04 ご案内
「ここがオレの家だよ。さあ、入ってくれ」
太い丸太を組んで作られた頑丈な塀で守られた村から出て、徒歩数分。
木製の柵で周囲を仕切られただけの住宅。
庭付き一戸建てと聞けば、憧れている人もいるかもしれないが、ここは、魔物が出る危険な森の中で、簡素な柵で仕切られているだけで、守りには不安を覚えてしまうことだろう。
けれど、ここは、この土地は、生前術士だった母が、家族で安全に過ごすために結界を張った場所だ。
魔力を注ぎ込めば結界を維持できるが、オレが15歳になり成人になると、結界は役目を終えて自壊するようになっているという。
それまでに村を出て自立しなさいというのが、両親の遺言で、それだけがオレが無事でいるたった一つの手段なのだという。
オレが15歳になると何が起きるのか、今のオレには分からないが、今は4人のお客をもてなすことが大事だろう。
「腹減ったろ? まずは夕食の仕度をするから、装備を外してくつろいでいてくれ」
で、すぐに気づく。
4人とも、なんか戸惑ってる。
戸惑うのは何が理由かを少し考えて、外した装備をそこら辺に放り投げておくような育ち方はしてないんだなと思い至り、先に部屋に案内することにした。
「すまない。先に部屋に案内するよ。二階が客間になってて、一部屋二人ずつ四部屋ある。部屋の中はどこも同じだから、好きに使ってくれ。掃除は数日おきにしてるから、綺麗だぞ。田舎基準だけど」
「いやすまない、助かるよ。……まだ、きみの名前も聞いてないのに」
4人の中で唯一の男、赤い髪の少年が、疲れきった顔で申し訳なさそうに言ってくる。
「そういうのは、あとにしようぜ。まずは、食事の用意するから、装備を部屋に置いたら下りてきてくれ」
言うだけ言って、さっさと下りて食事の仕度に取りかかる。
あんな疲れた様子の人たちに食べさせるのって、なにが良いかな?
ガツンと腹にたまるスタミナ飯みたいなのは避けるか。
でも、肉は外せないよな。それと、栄養バランスも一応考えてと。
麦と雑穀とみじん切りにした野菜を炊いて溶き卵を回し入れた雑穀雑炊、牛乳とオーク肉のウインナーが入った具だくさんの白いシチュー、酢と塩で味付けされた山菜の和え物、カットフルーツのはちみつヨーグルトソースがけ。
あと1品付けたいと思ったけれど、彼らがどれだけ食べるかも分からないし、足りなかったらお代わりしてもらおう。
丸テーブルにどう座るかで視線を交わし合って……牽制し合って? ……いるうちに、赤い髪の少年の正面に長い青髪の法衣姿の少女が座ったことで、席順は決まったようだ。
できあがったばかりの料理を彼らの目の前に配膳すれば、視線は料理に釘付けに。
「さあ、召し上がれ」
食前の祈りもあわただしく終わらせて、最低限の礼儀作法は維持しながらも、がっつくとかそういう言葉がしっくりきそうな勢いで食べる彼ら。
なんとなく、ここしばらくはまともな食事をしてなかったんじゃないかと思えるくらい、勢いよく食べているのを見て、なんだか可哀想になってしまった。
「美味しい……美味しいよう……」
「こんなに美味しいシチュー、どれくらいぶりだろうか……」
「雑炊も、優しいお味で美味しいです」
「どれも美味しいな。山菜の苦味まで美味しく感じる」
国内各地を巡って、ちょっとした困り事から魔物の討伐まで行う《巡業勇者》の、忙しすぎてろくな食事を摂れていない様子に、本当に不憫に思えてしまう。
せめて、今だけは。この家に滞在している今だけは。
美味しいものをたらふく食べさせてあげようと思った。
「お代わりあるから、遠慮なくどうぞ」
4人全員が、それぞれ気に入った料理をお代わりするのを見て、母親はこんな気分だったのかな? と、故人を偲びつつ微笑ましい気持ちだった。
たくさんお食べー。




