#15 カイト剣を買う
50000セルと言えば大金である。
ノベル知識ではそんなに大金ではないのだけども、大お貴族様が住んでる世界が違うのだ。
これがあればなんでも買えそうな気持ちになる。
アルフレッドは50000セルだけでなく高価な本も貸してくれた。
貴族なのにルーン文字しか文字が書けないのは問題だろうと、読み書きの基礎の指導本だ。
基礎の本と言っても飾り木(表紙)がついた重厚な本でこれ一冊で10000万セルは下らないから丁寧に扱えと脅された。
本って高いのね。農家の家になかったはずだ。
貴族なのに読み書きが出来ないのははっきり言って《《かなりまずい》》のでありがたく受け取ることにした。
この本のおかげで僕の日課は決まった。読み書きを覚える事だ。
しかし、チラ見したけど、サッパリ分からん。誰か講師が必要だなこりゃ。
読み書きの事は一旦置いて、武器が欲しいよね。貴族だし帯剣しないと様にならない。
そんな風に考えつつ一階の商店に向かう。
一階には様々な品があるが、武器らしきものはロングソードが一本と弓が何挺か壁にかけられているくらいだった。
「カイト様は武器をお探しでしょうか?」
悩んでいると店主のドムスがにこやかな顔で声をかけてくる。小太りの金髪男性だ。
「身を守れるものがあった方が良いと思ってね。」
「ここに出ているのが全てではないので、探せば在庫があるとは思いますが・・。うちの武器はこの街の鍛冶屋ランベルが作っております。直接行かれるのが良いかもしれません。」
「ランベルさんの鍛冶屋はどこにあるの?」
「裏通りですな。アクセルに案内させれば良いでしょう。」
そういうと、店の従業員にアクセルを呼んでくるように命令する。
しばらく店の中を見ているとアクセルがダイニングで会った女の子を連れてやってくる。
「なんだ出かけるのか?」
「カイト様をランベルの所に案内してやってくれ」
「俺は小間使いじゃねぇんだけどな」
「カイト様の護衛を兼ねてるんだ。ちゃんと働け」
「へいへい」
アクセルはそう言うと外へ歩き始める。
その後ろを半狼人族の女の子が追いかけていく。
「着いてこいよ」
振り返らずアクセルは言う。
カイトは慌ててその後を追いかけた。
「お兄ちゃんの名前はカイトだったっけ?」
アクセルの後ろを歩く女の子が振りむく。
「そうだよ。」
「私はビアンカ。パパのあいじんなんだ」
「えっ愛人?!」
「そっ!あいじん」
「バカな事言うんじゃねぇ!」
アクセルが思わず立ち止まって怒る。
「パパなのに愛人なのか?」
「あいじんだから貢いでくれてるの」
「愛人って意味知ってて言ってるのか!」
アクセルが再度怒鳴る。
「フフフっ だって美味しいご飯も食べさせてくれるし、可愛い服だって買ってくれるんだよ。
それってあいじんでしょ。」
「娘を愛するのは親だったら当然じゃないかな」
「パパは本当のパパじゃないから。」
ビアンカは明るくそう言った。
「えっ?」
「あーあー。そうだよ。お前は俺が拾ったんだ。自分の娘でもないのに育ててるんだから、愛人かも知れねぇな。いったいどこでそんな言葉を覚えたんだ。」
呆れた声でアクセルが言う。
「私もパパ大好き。だからパパも私の愛人」
「へいへい」
「そうだったんですね。」
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裏通りは寂れていた。
金が動く所にはその金を目当てに人が集まる。
だけど、多くの場合その収入は不安定になる。
貧しい農村から逃げ出した者、追い出された者がやってくるが、安定した収入を得られるかは運とその人次第だ。
だから街は自然と治安が悪い場所が出てくる。
鍛冶屋がある裏通りはそういう治安があまり良くない場所にあった。
歩く人の半狼人族の割合が高いのも目につく。
「この辺りは痩せぐれた奴が多いから気をつけろよ」
アクセルがつぶやく。
「半狼人族の人の割合が高いですね」
「仕事の多くは人間族が仕切ってるからな」
「神の最初の使徒と言われる英雄アーノルドは半狼人族なのにその半狼人族を差別ですか・・。」
英雄アーノルドは半狼人族これはラノベ知識ではなく、真聖教の一般常識の知識である。
半狼人族であるアーノルドは奇跡とも言える魔法で狼人族に虐げられていた人々を救い、それが狼人族をこの地から追い出すきっかけになった。
アーノルドが英雄とか、最初の使徒などと崇められるのも頷ける。
「差別とはちょっと違うかもな。まあ俺はそんなのどうだったっていい」
「ほら着いたぞ。」
鍛冶屋を示すマークだろうか?ドワーフがトンカチを振り上げている木彫りの看板が建物の入り口上部から突き出ている。
中に入ると正面にカウンターがあり、屈強そうな灰色の髪をした半狼人族の男がこちらを見る。
カウンター後ろの壁には剣や斧が10本ほど留められている。カウンター左側の扉は空いていて奥からは金属を叩く音が聞こえた。
「剣を探しているのですが」
そう言うと屈強そうな男が口を開く。
「どんなの探してるんだい」
「護身用の剣が欲しいのですが、何点か見せてもらえませんか?」
「兄ちゃん歳は幾つだい」
「14です。もうすぐ15です」
「まだ育つな・・・。
今買うのはやめておいた方がよくねぇか? 剣は体格にあったものを持たなきゃならねぇ。今買ってもも2年もしたら合わなくなるかも知れねぇぞ」
「こいつはお貴族様だから金はあるんだとよ」
一緒についてきたアクセルがちょっと戯け気味に男に言う。
「お兄ちゃんお金持ちなの?じゃあ私にも何か買って!」
ビアンカはまじめに言う。
「じゃあ少し大きめの剣を買います」
ビアンカは無視して、2年経っても使える剣を買おうと決めた。
「剣は使ったことあるのかい?」
「ないですよ。だから剣を買って練習しないと。」
「お貴族様なのに剣も振ったことないのかい。
それなのに大きめの剣とか辞めといた方が良いんじゃないのかい?」
「俺もそう思うぜ」
アクセルが同調する。
「私もそう思う。だからなんか買って。」
ビアンカも同調した。
カイトはアクセルの物言いにちょっと腹が立った。
「大丈夫です。彼が剣を教えてくれるので」
そう言ってアクセルに視線を向ける。
「おいおい。そんなの俺の賃金に含まれてないぜ」
「いくらなら教えてもらえます?」
「パパ!!お金くれるんだって!!」
ビアンカが喜ぶので、アクセルも困った顔になった。
「まあ好きにしろ」
「じゃあ、僕に合う少し大きめの剣出してもらえます?」
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