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魔王遁走曲  作者: マゲス1世
3/4

魔王遁走曲 第3話 兵士たちの練習曲

キャラクター紹介


アルマ 本名、ウラヌス・アルマゲドン

:本作の主人公

 父親から戦いのイロハ、魔法、剣術を教わり

 軍へと入隊する。

 得意な魔法は炎魔法


アルタ 本名、グレン・アルタブラ

:大剣を軽く振り回す怪力を持つ青年

 アルマとの同期であり1番の親友、アルマを 

 若干ライバル視している

 得意な魔法は炎魔法


ローズ 本名、ラピスライト・プリムローズ

:アルタの幼馴染

 アルタと同じく軍学校を卒業しており実力は

 エリートクラス。

 アルタの世話焼き。

 得意な魔法は回復と土魔法


クリム 本名、レビリム・クリムハルト

:9番隊の隊長

 最年少で隊長まで登り詰めた、正真正銘の天

 才。

 実はリッカと付き合ってる


リッカ 本名、リッカ・ゴルトベル

:9番隊の副隊長

 クリムより年上で入隊も先だが、上司である

 クリムには逆らえずいつも面倒を被っている

 自分の名前が嫌い


遠い昔、どこかの世界で、とある二人の英雄がいた。


一人は己が信じる正義のために...一人は己を信じる仲間のために...。


そして彼らは、同じ未来を信じその身命を賭して戦った。


たとえ敵が、英雄(とも)であったとしても...。




彼らの運命(さだめ)は変わることはない...。




第3話 兵士たちの練習曲(エチュード)



