06 膝枕
家に戻ると、ちょうどヨシュアが風呂から上がるところで、次は誰が入るか? と三人娘が牽制し合っていたので、三人まとめて風呂に放り込んで着てる服をひっぺがす勢いで脱がせて、神聖魔法 《浄化》してたたんでかごへ。
なにやら騒いでいたが、お前らが入らないとオレも風呂に入れないんだよ。と言ったら、黙って体を洗い出した。手伝いは不要みたいなので、風呂から出る。
ヨシュアは、ソファに座ってぼーっとしていたので、部屋に放り込んでやろうかと思いはしたが、はちみつを垂らしたホットミルクを差し出すと、嬉しそうに飲んでいた。
その様子を見れば、年相応な少年でしかないが……。
貴族に生まれ《巡業勇者》に任ぜられた責務は、重くのし掛かっているのではないだろうか?
なんとなく、本当になんとなく。
ヨシュアの隣に腰かけて、肩をひっぱる。
ひっぱられて、オレのひざに頭を乗せたヨシュアは、きょとんとした目でオレを見つめている。
子守唄でも歌ってやろうか。
それとも、おなかぽんぽんしてやろうか。
少しだけ迷って、片方の手で頭を撫で、もう片方の手でヨシュアの手を握ってやる。
よーしよし、よーしよし。
小さな子どもをあやすように、優しく頭を撫でてると、きょとんとしたヨシュアの目も、とろんとしてきて、すぐに穏やかな寝息を立て始めた。
よーしよし、よーしよし。
今は、オレが世話してやれる今だけは、温かくて美味しい食事と快適な眠りを約束してやろう。
なんとなく、本当になんとなく。
けれども、強く、そう思った。
しばらくそのまま眠らせていると、カティア、ミシェル、フローラの三人も風呂から上がってくる。
で、こちらの様子を見るなり叫ぼうとしてるので、口に人差し指を当てて、しー、と黙らせる。
せっかくヨシュアが気持ち良さそうに眠ってるんだ。感情のままに叫ばれなくてよかったよ。
状況を正確に理解した三人がしょぼんとしてるので、手招きしてやる。
気持ち良さそうに眠るヨシュアを見た三人は、なんだかホッとした表情だ。
気になって小声で聞いてみれば、三人とも、質の良い睡眠をとれなくなってきていると感じているようで、困った様子だった。
「あたし、寝付きが悪くなってきたのよね……。目を閉じても、一睡もできないまま交代の時間になったりするし」
「私は、一時間ごとに目を覚ましてしまうようになったな。なので、最近は常に眠い」
「わたしは、眠りが浅くなりました……。ちょっとしたことで、すぐに目が覚めてしまいます」
カティアは寝付きが悪くなり、ミシェルは短い時間で目が覚めてしまい、フローラは眠りが浅くてすぐ起きるようになったか。
……んー……。
「なあ、上手くいくかは分からなけれど、これ代わってくれたら、寝かしつけてみるぞ?」
そろそろ足がしびれてきたので、代わってもらおうかと提案したら、
「……っく!? なんて、魅力的な提案……」
「ヨシュアに膝枕してあげるか、気持ちよく寝られるようにしてくれるかなんて、まさに、究極の二択……」
「……軽々に選べませんね……」
苦悩する三人を見て、それほど不眠が深刻な悩みだということを教えられた気分。
それならばいっそ、ヨシュアを寝室に運んで、それから三人を順番に寝かしつけるって方向で提案してみたら、速攻で話が通った。
それほど深刻だったんだ、不眠。




