細無しで通るのは納得できない感じだった。
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___ルリア