チュチュッ、チュチュン…。


小鳥のさえずりが響く早朝、3人の若き兵士たちは練習場へと集まっていた。


「クソぉ…。なんだってこんな朝早くからレンガ積まなきゃなんねぇんだ。」


「あんたがアルマ君を壁まで吹き飛ばすからでしょ!」


文句をいいながら作業するアルタに呆れながら、ローズは言った。


「あはは…俺がもう少し踏ん張ることができれば、こんなことにはならなかったんだけどね。もっと鍛錬しなきゃ…。」


そう言い微笑むアルマを見てアルタは作業の手を止め言った。


「そうだぞ!アルマ!俺としっかりコンビ組めるように強くなるんだぞ!!」


「あんたこの前アルマ君に負けたじゃない…。」


その後も談笑が続き、他の兵士たちが起きる頃には新しいレンガ製の壁が9番隊屯所に出来上がっていた。


「おぉ〜…!」


3人は初めて作ったにしては立派に出来上がった壁を見上げて、感動していた。すると…。


「へぇ〜。よく出来てるじゃないか!」


後ろから突然、隊長のクリムが話しかけてきた。


「うぉっ!ビックリした…。なんで()()()()、こっそり脅かすみてぇに背後から話しかけてくるんっすか!?」


以前にも、リッカに同じことをされたのを思い出しながら、アルタは声を荒げた。


「まぁまぁ…。そんなことよりお前ら、ケガもすっかり回復したようだし、とっておきをプレゼントしてやろう!」


「とっておき…?」


内容が気になったアルマは、クリムに聞き返した。


「まぁとりあえず、俺について来い。歩きながら話してやるよ…。」


言われるがまま、3人はクリムについて行った。


「さてと…プレゼントは2つある!」


「2つも!!やったぜ!」


中身も知らずに、()()()()()という言葉だけでアルタは大喜びした。


「まず1つ目!お前らに、隊から武器をくれてやる!好きなもんなんでも使え!!」


「おお!」


案外ちゃんとしたプレゼントで、ローズは安心した。


「今俺等が向かってるのは武器庫だ!少し時間をやるから、しっかりと選ぶんだぞ。」


「では隊長、もう1つのプレゼントはいったい、なんなんですか…?」


もう1つの内容が気になってしかたがないアルマは、クリムに尋ねた。


「さて…なんだろうな?」


不敵な笑みを浮かべながらクリムは答え、続けざまに言った。


「とりあえず、武器を選べ。続きはそっからだ…」


そう言い、クリムと3人は立ち止まり、眼の前の扉を見つめた。


「ここが武器庫…。」


物々しい木製の扉を前にして、3人は息を飲んだ。


ギィ…。


音を立てながら扉が開き、クリムは言った。


「さぁて、お前らのお気に入りは見つかるかな?」


「おおぉ…!」


3人の目には、大量に保管された質のいい武器たちが映った。


「すげぇ…!こんなに武器あんのかよ!!あっ!こいつはいいや!俺好みの大剣だぜ!!!」


「本当にすごい…このソードなんてしっかり磨かれてるからなのか、鏡みたいに輝いてる…!」


「う〜ん…私はあまり武器の良し悪しわからないのよね…。せめてちょうどいいグローブがあればいいんだけど…。」


ブツブツといいながら脇をチラリとみたローズは、とある物を目にした。


「これ…ガントレットだけど…。サイズ的に私にぴったりかも…!それに装飾もカワイイ…!!」


それぞれがお気に入りの武器を見つけ、目を輝かせている姿をクリムは微笑みながら見つめていた。


「それじゃ、お前らも良さそうだな!」


ソワソワしている3人に向かってクリムは言った。


「よし!武器も選んだことだし、次の話に移ろうか!」


「2つ目のプレゼントっすね!?」


アルタは嬉しそうに答えた。


「そうだ!2つ目は…。任務だ!!」


「にっ…任務ぅ…?」


()()という言葉にローズはがっかりしたが、アルマとアルタはそうではなかった。


「よっしゃあ!任務だぜ!!」


「腕がなるね…!」


「ふふっ!お前らなら喜ぶと思ってたぜ…!」


大はしゃぎで目を見合わせる2人を見て、ローズはため息をつきながら言った。


「なんであんたらはそんなにはしゃげるのよ…。」


「よし、まずは大まかな任務内容だが、最近、とある村の外れにある森でグリーンゴブリンが目撃された。」


3人は初任務の内容に集中した。


「グリーンゴブリン…群れを成して集団で行動する魔物…。一定の縄張りや住処を持たない性質か、たびたび人が住む地域に現れる厄介なやつ…。」


アルマは冷静に魔物の情報を話した。


「その通りだ。そのグリーンゴブリンの討伐をお前ら3人に任せたい…できるな?」


「もちろんっすよ!」


「はいっ!」


「ちょっと心配だけど…いけるわよね!」


3人の返事を聞き、クリムは笑みを浮かべながら頷いた。


「よし!そうと決まれば、早速行ってこい!詳しい地図などは受付からもらえるぞ、健闘を祈るぜ…!」


それを聞いた3人は足早に受付へと行き、出発準備を済ませた。



「よっしゃ!初任務だぜ!!」


「でもどうやって任務地まで行くのよ…。それにもらった地図も、その村と周辺地域のだし、どこに向かえばいいのかさっぱりよ!」


そう言えばと、目的地までの行き方を聞いていない3人は、慌て始めた。その時…。


「お困りですか?」


「うわぁっ!…って、またあんたかよ!!」


背後から突然、副隊長のリッカが話しかけてきた。()()驚かされたアルタは、冷や汗をかいた。


「どうやら任務地までの行き方を聞いてこなかった…。いえ、教えてもらえなかったようですね。」


驚くアルタを無視してリッカは続けた。


「任務地が遠方の場合は、転送魔法陣より最寄りの街までテレポートするといいですよ。そこから歩きでも馬車を雇うでも、お好きにしてください。ただ、馬車を使う際は一度軍に申請しないと費用が降りませんので気を付けてください。そして…。」


「な…なぁ…。まだかかるんすか…?」


長い説明にしびれを切らしたアルタは思わず口にした。


「あぁ〜…もう!リッカさん、大丈夫です!このバカは放っておいて。私がちゃんと聞きますから…。」


「…。」


無言の圧を感じたローズは、うまくその場をおさめた。


「…。以上が任務の説明になります。それではご健闘を。」


「ようやく行けるぜ!」


「うん!ここからだね…!」


「本当…ほんとにうちのおバカがすみません…!」


そう言い3人は、リッカに屯所の転送魔法陣まで連れられて行き、任務地の一番近くの街、『スプリングス』へと旅立つのだった。



シュインッ!


「…ん?うおぉ!すげぇ!本当にワープしやがった!!」


「ほんとに一瞬だったね…。」


「ここがスプリングス?すごーい!お花のいい香り…!」


突然見えていた景色が変わり、3人は大はしゃぎした。


「きましたね…。あなたたち3人はグリーンゴブリンの討伐任務の方たちですね?」


「あなたは…いったい?」


「急に話しかけてしまい申し訳ありません。私はスプリングス駐在部隊の部隊長、レオン・アーセナルと申します。以後、お見知りおきを…。」


「は…はぁ…。」


「うっす!よろしくお願いしますっ!えとー…レオンさん!!」


「お願いします。俺はアルマです!」


3人はそれぞれレオンと握手を交わした。


「駐在所は好きに使ってもらって大丈夫ですからね。任務地までは少し距離があるので、うちの馬車を使ってください。そこまで難しい任務ではないと思うので、日が沈む頃には帰ってこれるでしょう…!」


