05 食後の時間
4人に食後のお茶を淹れると、遅まきながら自己紹介をすることに。
「おれはヨシュア。剣と火の魔法が使える。一応侯爵家の三男ということになっているけれど、庶子だから継承権は無いようなものだし、気にしなくても大丈夫だよ」
赤い髪の少年は、そう言って握手を求めてきたので、応じる。
微笑んでいるようだが、目のクマがひどくて口もひきつっているようにしか見えない。
「ヨシュアの親戚のカティア。槍と火の魔法が使えて前衛遊撃担当よ。うちの家はヨシュアの侯爵家の分家の中でも下っ端なんだけれど、ヨシュアとは同い年なこともあって小さい頃から一緒に育てられてきたの」
長い赤い髪をポニーテールに結っている少女が、謎のアピールをしながら勝ち誇ったような表情を……してるつもりなんだろうなぁ……しようとして、獰猛な獣のような表情になっていた。
「伯爵家の次女、ミシェル。剣と盾が得意だ。前衛の守りを担当している。ヨシュアとは領地が隣同士で幼い頃から交流がある」
短めの金髪の少女は少し年上なのか、大人びた雰囲気ではある。そして、立派なお胸をお持ちだ。が、やはり牽制するような視線を向けてきている……つもりなんだろうけど、眠そう……。
「教会所属の僧侶、フローラと申します。神聖魔法を得意としています。侯爵家の領地にある教会で、捨て子として拾われ育ててもらいました。みなさんとは《巡業勇者》として任命されたときから旅に同行しております」
法衣姿の長い青髪の少女は、他の三人よりは疲労度がましに見える。が、やせ我慢だってのは、見てればすぐに分かるくらいには、疲れきっていた。そして、一人だけ過去が重い。
「おれたちは、侯爵家や伯爵家、配下の貴族たちの領地を馬車で巡り歩いて、魔物の討伐などの活動をしているんだ」
「…………御者も無しで?」
「……ああ、交代しながら、自分達でやってきた」
「夜はどうしてたんだ? 宿に泊まってたんだよな?」
「道中、宿がない場所もあったから、交代で夜番をしたよ」
ふと気がついたオレの質問に、赤い髪の少年ヨシュアがしみじみと答えた。疲れをにじませながら。
三人の少女たちも、そのときの苦労を思い出すように頷いていた。ヨシュア同様に、疲れをにじませながら。
「……分かった。お前らもう風呂入って寝ろ。沸いてるから」
「いや、あの、おれたちは、調査と魔物の討伐にこの村に」
「いいからさっさと風呂入れ。そしてしっかりと休め。着替えはないから、着てる服を綺麗にしておいてやる。それで我慢しろ……ほら、ヨシュア、お前から先にいけ!」
じゃないと、また牽制合戦が始まるだろうからなっ。
ヨシュアを風呂に放り込んで、着ていた服を神聖魔法の《浄化》できれいにしてから、たたんで衣類かごに置いておく。
次は、三人娘から馬車を引いていた馬のことを聞いてみるが……。
……なんというか、ひどい。
いや、ひどいというか、世話の仕方もろくに教わることなく旅に出るはめになったようで、水とそこらの雑草で生きていけると教えられたとの返事が。
いやお前ら、ぶっ○すぞ。馬だって生き物なんだから、雑に扱っていたら動けなくなるぞ?
と言いたくなったものの、そもそもの知識がなければ、そういうものかと思い込むこともあるのかもしれない。
役に立たない三人娘には、風呂の順番まで休んでろと声をかけて、馬車の様子を見に外へ。
馬房なんて立派なものはこの家にはないけれど、馬に声をかけてから馬車から外して、物置小屋の土間に案内する。
「ここでいいか? 狭くてごめんな?」
馬だから、返事なんてない。
けれど、言葉はしっかり理解しているようで、従順でとてもおとなしい。
きっと、よく調教されているだけでなく、気性が穏やかで優しく辛抱強い、良い馬なんだろうな。
きっと、大変だったろう。ご主人様たちと同じように、とても疲れているのではと思ったが、そんな様子は見せずただオレをじっと見つめていた。
「大したことはしてやれないが、水と、新鮮な野菜は用意してやれる。たくさんお食べ」
回復魔法 《ヒール》をかけてやってからアイテムボックスから木桶を二つ《出庫》して、水と野菜を桶に入れてやる。
顔を撫でてから、ほら、遠慮するな。と声をかければ、こちらも勢いよく野菜を食べ、水を飲んでいた。
「なにかあったら、鳴くなり壁を蹴るなりして知らせてくれ」
そうこうしているうちに、水がなくなりそうだったので、水を足してやってから物置小屋から出る。
念のためと馬車の様子を見てみれば、車輪に亀裂が入っているようだったので、修繕魔法 《リペア》をかけて、馬車の中も神聖魔法 《浄化》で綺麗にしておく。
盗まれるようなものもないし……というか、生活していくための荷物がほとんどない。毛布と背負い袋くらいしか。
盗賊だって、この状況を見たなら、見なかったことにして立ち去りそうだ。
ヨシュアたちがこれまでどんな旅をしてきたか、どれほど苦労してあんな疲れきった様子なのかに思いを馳せて、家に戻った。




