08 理由
「それで? ヨシュアたちがこの村に来た理由ってなんだ? 狩人として森で狩りをする分には、盗賊とか魔物とか、そこまで脅威を感じてないぞ?」
各町や村を順番どおりに巡っていてここにも立ち寄っているのか、なにか別の理由があるのか。
もてなせってことくらいしか聞いて……。ああいや、村長からは一目見ておけとしか言われてねぇわ。もてなせとすら言われてないな。それはオレが勝手にやったことだ。
「地図にも載ってないような森の村の近くに、魔物の巣があるらしいとの情報があってね。情報の出所は明かせないけれど信用できる筋からだし、冒険者はそういう調査依頼は嫌がるしね」
「ふーん……」
魔物の巣と聞いて、特に思い当たるものはない。
ゴブリンもオークも、森の中ではどこといわずそこら辺の適当な場所で出てくるから。
「昨日は村長に、森の魔物の分布に詳しい者の紹介と森の案内を頼んだんだよ。そうしたら、きみが」
巣というからには、相応の拠点があって、それなりの数がいるのだろう。
だが、魔物の分布はともかく、巣に当たるようなものは見たことがない。
洞窟とか、雨避けできる建物的なものも、一切ない。
それをそのまま伝えれば、4人とも考え込んでしまっていた。
考えの邪魔もしたくはないし、後片付けでもしようかと席を立ったところで、ヨシュアから声をかけられた。
「ひとまず、森の様子を見に行こうと思う。森での普段のきみの行動を見せてもらってもいいかい?」
狩りの様子を見せてくれというなら、そうしよう。
……その前に、馬の様子くらいは見ていけよ。森へは連れていけないし。
外へ出ると、もう馬は走っていなかったので、物置小屋へ案内すると、主人を出迎えるかのごとく立ち上がって気力に満ちた姿を見せる馬。
……この馬、名前はないのかな?
「ああ、元気そうでよかったよ。シルバー」
カティアが、馬の腹に頬を付けて撫でている。……が、馬は若干迷惑そうにしている気がするぞ?
「カティア、この馬の名は、ブランシュだといったではないか」
ミシェルはそういうが、馬はブルルッと鳴いて首を振っている。
なんか、そんな名前じゃないって抗議しているみたいだ。
「……で? ヨシュア、この馬の名前は?」
呆れも隠さずチームのリーダーに問えば、
「ユングフラウ号だよ。よその国の言葉で、銀とかなんとか。小さい頃に聞いたっきりで忘れてしまったけれど、その名前を引き継いだ二代目なんだ」
正解、とばかりに、嬉しそうにヨシュアにすり寄るユングフラウ。
表情豊かな馬だな。
……でも、森には連れていかないからな。足場悪いし。
それを伝えれば、小屋に戻ってごろーんと寝転がった。ふてくされているっぽい。
ワラぐらい敷いてやるからとアイテムボックスから麦ワラなんかを《出庫》して土間部分に敷き詰めれば、ワラの上に移動して寝転がった。
本当に、ものわかりの良い馬だよ。賢い。
「用足ししたかったら、鍵はかけないから自分で外に出てからしてくれ。小屋の中が臭うのは嫌だろ?」
馬の目を見て言えば、しっかりとうなずいていた。
「あれもしかしてこの子、人の言葉理解してるの?」
カティアが驚きの声を上げるが、これまでは、そんなことも分からないくらい疲れきっていたんだな、なんて思うと、ちょっと泣きそうになってしまうのだった。
「気のせいだと思っていたが……」
ミシェルも驚いている。
……てゆうか、二人とも。正式な名前とは違う名前で呼んでいたことに関して、なにか言うことないの?