「何から何まで…。ありがとうございます!」


そう言いアルマは深く頭を下げた。


「いえいえ、それでは出発と参りましょう。御者は手配していますので、あそこの馬車に乗り込めば任務地まで2時間程度でつきますよ!」


「よぅし!それじゃいってきまーすっ!」


レオンに意気揚々と手を振り、3人は目的地へと向かった。



「兵隊さん、着きましたよ〜。」


そう言われ、3人は馬車を降りた。


「すぅっ…。ぷはぁ〜…空気がうめぇなぁ!」


「ここが任務地…グリーンゴブリンが頻繁に目撃されている場所…!」


「もしかしたら近くにいるかもしれないわね…。警戒していきましょ!」


そう言い3人は、武器をかまえて周囲を見渡した。


「それにしてもよぉ…静かじゃねぇか?群れで動いてんならもう少しうるさくてもいいんじゃねえのか?」


アルタのつぶやきを聞き、アルマはハッとした。


「アルタ!周囲をしっかりと警戒してくれ!もうここは…俺らは…!」


アルマが最後まで言い終わる前に、アルタの眼の前の草むらがガサッとうごいた。


「俺らは囲まれてるんだ!」


「キシャーッ!」


独特の叫び声を上げて、3人の周りにグリーンゴブリンたちが飛び出してきた。


「こいつら…待ち伏せもできんのかよ!」


そう言いアルタは、飛びかかってきたゴブリンめがけ、大剣を振り下ろした。


ドゴッシャア!


「アルタ!前は任せた!」


「お前もよぉ!背中預けたぜ!!」


2人はお互いを鼓舞しあい、敵を蹴散らしていった。


「もう!私だっているんだから、あっ!アルマ君!危ない!!」


隆起する大地(ガイア)!」


メキメキ…ドゴンッ!


ローズが地面に手をつき、魔法陣を展開するとアルマの後方にいたゴブリンの地面が盛り上がり、ゴブリンを宙に飛ばした。


「援護は任せて!2人は眼の前のやつに集中するだけでいいから!!」


自信満々にローズは答えた。


「へっ!やっぱローズがいるのといねぇのとじゃ、戦いやすさが違うぜ!…オラァ!!」


ドゴーン…。


「ちょ…///。なっなによ、急に褒められたって何もでないわよ///!」


そんなやり取りをしている2人を、アルマは黙って見つめた。その時…。


「…っ!ローズさん!危ない!!」


1匹のゴブリンがローズめがけ、飛びつこうとしていた。


『まずい…このままじゃローズさんが!』そう思ったアルマは魔法を撃とうとした…しかし。


「はぁぁぁっ…!!」


ドゴムッ!


鈍い音が響き、ゴブリンは吹き飛んでいった。


ポカーンとしているアルマをよそにローズは言った。


「やっぱりこのガントレット使いやすいわね!手も全然痛くないし!」


いまだ唖然としているアルマにアルタが近づき、コソコソ言い始めた。


『なっ…?ローズを怒らせるとやばいから、お前も気をつけろよ…!』


『う…うん…。そうみたいだね…。』


そう言い3人は、残りのゴブリンも難なく片付けた。



「…よぅし、やっぱしすぐ終わったな!俺らはともかく、アルタがいたからだな!」


「ふふっ!そうかもね。」


「俺も2人との初任務いろいろ分かったこともあって楽しかったよ…!」


そう言いながら3人は帰る支度をしていた。


「ん?おいアルマ、気付いたか?」


「うん…何かがこっちを見てる…。これは敵意…?」


直前の戦いで感覚が研ぎ澄まされた2人は、何者かの気配に気づいた。


「え?なになに?ふたりともどうかしたの?」


そう言いながらローズが2人に近づこうと立ち上がった時、森から一つの影が飛び出してきた。


「…っ!?なんだぁ!こいつ!?」


「あれは…狼!?それにしても…デカい…!」


「え…えぇ〜…?こっち来ないでぇ〜!」


突然の出来事にうろたえるローズの前に2人は咄嗟に飛び出した。


「ウゥォオオーン!」


2人の前に飛び出してきた狼は威嚇のように遠吠えをした。


「クソッ…!オラァ!かかってこいよ!!」


アルタは負けじと腕を高く上げて身体を大きく見せることで、狼を威嚇した。


「このまま逃がせば、近くの村やそこで待機するように言った馬車が危ない!しかたないけど討伐するしかない!」


そう言いアルマが狼へ剣を振り下ろした。しかし…。


ザスッ…。


「躱された…!」


素早い身のこなしで、狼はアルマの攻撃を躱した。


「グルルルル…。」


ザッザッザッ…。


「なっ…!?逃げやがった!」


急に狼は目的を果たしたかのようにスタスタと森へ帰っていった。


「チィッ!逃がすわけねぇだろうが!」


焼き尽くす炎(アッシュ・ファイア)…』


「まて!アルタ!こんなところでそのクラスの魔法はマズい!!森を燃やす気か!」


やけになって威力の高い魔法を撃とうとしたアルタを、アルマは咄嗟に止めた。


「くっそぉ〜…!このままみすみす逃がしちまうってのか!」


「しかたないよ…ここは一旦もどって報告したほうがいいかもしれない…!」


「あっ…あの狼…。いったいなんだったのよ…。」


腰を抜かしてしまい自力で立てないローズに、2人は手を貸してあげた。


『あの狼…クレイウルフ…。でもなぜここに?』アルマは心のなかで生じた疑問を一度飲み込んで言った。


「村に戻ろう。馬車も待ってるだろうし、報告しなきゃいけないことも増えた…。今日は一旦休もう…。」


「そうだな…」


「もぉ〜!地面に座り込んじゃったせいでズボン汚れちゃったんだけど!!汗もかいたし早くお風呂入りたーい!!!」


そう言いながら3人は近くの村まで行き、馬車でスプリントへと戻るのだった。



コンッコンッコンッ!


駐在所の隊長室のドアがノックされた。


「はい。どうぞ…おや?あなたたちでしたか!…どうやら、相当頑張ってきたようですねぇ。」


少し笑いながら言ったレオンの目には、汚れが身体のあちこちで目立っている3人だった。


「お疲れ様です。討伐証明用のウツシエは撮ってきましたね?」


「はい…。」


へとへとな3人は、元気のない返事をした。


「フフフッ…!本当に頑張ってきたのですね!部屋は用意してありますから自由に使ってください。それにこの駐在所の近くに美味しい料理を提供する酒場があります。初任務祝として、私がご馳走しましょう!」


「め…飯…。」


「それよりもレオン隊長…。報告したいことが…。」


アルマが謎の狼のことを伝えようとした時、レオンが口を遮った。


「報告はあとにしましょう、アルマさん。あなたはまだ大丈夫かもしれませんがお二人は…どうでしょうか…?」


「あっ…。」


ぐったりとしている2人を見たアルマは、大人しくレオンの言う事を聞いた。


「フム…夜までまだ時間があります。あと3時間といったところでしょうか?その間、ゆっくりと休んでください…。」


「分かりました。ありがとうございます!」


そう言い3人は、各々の部屋へと向かいそれぞれの休み方で休息を取るのだった。



ドンッドンッドンッ!


寝ていたアルマを、重く鈍い音が起こした。


「お〜いアルマァ!そろそろ時間だってよ。受付前で集合だってさ。」


「…うん。先に行っててくれ…。」


重いまぶたをこすり、アルマは着替えをし受付のあるロビーへと向かった。


「おっ!きたきた!行こうぜアルマ!!」


「ふーん、アルマ君の私服ってそんな感じなんだ…。意外とイケてるじゃない…。」


「私は一応、まだ勤務中ということになってるので、軍服での参加です。みなさんそれぞれ個性がでていて素敵ですよ!」


3人はお互いのファッションを見たり、見せあったりして、おどろいたり感心したりした。


「それでは酒場へ向かいましょうか。すぐ近くなのでついてきてください。」


スタ…スタ…スタ…スタ…。


4人は駐在所を出てすぐの大通りにある酒場へと入っていった。


カラーン!カラカラーン!


ドアが開くと、聴き心地のいい鐘の音が響いた。


「おおぉ…!」


3人は初めて入る酒場に興奮し、年相応にはしゃいだ。


「ここが酒場…!」


「すげぇ〜!めっちゃいいにおいすんぞ!!」


「見て見て!あのグラスカワイイ〜!…あっ!店員さんの服も超カワイイ〜!!」


「フフッ!喜んでもらえたようですね。さあ、こちらに私達のテーブルがありますよ。」


そう言われ案内されたのは、街を一望できる屋上のテラス席だった。


「さて、なんでも好きなのをたのんでいいですよ!ここの料理は全部美味しいですからね。」


「注文が決まったらどうすれば…?」


「そこのベルを鳴らしてください、このボタンを軽く押せば鳴りますよ。試しに呼んでみますか。」


チーン!


「ご注文でしょうか」


「早っ!すげぇ、俺こういうところ初めてだからワクワクするぜ!」


「私もっ!何たのもうかなぁ〜!」


「ははっ!本当に楽しいね!!」


3人はワイワイと自分の注文を決めていった。



少し時間が経ち、4人の料理がテーブルに届いた。


「すっすげぇ…俺、こんなにうまそうな料理見たことねぇ…。やべっ、よだれ出たっ…!」


「いい香り〜!早く食べましょっ!」


「俺、お腹すいちゃったな…。」


「それでは、いただきましょうか。恵みを…。」


「ん?なんすか?それ??」


独特な食前の挨拶をしたレオンを、アルタは不思議そうに見つめた。


「これは、エルフ流の食前のあいさつです。すべては大地から授けられるというエルフの考えから来ています。いわば感謝を伝えているわけですね、この大地に…。」


「へぇ〜…いいっすね!それ!」


「恵みを…!」


3人も食前のあいさつをすまして、食事をはじめた。


「うんめぇ〜。この肉、ほんとにジャイアントボアの肉かよ!」


「ん〜!このシーサーペントのフリットもおいし〜!!この辛いソースと合うわね!」


「聞いたことのない異国の料理だったから頼んでみたけど…美味しすぎる…!ブラックオクトパスのポンポンヤキ…中にライスが入ってる…!」


モグモグ…アハハハ…!


3人は談笑しながら食事を進めた。そんな3人を微笑みながらレオンは見ていた。


「そういえば、レオンさんってなんの武器を使うんですか?」


話が弾み、ローズがレオンに質問した。


「私ですか?私はレイピアを使います。あとは植物系…特に花の魔法を何個か…。」


「へぇ〜。たしか駐在所の周りもお花のいい匂いがしてましたけど、レオンさんもいい香りですよね!香水ですか?」


ローズは質問を続けた。


「いえいえ!私は花が好きでしてね。スプリングスで産まれ育ったので沢山の花を駐在所で育てているんですよ。スプリングスは、風と花の都ですからね!」


そう言いレオンは、手のひらに魔法で花を出してみせた。


「初めて見るタイプの魔法だ…」


「それ!どこで教わったんっすか?」


レオンの使う魔法に興味津々な3人は質問した。


「これは…私に魔法を教えてくれた人が教示してくれたんです…!とても美しい人でした…。」


そう言いながらテーブルに置いてあるロケットペンダントの上に手をおいたレオンを見て、3人は気まずそうにした。


「そういえば、アルマさん。報告したいことがあると言ってましたね。いったいなんだったのでしょうか?」


「あっ…そうだった。えと、俺ら任務が終わった後、奇妙な狼に出会ったんです。」


アルマは日中出会った狼のことをレオンに話した。


「ほう…?狼ですか…。」


「そうなんすよ!茶色くて、身体がデカくて…。そんなんだったよな?」


「うん…。特徴的にクレイウルフだと思うのですが…。」


「おかしいですね…。この地域一帯に出る狼の魔物は、グロウウルフだけです。グロウウルフも大きい個体はいますが、さすがにそこまでの大きさは見たことがないですねぇ…。それに毛色も茶というのが気になります…。」


「そうなんです…なので、なぜクレイウルフが本来の生息地である湿地帯などではなく、あの森に出現したのか…。」


日中、アルマを悩ませた疑問をアルマは投げかけた。


「…そういえば、1ヶ月ほど前にも似たような狼に荷物を載せた馬車が襲われたという報告があった気がします…!一度帰って調べる必要がありそうですね…。」


そう言いレオンは立ち上がった。


「レオンさん!ごちそうさまです!!」


3人は元気よくレオンに感謝を述べた。


「はい。こちらも楽しい食事でしたよ。」


会計を済ませて、4人は駐在所へと戻った。


「それでは、私は例の狼についてなにか情報がないか調べてみます。今日はもう遅いので駐在所に泊まっていくといいでしょう…。調査結果がでたら、9番隊へ報告しますので数日待っててください。」


「はい!分かりました!」


そう言い3人は部屋に戻り、気絶するかのように就寝した…。






次回! 魔王遁走曲


第4話 Raise Your F(狼煙を上げろ)lag


ローズ「レオンさんってかっこいいわよね!大人の余裕があるっていうか!」

アルタ「分かるぜ!ダンディだよな!!」

アルマ「イケオジってやつだね…。アルタは年取ってもあぁはならなさそうだけど。」

アルタ「うっせぇ!!」





魔王遁走曲 第3話 おわり

新キャラ紹介


レオン・アーセナル

:元9番隊副隊長、故郷のスプリングスの駐在

 所に配属されてからは故郷を守るため奮闘す

 る。年齢は48歳。独身。

 彼をよく知る人からは「お人好し」、「人たら

 し」と言われるほど、優しく誰からも愛され

 る。

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